12月に審議が行われる「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録。
日本の酒は世界でどの程度受け入れられているのか。
フランスのソムリエは「柚子の皮、青リンゴに刈りたての干し草…」と、意外な言葉で日本酒を表現。
国内消費が減る中、海外に活路は。FNNパリ支局・原佑輔特派員が取材した。
【動画】フランスで日本酒?フランスのソムリエたちの評価は!日本酒、世界へ
■日本人ではない“食のプロフェッショナル”が評価「KURAMASTERコンクール」開催

原佑輔特派員:フランス・パリにある日本大使公邸です。これからKURAMASTERの授賞式が行われます。
8回目の開催となったKURAMASTERコンクール。
その特徴は、フランスの国家最優秀職人章(MOF)を受賞するなど、フランスの第一線で活躍するソムリエやバーテンダーといった、日本人ではない“食のプロフェッショナル”が、日本酒などを味わい、評価する点だ。

農林水産省によると、日本酒の国内出荷量は減少の一途をたどっていて、1998年に113万リットルだったものが、2023年には39万リットルとなっている。
一方で、日本酒の輸出量はじわじわと増えていて、1998年の8000リットルから、2023年には2万9000リットルと3倍以上となっている。
ただ、このうちの7割以上をアメリカや中国、韓国などが占めている。
■「日本酒は一般の消費者に届ける段階のステージ」とソムリエは期待

ワインの本場、フランスで日本酒はどの程度、受け入れられているのか。
審査員長で国家最優秀職人章の称号を持つ、ソムリエのグザビエ・チュイザさんは「高級料理に合わせて認知度を高める段階から、一般の消費者に届ける段階にステージが変わった」と話す。
(Q.ワインショップの人たちは訪ねてきますか?)
ソムリエ・国家最優秀職人章 グザビエ・チュイザさん:ますます増えています。それが私のよろこびでもあります。
ソムリエ・国家最優秀職人章 グザビエ・チュイザさん:私はスパークリング酒の発展に期待しています。より広い層にアピールできる飲み物です。消費者が酒の世界に足を踏み入れるきっかけとなるでしょう。そして、次第に吟醸や大吟醸など、より高度な酒に進んでいくのです。
■兵庫県伊丹市・小西酒造「白雪伊丹諸白大吟醸」がプレジデント賞受賞

この日は、応募総数1223点の日本酒の中から、最高賞であるプレジデント賞が選ばれ、兵庫県伊丹市の小西酒造の「白雪伊丹諸白大吟醸」が受賞した。
チュイザさんはこの酒を「香りはエキゾチックともいえる、ユズの皮や青りんご、乾燥した植物、刈りたての干し草、さらに白こしょうのような繊細なスパイスなどと伝統的な要素が見事に融合し、豊かで複雑な香りがあります。余韻は長く、後味には洋なしやドライローズのつぼみのニュアンスもあります」と評している。

小西酒造 小西新右衛門社長:日本の方じゃない方たちが、このお酒を選ばれるという意味は、すごく大きいと思う。日本は日本の日本酒として、日本酒を大事にしないといけないです。同時に今、せっかく世界の方に認められつつある日本酒が、もっとどうあるべきなのかを探る意味でも、こういう賞に出品するのは、すごく大切だと思っている。

駐フランス日本大使 下川眞樹太さん:フランスをみても、若年層を中心にアルコールをどんどん飲まなくなっていて、例えばフランスは今ワインが売れなくなって、非常にブドウ畑を減反している現象も見られる。日本酒というのは、日持ちの問題とか、種類が非常に多いので仕入れをどうするかとか、まだまだ課題があるので、そういうものを乗り越えて皆さんが日常的によろこんでもらえる、楽しんでもらえる、そういう環境になったらいい。
■ユネスコ無形文化遺産への登録へ向け審議が行われる

実はことし、日本酒は大きな転機を迎える。
日本政府は伝統的酒作りをユネスコ無形文化遺産として登録するように提案していて、12月に審議が行われるのだ。

ユネスコ日本代表部大使 加納雄大さん:無形文化遺産というのは、その条約の仕組みとして、食べ物そのものというよりは、作るプロセス、それ自体が保護に値する文化だという説明をする必要があるのです。
ユネスコ日本代表部大使 加納雄大さん:お酒を通じて日本の各地の豊かな文化を知るツールになるだろうと思います。もちろんお酒そのものを楽しむというのがあるんですが、酒造りに関心を持つ方というのは、潜在的には非常に多いと思います。結果としてお酒自体への関心消費にもつながるのではないかと期待しています。
日本の食卓を彩ってきた日本酒が世界の舌を潤すまで、先人たちの重ねた努力が今少しずつ実りはじめている。
(関西テレビ 2024年10月23日)