JR西日本が設備保守用の新たな重機を開発、実際の作業の様子が、島根・雲南市の現場で公開された。
線路上に現れたのは作業車両に搭載された「ヒト型」のロボットだった。
無人作業の未来 ヒト型ロボットが登場
10月21日、島根・雲南市のJR木次線。線路上に伸びた樹木を伐採する作業だが、そこに作業員の姿はない。
この記事の画像(8枚)人に代わって作業していたのは、アニメやSFの世界から飛び出したかのような見た目のヒト型ロボット。最新の重機を使った保守作業の様子が報道関係者に公開された。
JR西日本が新たに導入した「多機能鉄道重機」。人の腕のように自在に動くアーム、その先端にはチェーンソーが取り付けられ、次々と枝を切り落としていく。
このヒト型ロボットは、JR西日本が、滋賀県のベンチャー企業などと共同開発し、2024年7月から鉄道設備のメンテナンスで使用を始めた。
操縦者はVR映像を確認し操作する
遠隔操作で、最大12メートルまでの高所作業が可能で、重さ40kgまでの荷物を持ち上げることができる。
オペレーターは、操縦室に乗り込み、VRゴーグルを装着し、ロボットの視点で撮影された映像を見ながら、操作する。
オペレーターが操縦かんを握ると、腕の動きに連動してロボットのアームが動く仕組みで、直感的に操作することができる。
誰でも操作可能で人手不足解消へ
このヒト型ロボット、導入の背景にあるのは、鉄道業界でも深刻な人手不足だ。特に線路の保守作業は営業時間外に行われることも多く、担い手不足が課題になっている。
JR西日本によると、ヒト型ロボットの導入により作業にかかる人手は約3割減少し、生産性の向上が期待できるという。加えて、ロボットは、年齢や性別によらず操縦することができ、様々な人が高所での重い作業を担うことで現場の負担軽減にもつながる。
また、安全面でもメリットがある。危険な作業を機械化することで安全性が向上、高所からの転落や感電など労働災害の減少も期待できるということだ。
JR西日本中国統括本部米子電気技術センターの相原徹所長は、「ロボットの操縦者が特に強い力を出して動かす必要がないので、作業員を選ばないというメリットはある」と話し、人手不足解消の「助っ人」になると期待した。
ヒト型ロボットは、今後しばらく、主に関西圏で保守作業にあたる予定だ。
アームに取り付けるアタッチメントを交換すれば、塗装などの作業にも対応できるということで、鉄道を取り巻く環境が厳しさを増すなか、今後、さまざまな現場でヒト型ロボットが活躍する姿が見られるかもしれない。
(TSKさんいん中央テレビ)