■「一撃男子」を名乗るホストの手口
大阪・ミナミで逮捕されたホストクラブの店長ら3人。
警察が押収したパソコンに保存されていた「一撃講習」と名付けられたファイルに衝撃が走った。
「一撃」で多額の支払いを背負わせるその手口に迫る。
頂きりりちゃんこと渡辺真衣被告:「世界の平和を守る。えっとー、人妻JK魔法少女りりちゃん!
恋愛感情を悪用して、1億円あまりを男性からだましとったとして、9月、控訴審で懲役8年6カ月の判決を言い渡された、住所不定・無職の渡辺真衣被告(26)。
渡辺被告が男性からだまし取った、多額の現金を使っていた先はホストだった。
渡辺被告は「頂き女子りりちゃん」と名乗り、その詐欺マニュアルを販売していたことも大きな問題となったが…
今、大阪のホスト界で「頂き女子」ならぬ、あるワードに衝撃が広がっている。
■違法な手口のオンパレード「一撃講習」の実態は…

9月、恐喝などの疑いで大阪・ミナミのホストクラブ「Aria」の店長・澤井健太容疑者(37)と、店のホスト・藤咲湧斗被告(24)ら3人が逮捕された。
警察が押収した容疑者のパソコンに保存されていたあるデータ。
「講習」と記されたフォルダを開くと…中には「一撃講習」というデータが保存されていたという。
女性をだまし大金を払わせる違法な手口のオンパレードだった「一撃講習」の実態とは…
■一度の来店で最大限の売上を作る

大阪府警が先週開いたホスト向けの講習会。
大阪府警保安課 西川敦警視:社会経験の少ない若い女性の恋愛感情につけこみ、金儲けの対象にするということは決して許される行為ではありません。
法律の説明などを行い、ホストクラブを巡るトラブル防止の対策を進めている。
そんな中、9月、恐喝などの疑いで逮捕されたホストクラブの店長・澤井容疑者(37)とホストの藤咲被告(24)ら3人。
押収されたパソコンからは、1回の来店で最大限の売り上げを作る「一撃講習」と名付けられた「マニュアル」が見つかった。
■「彼女」「昼職」「20歳以上」「ホストに不慣れ」条件を細かく設定

記されていたのは卑劣な手口。
「彼女」であること・「昼職」であること・20歳以上であること・ホストについて知識がないこと。
ターゲットにしているのは、ホストクラブへの来店経験がほとんどない女性。
警察によると、藤咲被告はマッチングアプリで20代の女性と知り合い、デートを重ねて「彼氏」と信じ込ませた。
自らがホストであることは明かしているものの、店に誘うことはしない。
さらにマニュアルでは、多額の支払いをさせるための流れについて、こう続く。
『女の子が正常な判断が不能になるほど酔わせる・適当なシャンパンを開ける。 値段は出さない、言わない、提示しない』
■女性を泥酔させ消費者金融で借りさせる

藤咲被告は、女性に「店のミーティングに遅刻する。同伴してくれれば、罰金は免れる」と話し、ホストクラブに連れていった。
そこで、女性の記憶が無くなるほど飲ませ、その後、「消費者金融で上限マックスまで借りれるだけ借りろ」などと脅す手口だというのだ。
女性は、複数の消費者金融から借り入れをさせられ、ホストクラブの料金として108万7千円を支払わされた。
■歌舞伎町は売掛禁止 大阪は自主規制なし

このホストグループの関係者は取材に対し…
このホストグループの関係者:(ミナミの)どこの店舗でもあるある。マニュアル作ってて、数人が使用していた噂で聞いてて、やばいなあと思ってた。
こういった状況を、健全な営業をしている店のホストはどう捉えているのだろうか?
ホスト・如月サクさん:一撃男子?あーこの前ニュースで聞きました。世間的なイメージが悪くなるのが…僕らはクリーンでやろうとしていて、売り掛けとかもなしでやってるから。ホスト全部が悪く思われるのが嫌かな。
YGGDRASILL大阪支部COO・天音真樹さん:うちはは歌舞伎町の系列のグループなんで、ミナミで唯一、売り掛け禁止ですけど、大阪自体はそんなに変わってないと思います。うち以外は(違法ホストクラブは)行政の方でしっかり徹底して対応していただけたらと思う。
■同様の事案を複数確認 全容解明を進める

この日、店に来ていた客にも「一撃男子」について聞くと…
女性客:(一撃男子について)昼職の人狙ってですか?(お金を)おろさせるとか、消費者金融に借りさせてまで売り上げつくるのはよくない。(私は)週に1.2回くらい。シャンパンをおろすときは、この金額にしたいと伝えて、お互いがOKとなったらする。
「頂き女子」ならぬ「一撃男子」。
大阪府警はほかにも同様の事案を複数確認していることなどから事件の全容解明を進めている。
■警察だけではなく自浄作用も必要

判断不能になるほど酔わせる、シャンパンの値段を提示しないなど、非常に卑劣な手口。
しかし、「一撃」といった言葉の軽さから、“悪いこと”だという意識を感じない。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:売掛金を制限するという努力もしているけれど、いたちごっこのような形で、何をやっても犯罪行為というのは出てくるのかもしれないですけど。ある程度、警察だけでなく、自浄作用のようなものを働かせていかないと、ホスト業界全体のイメージが悪くなることは避けられないのかなと。
こうした犯行の悪質さ、卑劣さをしっかりと伝えていく必要がある。
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月29日放送)