センターにいた柴犬の「こみみ」がやってきてからは、リーダーはふたり体制となったが、毅然たるシェルター長としての貫禄はコタロウだけのものだ。
厳しいしつけも
コタロウは、シェルターとしている居間のある1階と、2階とを自由に行き来している。ゆっくり寝たいときは次男の部屋などにいるが、たいていは、犬たちの真ん中でどっしり構えている。周りがどんなに騒がしくとも、全く動じない。
「どんな犬が来ても猫が入って来ても、すべて受け入れますね。子猫が来たら、遊び相手も添い寝もします。犬も猫も相手が小さいうちは高いところから垂らしたシッポを揺らして遊ばせてやります。子犬が甘噛みして遊んでも全然怒りません」と、紗由里さん。

ところが、卒業までの教育も請け負うシェルター長の面目躍如たるところは、子犬たちに「行き過ぎ」があった場合だ。痛いほど噛むと、「いい加減にしなさい」「それ以上やると怒るよ」と、にらみつける。その眼力だけで、相手は目を伏せる。机の上の食べ物を取ろうとするなどのお行儀の悪いときも同様だ。
高い座にいて、下のほうで犬たちのふざけが過熱しすぎて一触即発になりそうなときがある。雲行きを察したコタロウは、悠然として真ん中に降臨する。一瞬にして座を鎮め、「ボス、遊んで、遊んで」と追いかけられる役を買って出るのだ。
「犬猫の種を超えて新入りを可愛がり、教育し、愛情を循環させていく。本当にすごいと思います」と、紗由里さんも日々感動の連続だ。
次期ボス育成中
「犬を飼っているけれど、猫も迎えたい」 「猫を飼っているけれど犬も迎えたい」という家庭への譲渡はとてもスムーズだ。ここでの犬猫共同生活を経た犬たちは、猫への手加減や愛情表現を覚える。猫たちは、犬にフレンドリーになり、警戒心を持たない。コタロウがツボをしっかり押さえて、叩き込んでいるからだろう。
コタロウは、人間にもやさしい。
「気持ちが落ち込むときは、コタロウがそっとそばに来て寄り添ってくれるんです。フミフミマッサージで心地よい眠りにいざなってもくれるし」と、次男くん。
そんな「理想のボス」コタロウも、8歳を超える。子猫のときから面倒を見て、フレンドリーで穏やかなオトコに育った長毛オウジロウを後継ボスと定めたようで、その育成に余念がない。

佐竹茉莉子
フリーランスのライター。フェリシモ「猫部」のWEBサイト創設時からのブログ『道ばた猫日記』は連載15年目。朝日新聞系ペット情報サイトsippoの連載『猫のいる風景』はYahooニュースなどでも度々取り上げられ、反響を呼ぶ。