仙台の冬の風物詩「SENDAI光のページェント」。毎年12月、仙台市の中心部にあるケヤキ並木がイルミネーションの光に包まれる。原資となっているのは、企業協賛と市民の寄付、行政の補助金だ。2024年で39回目を迎え、仙台市の冬にはなくてはならないイベントとなっているが、費用の高騰により規模や期間の縮小が続き、近年では開催自体も危ぶまれるようになってきている。実行委員会はこの状況を打破すべく、2024年9月、集まった寄付の額に応じてイルミネーションの距離を延ばすクラウドファンディングを呼びかけた。最大目標額の2000万円に達すれば、約700mの区間が点灯されることになる。だが、結果は実行委員会にとっても予想外のものだった。

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仙台駅前も輝いた時代

光のページェントは1986年、市民ボランティアでつくる実行委員会が冬のイベントに乏しかった仙台を盛り上げようと始めた。初回は定禅寺通と青葉通のケヤキ並木に30万個の電球をともしてスタートした。

1986年の様子
1986年の様子

イルミネーションだけでなく、市民参加型のパレードなどさまざまなイベントも企画し、規模は少しずつ拡大。20回目を迎えた2005年には過去最多の100万個の電球が仙台の街を彩った。仙台駅を降り立つとイルミネーションの輝きが見え、首都圏からツアーが組まれるほど、仙台の冬を代表するイベントに育った。

定番となった市民によるパレード「サンタの森の物語」
定番となった市民によるパレード「サンタの森の物語」

東日本大震災が発生した年も点灯

光のページェントは仙台の街の変化にも翻ろうされてきた。2010年、地下鉄東西線建設のため、青葉通のケヤキ並木が移植・伐採され、会場は定禅寺通と勾当台公園のみになった。

2011年 白い電球も借りて開催
2011年 白い電球も借りて開催

2011年には東日本大震災が発生。電球を保管していた沿岸部の倉庫が津波で被災し、電球すべてが使えなくなった。このときは都内の有名イベント「表参道イルミネーション」が電球を貸し出すなど全国から支援を受けて開催することができた。ページェントの明かりといえば黄色だが、この年は白い光も混ざり、心が沈んでいた仙台市民を勇気づけてくれた。

経費は増加 協賛は減少

光のページェントはわずか1カ月足らずのイベントだ。だが、雨風にさらされる電球の消耗は激しく、毎年一部を取り替える必要がある。さらにLED化や警備費用の増加など、時代の変化もあり経費は拡大を続けてきた。

2023年 上空から撮影 光の帯のように見える
2023年 上空から撮影 光の帯のように見える

ページェントの現在の実施費用は約1億円。4割が行政からの補助金、6割が企業協賛と市民の募金だ。しかし、近年は企業協賛が減少。実行委員会は街頭募金をしながら資金を確保し、予算に合わせて開催期間や電球を取り付ける区間を縮小するなどして対応してきた。

条件が厳しいからこそ挑戦

39回目を迎えた今年は仙台市役所の建て替え工事のため、企業ブースなどを設置できる市民広場を含めた勾当台公園が使えず、企業協賛は例年より少なくなる見込みだ。本部や案内所も西公園に設置することになり、警備費削減の都合などから例年よりも西側(広瀬川寄り)に比重を置いたレイアウトとなる。そこで、実行委員会は今年、新たな挑戦をすることにした。点灯区間を集まった募金によって決めるクラウドファンディングだ。

9月の1カ月間限定で募金を呼びかけ、目標金額は最大2000万円。目標を達成すれば、仙台市民会館から東二番丁通までの約700mを点灯する。第一目標の1500万円以上なら東一番丁通までと100m短くなり、1500万円未満なら市民会館から国分町通までの約500mとする。目標を設定することで、市民の参加意識に訴え、かつてのような輝きを取り戻したいという思いもあった。

集まった金額は“予想外”

だが、9月1日~30日までに集まった金額は221万8000円だった。453人が支援したが、目標の1割ほどと実行委員会の予想を大きく下回る結果となった。実行委員会によれば、去年は東一番丁通から西へ約600mの区間が点灯されたため、今年は「3分の2」程度の規模になるという。

実行委員長を務める丸山哲史さんはクラウドファンディングの結果を受けて「多くの人に喜んでもらっている実感が私たちの原動力の全て。実感があればこそ、長年続けられている。今回の結果を受けてその実感は錯覚だったのかと思う」と肩を落とした。

SENDAI光のページェント実行委員長 丸山哲史さん
SENDAI光のページェント実行委員長 丸山哲史さん

実行委員会は10月下旬にも街頭募金を開始するほか、運営費確保のために毎年行っている100万円を目標金額としたクラウドファンディングの募集を始めるという。

震災の年も輝きを放ち続けた光のページェント。これからも明かりを絶やさず続けていけるかは、イルミネーションを楽しんだ一人一人の気持ちにかかっている。

仙台放送
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