がんなどの重い病気で入院している子供の親は、その多くが泊まり込みで付き添っている。病院に寝泊まりしているため食事もおろそかになり、家族は心身ともに疲れ果てているのが現状だ。そんな家族を温かい手作り弁当で支援する取組みを取材した。
釜で炊いたほかほかのごはんに寄付で集まった様々な種類の野菜。取材班は、付き添い家族を支援する団体「福岡ファミリーハウス」を訪れた。代表の髙原登代子さんによると、福岡市内でがんなどの重篤な患者が多く入院する九州大学病院・福岡市立こども病院・九州がんセンターに入院している子供の親は、7~8割が泊まり込みで付き添っているという。

福岡ファミリーハウスは、そうした家族に元気を出してもらおうと「ミール支援プログラム」として、月に1回無料で付き添い家族に向けた弁当を提供している。
"付き添い入院”の経験を弁当に込め
この日の弁当の届け先は、福岡市南区にある九州がんセンター。「自分が入院中の子供に付き添っていた時、具だくさんのスープとか味噌汁を食べたかったんですよね。だからあなたには‟応援団”がいるよと伝えていきたい」と高原さんは自らの体験を振り返りながら活動への思いを語る。

実はこの活動に参加するボランティアの半数近くが高原さんと同じく‟付き添い入院”の経験がある人たちだ。弁当づくりに参加していたボランティアの1人は「サツマイモで秋らしさを感じてほしい。狭い病室の中にいると季節感がなくなるから」と話していた。自らの経験を思い出しながら1つ1つ丁寧におかずを作り、弁当に盛り付ける。

栄養士も参加して完成したのは、野菜の揚げびたしやサツマイモの甘露煮など副菜もたっぷりのアジフライ弁当。野菜がたっぷり入ったスープも添え準備万端。

これまで福岡ファミリーハウスは、子供が入院する病院の近くで待機する家族に向けて食事支援をしていたが、今回初めて、病院内で付き添う家族に直接、食事を手渡すことが許された。
アジフライ弁当に思わず母親は…
24時間、子供の入院に付き添う母親たちが病室から出てくる。高原さんたちが「頑張ってください」と声をかけながら弁当を手渡すと「ありがとうございます。すごい!たくさん!」思いがけず温かい弁当を受け取った母親たちからも笑顔がこぼれた。

「アジフライとかなかなか食べることがないのでめっちゃ嬉しいです。こういう彩りよくバランスよくっていうのがあると月に1回でもここにいるお母さんたちはみんな嬉しいと思う」とお弁当は大盛況。高原さんたちも病院内に直接届けられた大きな成果を実感していた。

急性骨髄性白血病を発症した息子が3ヵ月以上入院している北島理恵さん。病室で寝泊まりしながら付き添っている。

お弁当について尋ねると「スープがいいですね。いつもはスーパーの冷凍食品とかで済ませてしまうし、コンビニとか普通のお弁当だと1食500円とか超えちゃうので…」と話した。
食べる時間もとれない家族の力に
民間団体の調査によると、付き添い家族が食事をとれない理由としては「食べる時間がなかった」「病院内の売店などで食べ物が手に入りにくかった」などが挙がっている。こうしたことから厚生労働省が2024年から付き添い入院の食事や睡眠などへの配慮を医療機関に求めている。

閉ざされた病室で孤独になりがちな付き添い家族。髙原さんたちの手作り弁当は、不安や疲労と闘う家族の心も元気と温かさで満たしている。
(テレビ西日本)