ことし4月、滋賀県に初めて夜間中学が開校しました。

減少傾向の夜間中学で新たに夜間中学ができた背景は、不登校の生徒や外国人労働者の増加。

先生になりたいという夢を叶えるため、夜間中学での学びなおしを選んだ19歳の日系ブラジル人に密着しました。

■滋賀県で初めて夜間中学が開校

ことし4月、滋賀県で初めて夜間中学が開校しました。

入学したのは、10代から60代までの21人。様々な事情を抱える生徒たちです。

【入江夢さん】「小学生の時から、相手とコミュニケーションとか仲間づくりをすること、私には難しかった。私、日本語しゃべれるけど、相手に私の気持ち伝えられるか、不安になっていた」

2年生の入江夢さん。19歳。ブラジル出身の両親をもつ、日系ブラジル人です。日本語を話すことはできますが、普段の会話はポルトガル語です。

【入江夢さん】「テストの点数80より頑張りたい」

(Q:全教科?)
【入江夢さん】「全部!」

■減少傾向の夜間中学 新設の背景に「不登校生徒や外国人労働者の増加」

もともと夜間中学は、昭和20年代初頭、戦後の混乱の中、学校に通うことができなかった人たちに『教育の機会を!』と設立されたのが始まり。

一時は、全国に80校以上ありましたが、近年は減少傾向。そんな中、なぜいま夜間中学が新設されたのでしょうか。

【中国出身の生徒】「日本来て15~16年だけど、日本語まだまだなので、文化とか勉強したいなとチャレンジだと思います」

【フィリピン出身の生徒】「2006年に初めて日本に来てそれからずっと日本にいます。日本語をもうちょっと詳しく勉強したいなと思って。こういう機会があるから行ってみようかなと思って」

背景にあるのが不登校の生徒や外国人労働者の増加。この学校でも、21人中12人が外国籍です。

■湖南市長「日本で学びたいっていうニーズに応えられる場が夜間中学」

国も全国の都道府県などに、公立の夜間中学を1つは設置するよう求めています。

滋賀県で、湖南市が開校に手を挙げた理由の1つが、工業地帯が多く、県内で突出して外国人労働者が多いからです。

中でも日本にルーツを持つ日系ブラジル人が多く、街には、ブラジルのスーパーや飲食店が並びます。

夜間中学設立を進めた市長は…

【湖南市・松浦加代子市長】「やはり外国から来られた方、今現実的に日本を支える大きな力になってくださっていますし、その方たちが日本で学びたいっていうニーズを持ってくださっている。そういったことにはしっかりと応えられる1つの場がこの夜間中学かな、そのように考えています」

■小学校で働く夢さん 日本語が得意でない児童のサポートをしている

夜間中学で学ぶ夢さん。昼間働いている場所は、意外にも小学校です。

【入江夢さん(ポルトガル語)】「今日は何時に来れますか?遅れてきますか?それとも欠席?じゃあ欠席するの?分かりました。先生に伝えておきます。それではまた」

日系ブラジル人が多い湖南市では、日本語が得意ではない児童や両親が多く、夢さんは先生とのつなぎ役を担ったり、授業のサポートをしたりしています。

【入江夢さん(ポルトガル語)】「字が違う3つの言葉があるけれど正しいのはどれ?しゃつくり、しゃくり、しゃっくり?」
【児童(ポルトガル語)】「『冷たい』は美味しいってこと?」
【入江夢さん(ポルトガル語)】「違う違う、『おいしい』じゃない。あなたが言っているのは『おいしい』」

■「先生になりたい」という夢を叶えるために学びなおしを選んだ夢さん

この経験から、生まれた将来の夢。それは…

【入江夢さん】「先生になりたいです。夢を叶えるために勉強を頑張りたい」

家では、日本語が苦手な母とともに勉強します。

【入江夢さん(ポルトガル語)】「電車のチケット、『切符』って言うの知ってた?」
【母・レジアネさん(ポルトガル語)】「日本に来た頃、免許証も車もなかったから、電車に乗っていた。だから、一番最初に覚えたことば」

夢さんは、日本で生まれ、地域の小中学校に通っていましたが、コミュニケーションの壁もあり、ブラジル人学校に転校。そのため、日本の中学の卒業資格がありません。

日本で働き、生きていくために…夜間中学での学びなおしを選びました。

【母・レジアネさん(ポルトガル語)】「私は、(大学を)卒業できなかったから、夢ちゃんには大学に行って欲しい。ブラジルで高校まで行ったけど大学には行っていない。

【母・レジアネさん(日本語)】「これから勉強頑張ってください、何かあれば私がここにいる」

■日本語は話せるが…漢字は「まだまだ」悔しさをにじませ

午後5時すぎ。夜間中学が始まります。この日は、漢字の授業。

【先生】「最寄り駅の『寄』は、うかんむり書いて、大きい書いて、許可の『可』っていう字を書くの」

日本語が話せるとは言え、漢字はまだまだ。

【入江夢さん】「半分いけた」
(Q:何が難しかった?)
【入江夢さん】「読み仮名読んだらイメージはできますけど、書き方を思い出すことが難しい。うーん、悔しいな」

■ポルトガル語の先生を務めた夢さん「本当に夢を叶えるために頑張りたい」

この日、夢さんは、地域の人と外国人を繋げようと、もうけられた講座でポルトガル語の先生を務めることに。

【入江夢さん】「みんな完璧やん」

講座を通して感じたのは、言葉で通じ合うことの大切さ。

【入江夢さん】「楽しかったです、本当に夢をかなえて、(先生を)続けたい。学校の勉強はだんだん難しくなってきたけど、ちょっとずつ(学校に)行ったらよい勉強ができると思う。夢をかなえるために頑張りたいと思っています」

ルーツや仕事、生活、様々な事情を抱えながらも学びたいと願う人たち。夜間中学はそんな彼らを支えています。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年8月21日放送)

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