被爆者団体「日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)」のノーベル平和賞受賞決定で、「被爆者なき時代」に向け、被爆の実相をいかに次の世代に引き継ぐかが改めてクローズアップされている。

「重い責任を負わされた」

日本被団協の箕牧智之 代表委員は、受賞の要因について「被爆者の活動がある程度は戦争を止めるブレーキ役になった」としたうえで、その責任の重さと被爆体験の次世代への継承の大切さを強調した。

日本被団協 箕牧智之 代表委員
日本被団協 箕牧智之 代表委員
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日本被団協 箕牧智之 代表委員:
私たちには重い重い責任を負わされた気がする。被爆者の平均年齢が85歳を超えているから。ひとりの人間だけではどうしようもない。ノーベル賞をきっかけに、輪を広げて、戦争、平和、核兵器が話題になるような社会にしていかなければいけないと思う。

「核抑止論」を牽制する役割

また、専門家は、ノーベル平和賞委員会が受賞理由の一つに被爆者らが、「“核のタブー”の確立に貢献した」ことを挙げた点について、こう解説する。

広島大学平和センター・川野徳幸センター長:
核は核によって抑止するという「核抑止論」が国際社会の中では一定以上定着している。しかし、被爆者自身が証言を語ることが、「核抑止論」を抑える役割を果たしていることが評価されたと私はとらえている。

また、「被爆者なき時代」に向け、被爆の実相を次の世代に引き継ぐことの重要性を訴える。

広島大学平和センター・川野徳幸センター長:
被爆体験者から直接話を聞く機会は、私たちは少しずつ失って、いつかなかなか聞けない時代がやってくるが、ノーベル平和賞は残るでしょう。私たち自身がいかに継承していくのか。それは被爆者の宿題というより、私たち自身の宿題です。

受賞が決まった後も、広島の平和公園では、訪れた観光客らに証言活動を続ける被爆者の姿があった。原爆ドーム前で18年にわたり英語でガイドを務めている胎内被爆者・三登浩成さん(78)はこう語る。

胎内被爆者 三登浩成さん(78)
胎内被爆者 三登浩成さん(78)

胎内被爆者・三登浩成さん(78):
私は全然変わらんよ。私がやっとるのは正しかったんだから、それを続けるんでしょ。

「教わる側ではなくて教える側に」

被爆の実相を引き継ぐ役割を果たす高校生平和大使は平和公園で核兵器廃絶の署名活動を続けるが、ノーベル平和賞受賞決定で、被爆の実相の継承に勢いを得たと語る。

高校生平和大使・AICJ高校2年 沖本晃朔さん:
僕たち被爆者の生の声を聞いた世代が、今度は教わる側ではなくて教える側、受け身からのシフトを大事にして、被爆の実相を次の世代へ、世界へ広げていきたい。

世代を超えた「核なき世界」への思いを共有するために、被爆者から被爆の実相を聞き取り、様々な方法で記録し、いつになっても、生々しい記憶として呼び起こすことができるようにすることが求められている。

(テレビ新広島)

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