11月2日に行われるJリーグ・YBCルヴァンカップで初の国内主要タイトルをかけて名古屋グランパスとの決勝に臨むアルビレックス新潟。全4回シリーズで選手や監督の思いに迫る。今回は、キャプテンとしてチームを引っ張る堀米悠斗選手に話を聞いた。
堀米選手が語る“てっぺん”へのこだわり
「今季の目標が“てっぺんをとる”。リーグももちろん狙っていたが、その中でリーグ戦は苦しいシーズンになっていて、天皇杯も敗退してしまった。自分たちが現状取れるてっぺんはこの大会しか残っていないので、ここに対するこだわりというのは、すごくみんな強いものはあると思う」
この記事の画像(4枚)今季狙ってきたタイトルへの意欲をのぞかせた堀米選手。
一方で、タイトルがかかった試合を経験したことのない選手が多い状況で「どれだけの緊張感があるのか、未知の領域」だとクラブ初の決勝を表現した上で、これまでの試合を振り返る。
「若い選手や大学生の選手を起用しながら勝ち上がってきているので、そういう意味では本当にポジティブな要素しかない大会。リーグ戦と違って、負けたからどうこうというものでもないだろうし、だから最後までチャレンジャーとしての立場を貫きながら戦えれば」
ケガ人続出で苦しい時期も…「みんなで頑張って勝ち残ってきた」
リーグ戦では出場機会が少なかった選手がカップ戦で結果を残してきた新潟。
リーグ戦とは異なり、ベンチには20人の選手がメンバー入りすることができるが、3回戦の秋田戦やプレーオフラウンドの長崎戦の登録選手はそれに満たず、台所事情が厳しい中、勝ち上がってきた。
「今シーズンもルヴァンはJ2、J3のチームも入りながらの大会方式に変わったので、最初から一発勝負の舞台だったが、中でもみんな一試合一試合、大切に戦ってきたという印象があった。最初、J2のチームと戦ったあたりはチームとして非常にケガ人が多い時期で、ギリギリの人数で戦っていた。その中で、本当にみんなが頑張って、なんとか勝ち残ってきた」
これまでの最高成績は2015年のベスト4。しかし今回、準決勝で川崎Fに勝ち、クラブの歴史を塗り替えた。
「リーグ戦4連敗中で準決勝を迎えたが、別に何かを大きく気持ち的に変わったというわけではなく、リーグでの悔しい思いを、次はルヴァンだけどぶつけようというのが第一にあった。タイミング的にはみんなが悔しさを募らせていたタイミングで準決勝が入ってきていたので、それはプラスに作用した」
リーグ戦では完敗も…磨きかけたスタイルで名古屋撃破へ!
ようやくつかんだ決勝で対戦するのは、3年前の王者・名古屋だ。
「連敗が始まったのも名古屋グランパス相手で、前からハードワークしてプレスをかけてきた。僕たちはビルドアップに特徴があるチームだと思うが、そこに対して引かずにマンツーマン気味にプレスをかけてきて、非常に苦戦したという経験がある。そのプレスをかいくぐれるかどうかというのは一つ、キーポイント」
堅い守りからの速いカウンターが持ち味の名古屋。対する新潟の持ち味を改めて聞くと…
「チームのスタイルとしてはボールを大切にする、後ろから丁寧にビルドアップしながらゲームを進めていくスタイル。その中で今季は強度の部分を求めて、攻守においても個の力で状況を打開できる選手が多く、チームワークを基本としながらも、個の力を一つ武器として持っているチームになっている」
このポゼッションに重きを置く新潟のスタイルは、2020年から2年間指揮を執ったアルベル監督が定着させたものだが、そのスタイルも磨きがかかっている。
「長倉選手だとか小野選手など、前線の選手に技術やフィジカル的に優位に立てる選手がいるので、苦しくなったときにそういう選手が打開して、そこで人数かけて突破していくことも増えた。今まで、チーム・戦術というところに偏りがちだったが、少ない人数でも打開していけるというのは、今までにないアクセントかなと」
名古屋に対してはリーグ戦で完敗したが、決勝で新潟の戦い方を変えるつもりはない。
「しっかり、まずはボールを大事にしながら、自分たちのスタイルを崩さずに、決勝の舞台でもプレーすることが大事。また、このチームの良さの一つは一体感だと思うので、メンバーに入る・入らないもあるし、ベンチでも違いはあるが、全員がチームのために一瞬一瞬、過ごしている。プレーが空いた隙にベンチの選手がアドバイスしたり、点が入ったときに全員で喜ぶだとか、そういった雰囲気の良さはこれからも大事にしていきたい」
声かけでチーム引っ張るキャプテン!周囲のサポートに感謝も
キャプテンに就任して5年目の堀米選手。試合前の声かけも大事にしているという。
「前日くらいから、そのゲームがどういう位置づけになるのか、リーグ戦でも勝っているとき、負けているときで違うし、色々自分の中でしっくりくる言葉を探しながら、チームメートに声をかけるが、いつも言うのは『自信を持ってやろう』『楽しんでやろう』ということ。この2つはどういう状況でも持ち続けていた。新潟というチームもそうだが、土地柄、すごく謙虚すぎる県民性みたいなものはあると思うので、『とにかく自信を持って、自分たちでできるんだ』とみんなに言い聞かせてゲームに入っている」
強い信念と言葉でチームを引っ張ってきたが、そこには周りの選手のサポートもあるという。
「高木選手や早川選手とはかなりプライベートでも一緒にいる時間が長かったし、サッカー面だけではなくて、色んな角度からこのチームがよくなるためには何が足りないんだろうという話は、J2で苦しんでいた時期から非常に回数を重ねてきた。そこに舞行龍選手や千葉選手といった経験を持った選手が新潟に戻ってきてくれた。キャプテン・副キャプテンという役職をベテラン選手にはつけていないが、それは自然とチームのためを思った行動、声かけをしてくれるので、わざわざ指名しないというだけ。練習に対する準備・姿勢・練習後のケアなど、サッカー選手として長くやるためにはどうしたらいいかというのを姿勢で見せてくれているので、それはクラブの大きな財産だなと思う」
サポーターの期待背に決勝へ!「新潟の歴史変えたい」
成長が目覚ましい若手・中堅だけでなくベテラン選手も支えてきたクラブがついに初タイトルに王手をかけた。同じようにクラブを支えてきたサポーターの期待も感じているという。
「特に決勝進出が決まってから、街を歩いて声をかけられる回数はさらに増えたなと感じる。普段、アルビをスタジアムまで応援に行かなくても、アルビというものをしっかり認識して、結果は気にかけてくれるという人は多い。僕たちが結果を出すことで、多くの新潟県民を勇気づけられるクラブだと思う。また、国立には多くのサポーターの方が来てくれるというふうに聞いているので、みんなで喜びを分かち合えたら最高」
1996年にプロサッカークラブ・アルビレオ新潟FCとして活動を開始して以来、28年。クラブが歩んできた道のりの一つの集大成となる国立での決勝。堀米選手はサポーターとともにタイトルを掴みにいく。
「僕自身は、やっぱり新潟の歴史を変えたいなと。このクラブのエンブレムに星をつけるというのが自分の目標の一つだったし、僕の頭の中では色んなものを背負って、責任感を持って戦いたい」
ルヴァンカップの決勝は11月2日に国立競技場で行われる。
(NST新潟総合テレビ)