下半身不随の猫「らい」や一緒に暮らす猫の様子を、日々SNSなどにアップしている晴(はる)さん。

「らい」は殺処分寸前だったところを家族として迎え入れ、看護やリハビリを行ってきた。

「らい」を温かく迎え入れた同居犬・猫の中には、認知症の犬「しの」やしのを献身的に支えた介護猫「くぅ」がいた。

「しの」の看取り、傷心する友・くぅへ寄り添い、旅立ちも経験した「らい」。明るくて人懐っこいらいは、いつしか輪の中心になり家族を笑顔にする存在になっていった。

そんな「らい」の日常の様子をつづったフォトブック『らい 下半身不随の猫』(辰巳出版)から、らいと同居犬・猫とのふれあいを一部抜粋・再編集して紹介する。

先住猫の男子組とすぐ打ち解けた「らい」

無事、わが家へ連れ帰ったらいをケージ内のベッドに横たわらせると、先住猫たちが順にやって来ました。

体調が悪いことをニオイなどで感じ取ったのか、らいをケージの外から静かに見つめるだけの初対面でした。

天気が良い日は窓辺で日向ぼっこし、投薬と排泄、食事以外は1日の大半をケージ内で寝て過ごしていたらいは、傷の痛みが治まり体調が戻ってくると、前足だけを使って少しずつ歩くようになり、ひとりでは難しかった体位変換もできるように。

部屋の中を探検したり、お気に入りの紙袋に隠れたり、オモチャで遊ぶ姿も見られるようになりました。

くぅ(左)、たろ(中央)の男子組と仲良くなった、らい
くぅ(左)、たろ(中央)の男子組と仲良くなった、らい
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もっと活動的になってくると、先住猫たちのことがとても気になり始めたらしく、彼らが出入りするドアがよく見える場所に陣取り、誰かが来るとサッと近づいてオシリをクンクン。

自分が食べ終わった後、まだ食事中の猫たちの背後から近づいてオシリをクンクン。その後は食器に頭をつっ込んでごはんドロボー。

そんならいの行動と、初めて見る前足だけを使った歩き方に困惑気味の猫たちでしたが、フレンドリーで面倒見のよい男子組はすぐに打ち解けたようでした。

賑やかで穏やかな日々を送る「らい」

もちろん男子組だけでなく、女子組ともお近づきになりたいフレンドリーらい。

なかなかお目にかかれない2階の民・黒猫みつを初めて見た時は釘づけになり、その熱い視線に戸惑ったみつが早々に2階に上がると、すぐ後をついて階段を上がろうとするので慌てて止めるハプニングもありました。

みつ以外の女子組とも仲良くなってからは、らいのまわりはいつも賑やかで、彼がオモチャで遊ぶ時には次々と猫たちが集まってきます。

先住猫のくぅとも仲良しならい
先住猫のくぅとも仲良しならい

けれど、みんなを順番に平等に遊ばせていると、ウズウズしたらいが横からオモチャに飛びついてしまうことも。

オモチャをひとり占めしたり、ごはんドロボーしたり、くぅや女の子のオシリを追いかけたりと、ヤンチャ無双なだけでなく、毛づくろいをしてもらったり、ピッタリくっついて寝たりと甘えんぼも大爆発。

優しい猫たちに囲まれて、賑やかながらも穏やかな日々を過ごすらいでした。

認知症の犬・しのと過ごした1年

好奇心旺盛ならいは、老犬しのにも興味津々。

当時しのは認知症を患っており、ぐるぐる回りながら歩き続けたり、家具にぶつかってしまうため、ケガをしないように少し高さのある円形の囲い(=サークル)の中で過ごしており、らいがそばに行くのは難しい状況でした。

しのが来ると近づいてくる、らい
しのが来ると近づいてくる、らい

それでもサークルの外側から中を覗きこんで、しのが歩いたり寝ている様子を見つめていました。

どうしてもしのとお近づきになりたいらいは、しののそばに行こうとして何度もサークルを乗り越えようとするのですが、しのが歩いている時は踏まれてしまう危険があり、また寝ているしのを起こしてしまうと、しのが疲れるまで何時間もぐるぐる歩き続けてしまうため、サークルごしでの逢瀬にしてもらっていました。

その頃、まだ四肢が動く感覚のままだったらいが高い場所へ上りたがるので、ベッドを置いた出窓で日向ぼっこをさせることがありました。

その間は私が近くにいて、らいがベッドから出る仕草をすると抱っこで下ろすのですが、ある日、気持ち良さそうに寝ていたので少しそばを離れました。

大好きなしのにくっついて添い寝する、らい
大好きなしのにくっついて添い寝する、らい

すぐ戻ると、らいがサークルの中でキリッと男前な顔をして、横になっているしのにくっついていてビックリ!!

ジャンプして入るにしても、らいがいた位置からサークルまでは少し距離があるし、頭の中が「?」でいっぱいになりましたが、しのも落ち着いているし、らいはドヤ顔しているし、そのまま一緒に過ごしてもらうことに。

今まで虎視眈々と狙っていたしのの隣をゲットできて満足げならいでしたが、そばを離れらいを危険に晒してしまったことを反省し、今は危なくないよう低い場所で過ごしてもらうことにしています。

食いしん坊ならいは、しののごはんも気になります。

目もほとんど見えず、自力で食べられないしのにスプーンで食べさせている間中、「次はボクの口にあーん!ですよね?」と、期待に満ちたキラキラの瞳で見つめてくるので、くぅがしののごはんに手を伸ばす「ごはんドロボー」とはまた違ったプレッシャーに晒される私でした。

しのと触れ合うらい
しのと触れ合うらい

らいがしのと過ごしたのは、たったの1年。

その短い時間の中で、何年も一緒にいたように感じられるほど彼らが過ごした濃い時間は、かけがえのない沢山の思い出を私にくれたのでした。

日光浴をしながらウトウト…

現在、推定14歳のらい。2018年に晴さんの家族になってから6年が経過した。

今のらいの様子を晴さんは「日差しが窓から差し込む午前中は窓際で日光浴をしながらウトウトし、午後はストーブ前で寝ています。

たまに他の猫たちがらいのベッドに入って一緒にひなたぼっこをしたり、寝たりしています」と穏やかな日々を過ごしているという。

『らい 下半身不随の猫』(辰巳出版)

晴(はる)
広島県在住。らいの他に、6匹の保護猫と一緒に暮らしている。SNSにてくぅとしの、他ににゃんずたちの日常を公開中。認知症の犬「しの」と、しのを献身的に支えた介護猫「くう」が主人公のフォトブック『くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ』(辰巳出版)も大きな話題に

晴(はる)
晴(はる)

広島県在住。らいの他に、6匹の保護猫と一緒に暮らしている。SNSにて、くぅとしの、他にゃんずたちの日常を公開中。認知症の犬「しの」と、しのを献身的に支えた介護猫「くう」が主人公のフォトブック『くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ』(辰巳出版)も大きな話題に