楽天モバイルは専用アプリをリニューアルし、AIによる無料チャットサービスを開始した。このサービスでは、ユーザーの日常的な質問や旅行計画などをサポート。専門家は、楽天がARPU向上を目指し、楽天経済圏全体の強化を進める一手と指摘する。

楽天がAIチャットでモバイルサービス強化

楽天モバイルが、AI(人工知能)を使ったチャットサービスを発表した。

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楽天モバイルは、ユーザー向けに提供している専用アプリをリニューアルし、AIを活用して、チャット形式で質問や悩みに答える無料サービス「Rakuten Link AI」の提供を開始した。

1日のチャット数の上限は50回で、1回の質問で500文字まで入力できるという。

楽天モバイル・三木谷浩史会長:
旅行の計画、あるいは学習の計画とか、そういうものを立ててくれるというパワフルな相棒、コパイロットになっていくのかなと考えております。

まずはAndroidユーザー向けにサービスを開始し、AppleのiOSユーザーについても今後、対応することにしている。

ARPU向上が黒字化戦略の柱

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤キャスター:
モバイルと生成AIを活用した、楽天が描く未来をどうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
もともと楽天が携帯キャリアに参入した目的は、楽天経済圏の拡大なんです。その中でも楽天市場やトラベルなど様々なサービスがありますが、毎日毎日使い続けるサービスで、なおかつ、ECや旅行予約サイトと比べて、他社サービスに移行しにくいという点で、モバイル事業は非常に力を入れている訳です。

先日の決算発表でも、黒字化の目安となる800万回線を達成したので、これからはいよいよ本格的に、黒字化に向けてもう1つの課題について着手するのではないかと思います。

堤キャスター:
その課題とは。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
モバイル事業でポイントになるのが、ARPUと言われるユーザーが、1人あたり毎月いくら使うかの指標です。モバイル事業の場合、ユーザー数×ARPUで売り上げが決まるので、これをどう上げるのかが問われていく訳です。

黒字化のためには、ARPUが2500~3000円が必要だという試算に対して今、楽天モバイルだと2000円ちょっとなんです。そこで今回のように、まずはAIのチャットサービスから始めて、いずれはそこから、楽天経済圏のサービスにつながっていくように拡張していくのではないかと思います。

他キャリアとの競争がユーザーに利益

堤キャスター:
楽天経済圏の中で、生成AIが果たす役割とは何でしょうか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
チャットでコミュニケーションを通じて、ユーザーのちょっとした困りごとに答えられ、オプションなどを提案していくこともできると思います。言い換えれば、ショップ店員に近いような存在を、常に24時間顧客のそばに置いておくということです。

それによって楽天モバイル単体でのARPUを上げることにもなるでしょうし、さらには、モバイルを通じて、楽天経済圏全体のARPUを上げることにもなると思います。

財政的になかなか厳しいとされてきましたが、なんとかこの回線契約数まで持ってきたからこそ、今回の打ち手が取れたのではないかと思います。

これからは楽天が本格的により強い経済圏を作れるか、それとも他社の携帯キャリアが何かを仕掛けてくるかが楽しみなポイントです。こうした競争が増えれば増えるほど、ユーザーにとっては価格が下がったり、利便性が増すことを期待したいと思います。

堤キャスター:
モバイルだけでなく、幅広い事業を通して、ユーザー体験の向上というのはもちろん、AIの活用によって、より豊かな未来へとつながることを期待したいです。
(「Live News α」10月31日放送分より)

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