北九州市小倉北区のJR小倉駅。駅ビルから飛び出す車両が印象的な北九州モノレール。1985年に日本初の都市モノレールとして開業し、まもなく開業40周年を迎える。

小倉北区の商業地と小倉南区の住宅街、約8.8キロメートルを結び、年間の利用者数は1200万人を超えるほどだ。

この記事の画像(9枚)

長年、モノレールの安全運行を支えているのは、モノレール界の‟ドクターイエロー”と呼ばれる特殊な工作車だ。作業時間は終電から始発までの4時間あまり。北九州モノレールの深夜点検その裏側は?普段見ることができない現場にテレビカメラが潜入した。

モノレール界の‶ドクターイエロー”

午後11時55分の小倉駅。深夜0時発の最終電車に乗ろうと足早にホームへ急ぐ人たち。そして、最後の客を乗せ最終電車が出発する。1日106往復の運行もこの電車で最後だ。電車は約20分で終点の企救丘駅に到着。駅のすぐ側にある北九州モノレールの車両基地では、これから始まる点検作業に向け、黄色い車両がスタッフと共に準備を整えていた。

見慣れない黄色い車両。総称して工作車と呼ばれ、レールや通信設備、電気設備の点検補修に使っているという。「JR好きの方は新幹線の検査専用車両にちなんで‟ドクターイエロー”と呼んだりしてます」と話す北九州高速鉄道施設課の星野剣吾さん。モノレール界の‶ドクターイエロー”とも呼ばれる工作車だが、空中の高い位置にレールがあるモノレールでは、地上の作業に限界があり、この車両が整備には欠かせないのだ。

「機電停止しました」「はい。工作車動きます!」レールに電流が流れていないことを確認して工作車が動き始める。モノレールのレールには、列車運行中1500ボルトの電流が流れているため直接レールを確認する点検は、電源が落ちた運行終了後にしかできない。

この日の点検区間は、小倉南区の北方駅から小倉駅までの約4.2キロ。レールに異常がないか工作車で調べていく。

分岐器
分岐器

一方、小倉駅の1つ隣の平和通駅では、別の作業が行われていた。レールの上のくねりと曲がる部分、分岐器と呼ばれる箇所の点検だ。分岐器とは、列車の進路を変更するために必要な設備。この分岐が正常に動かないと一方向にしか列車が通れなくなり、運行がストップする事態に陥る。電気課の阿部元重さんによると「コンピュータが制御しているのを切り離した状態で実際に動かして点検していく」という。滑らかに動くかどうか油をさして可動部の確認を徹底する。運行障害がでないよう月2回行われている。

午前3時。平和通駅の隣、旦過駅方面にまばゆい光が瞬く。2時間前に車両基地を出発した工作車の点検が進んでいるのだ。車両が停止するたびに聞こえてくるカンカンと聞こえてくる音。何の音なのか?取材班が工作車両へ乗り込んだ。

ボルトを1つ1つ叩いて異常を確認

車内は一見、普通たが、肝心な部分は床を開けた下にあった。床を開けて現れたのはレールを囲む作業場。

工作車の床下に作業場が…
工作車の床下に作業場が…

工作車が進んでいくとカンカンという音が響く。「ボルトがちゃんと閉まっているか、効いているか打音でチェックしています」と話す施設課の山本晃生さん。音の正体は、打音チェックだったのだ。様々な箇所を固定しているボルト。緩んで落下すると大きな事故の危険がある。そのためボルトを1つ1つ叩いてその音を確認していく。緩んでいると鈍い音がする。まさに職人的な経験と感覚の作業だ。

「安定うち7、安定7です!」と山本さんが先輩に伝える。微量なレールのずれがあり、そのずれている量を計っているという。このずれは危険性というよりも乗り心地に影響すると言われている。そのため揺れが大きくなった場合は調整するのだ。工作車による点検は、安全面だけでなく乗り心地も考えた作業だった。

予定区間の点検が無事に終了。すべての作業を終えた施設課の星野さんは「40年、なんとか無事に運行してきてますので、今までモノレールに乗ったことない方は、結構高い所を走っているので、お散歩がてら乗ってもらえたらと思います」と話した。

午前6時、動きだす始発。慌ただしい夜が明け、訪れる朝の通勤時間。2025年に開業40周年を迎える北九州モノレールだが、ダイヤを守り事故なく安全に運行を続ける裏には、日々の地道な点検を繰り返す‶職人”たちの姿があったのだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。