“手で持って使う”マスクが登場

新型コロナウイルスの影響でマスク着用が日常に馴染みつつある。

今ではさまざまなマスクが登場し、編集部でも“着けたまま楽器演奏ができるマスク”や“顔に直接貼るマスク”などを紹介してきた。

(参考記事:着用したまま演奏できる「管楽器対応マスク」が新しい…開発した島村楽器に聞いた
美容院での感染不安解消!? 顔に直接「貼るマスク」でつけたままヘアカットOK

そして、また新しい形のマスクが登場した。

どうしてもマスクを外さざるを得ない食事の場面で、手で持って使用する「テーブルマナー・マスク」を嵯峨美術大学(京都)が考案した。

提供:嵯峨美術大学
提供:嵯峨美術大学
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これは市販の不織布マスクを利用したもので、両端を切り落としたマスクに、しっかりしながらも弾力のある紙素材で枠を付けたもの。“手で持つマスク”なので、もちろん中央下部に持ち手となる部分がある。

特徴は、口についた食べ物などがマスクにつかないよう立体的なふくらみがキープされるように枠をつけており、また、持ち手を強く握るとマスクの枠が狭まることから、握る力の加減で顔の大きさに限らずフィットするようにできている。

女性用として、レースの花などの装飾を付けたデザインも考えているそう。

食事の際の新型コロナウイルスの飛沫感染を少しでも回避するため、テーブルで食事中に使うマスクとして考案された。

装飾されたマスク(提供:嵯峨美術大学)
装飾されたマスク(提供:嵯峨美術大学)

通常は耳にかけて使うマスクを“手で持つ”という新しいスタイルだが、このアイデアはどうして思いついたのか? 実際使ってみた様子はどうなのだろうか?

考案者である嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学の佐々木正子学長に話を聞いてみた。

“誰もが面倒ではない形”として考案

ーーなぜマスクを“手で持つ”というアイデアを思いついた?

マスクをつけたり外したりするには、いちいち耳にかけねばならず面倒なため、レストランなどでおしゃべりをしている方が誰もマスクをしていない現実に気づきました。会話時はほぼ着用率0%です。

コロナの感染はマスクをしない時の飛沫が原因との報道に、誰もが面倒ではない形でマスクで口を覆えるようにすべきと考えました。


ーーこだわりの部分は?

・医学界のご指導を受けながら進めていること。
・プラスチックなど、地球環境に悪いものを使わないようにしていること。
・顔の大きさにフィットして、隙間を作らないよう工夫していること。
・ウイルスが付着することを考えて、使い捨てにしていること。 などです。

顔にフィットして調節ができ、隙間を作らない形状に。また、マスクが唇に当たらないような立体的な形状にという部分が、制作では苦労しました。


ーー女性用には装飾を考えているとのこと。なぜ装飾を付けようと考えた?

会食が多いホテルのレストランや結婚式で、素敵にできたら皆が使おうとしてくださるのではと思いましたことと、結婚式ができずに延期されている方も多く、コロナの暗いムードを吹き飛ばすようなものにできないかと考えました。

マスクは使い捨てですが、レース部分はピンでとめて再利用も可能です。手芸店で花の形をしたレースを購入してつけたものは、女性に好評です。このほかに好評なのはイヤリングを二つとめつけたものなどがあります。

左:イヤリングによる装飾 右:花の形のレースによる装飾(提供:嵯峨美術大学)
左:イヤリングによる装飾 右:花の形のレースによる装飾(提供:嵯峨美術大学)

佐々木学長は実際にホテルのラウンジで「テーブルマナー・マスク」を使ってみたという。「普通のマスクに見えるのか誰も気が付きません(笑)」と、周囲の反応に対しては思わず笑ってしまったとのことだ。

医学関係者「使用効果がある」

なおこのマスクは、8月25日の「テーブルマナー・マスク」の研究会で、お披露目と実際の使用実験(試食)が行われたという。実際に使用してみた反響と、今後に関しても話を聞いてみた。


ーー反響はどうだった?

「京都発の感染防止の新しいマナーに」と皆さまから言っていただけたことがうれしかったです。

参加された医学関係者からは、「使用効果がある」とのご発言をいただき、早速その先生も9月中旬に、このマスクを使って研究会をされるということでした。

京都の「高野連」などでも使ってみようとされていますし、遠方のホテルなどからのお問い合わせや、例えば在ロシア日本大使館関係の日本のコロナ対応の広報に載せるというお話も来ていて、世界のどこかで少しでもお役に立てればありがたいと思っています。


ーーこの反響をどう受け止めた?

皆様が真剣に受け止めていただけたことに感謝しております。

現在は行政も医学関係者も必死でご対応されており、我々一市民も何らかの形で知恵を出し合い、社会からコロナが消えるよう、たとえ小さなことでも「意識をもって」取り組むことが大切ではないかと考えております。

このマスクはほかのマスクと同様、一人で使っても意味がなく、皆で使って飛沫の拡散を防ぐことが必要なので、多くの方が使ってくださるようになって、感染が収束していくことを願っています。

「テーブルマナー・マスク」着用する佐々木学長(提供:嵯峨美術大学)
「テーブルマナー・マスク」着用する佐々木学長(提供:嵯峨美術大学)

ーー反響を聞いて、マスクの形状など変更する点はあった?

改良してもマスクの形状は大きくは変化しないと思いますが、レストラン側との検討会では、料理を食べやすい形の提供の仕方に、このコロナの間はしようかというような案も出ています。

両方の努力が必要な面もあるかと思います。

医学界、飲食業と様々な立場の方がご協力下さっていますので、検討を重ね、秋冬の感染拡大前に良い形ができればと考えています。高級料亭などはアクリルボードを立てるわけにもいかず、それぞれ大変です。


ーーホテルなどの会食だけでなく、飲み会など別場所での対応は考えている?

和食ではお椀を持ったり、洋食ではナイフ・フォークを使う時や、立食では使用が難しく、まだまだ課題があります。アルコールが入ると自分の意志で持つものなので、「口を覆わなくては」という意識が残るのかどうかも不安材料です。

今後は医学界と普及活動に努める

ーー今後このマスクはどうしていく予定?

このマスクは、マスクをゴムで耳にかけるか、紙素材の枠で顔に押し付けるかの違いだけで、ぴったりとフィットさせればマスク自体の効果は同一だと思いますが、顔から離して使用してしまったり、手を洗わずに使用したり、集団の全員が使っていなければ効果は半減してしまいます。

ですので、使用方法を医学界の先生方と一緒に市民に説明をする活動をしていきます。

また、飛沫を防ぐことが主目的ですので、不織布のマスクではない素材でも同じような効果が得られるものはないのか、そのあたりも医学界のご協力を得て、より簡単に使用できるようにならないかを検討していきます。

装飾された「テーブルマナー・マスク」着用の様子(提供:嵯峨美術大学)
装飾された「テーブルマナー・マスク」着用の様子(提供:嵯峨美術大学)

販売の予定に関しては、「『テーブルマナー・マスク』の効果を解析し、多くの方からご支持いただけるようになれば量産していくことも必要と考えています」と反響次第だそうで、同時に簡単に手作りできることから、作り方講習会の開催も視野に入れている。

生活に欠かせなくなっているマスク。これからもさまざまな様式にあった新しいスタイルが出てくるのではないだろうか。

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プライムオンライン編集部
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