慢性的な赤字に加え、台風で一部区間の運休が続き苦境に陥る大井川鉄道のトップに鳥塚亮 社長が就任した。かつて廃線の危機にあった路線をいくつも復活させた”ローカル鉄道の再生請負人”だ。手腕をどのように発揮していくのか…その決意とアイデアを聞いた。

ローカル鉄道再建に手腕発揮

トーマス号と親子連れの写真を撮る鳥塚社長
トーマス号と親子連れの写真を撮る鳥塚社長
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人気の「きかんしゃトーマス」号を目当てにこの夏も多くの家族連れや鉄道ファンが訪れた大井川鉄道。自ら先頭に立ち、乗客を見送るのが2024年6月に就任した鳥塚亮 社長だ。

大井川鉄道・鳥塚亮 社長:
皆さんトーマスを目当てに来ているので歓声が上がりいいなと。鉄道が子供たちの思い出になっていくと思うとやりがいがある

リゾート列車で挙式するカップル
リゾート列車で挙式するカップル

”ローカル鉄道の再生請負人”との異名を持つ鳥塚社長。

廃線の危機に瀕していた千葉県の「いすみ鉄道」を様々なアイデアで全国区にしたほか、新潟県を走る「えちごトキめき鉄道」の社長時代にはリゾート列車を貸し切っての結婚式を企画するなど斬新なイベントを次々と打ち出し観光誘客に導いた。

2024年5月にリゾート列車で挙式した新婦の石井幸子さんは「写真だけでなく『車内で挙式・披露宴はどうですか?』というお話をもらって本当に…うれしすぎて」と喜びを語る。

鳥塚社長は当時、「2人の門出がここから始まり、この地域、沿線を思い出にしてもらえると思う。こういう形でもっともっとこの地域を思い出にしてもらえる輪が広がればいい」と話していた。

そして、仕事人として集大成の場に選んだのが大井川鉄道だ。

大井川鉄道・鳥塚亮 社長:
私としては、高校生の頃から再来年でSL(ファン歴)50周年です。大井川鉄道にはずっと昔から来てる。この鉄道、私にとっても思い出の鉄道なのでここは何とか立て直していきたいし、立て直すべきだろうと思う

新社長として精力的に活動

記者発表で空港を訪れた鳥塚社長(2024年8月7日)
記者発表で空港を訪れた鳥塚社長(2024年8月7日)

この日は大井川鉄道が航空会社などとタッグを組んで実施するツアーの記者発表に参加。

鳥塚社長は「北海道や九州から参加してもらえるくらいの行ってみたくなるツアーだと私は思う。出来れば毎日やりたい」と自信をのぞかせた。

航空会社スタッフらとツアー資料を掲げる鳥塚社長
航空会社スタッフらとツアー資料を掲げる鳥塚社長

このように地域の交通事業者や企業と連携し相乗効果を生み出していくことが重要だと考えている。

大井川鉄道・鳥塚亮 社長:
こういう企画ができるというのは非常にオリジナルでオンリーワンな感じ。ですから、こうした地元連携は続けていきたいし頑張って集客したい

知名度抜群で鉄道ファンの人気者

ビール列車内で乗客と談笑する鳥塚社長
ビール列車内で乗客と談笑する鳥塚社長

また、鉄道業界の中で自身の知名度が高いことを活かした集客にも尽力している。

恒例のビール列車に乗車すると告知したところ、鉄道ファンからの応募が殺到。

乗客から「写真1枚いいですか?」と聞かれた鳥塚社長は「いいですよ」と気軽に応じ、別の乗客からは「社長業がんばってください」と声をかけられた。

さらに「こういう客車を観光で活かしてもらいたい」という声には「冷房ついてないんですよ、熱中症予防が大変。保冷剤配ったりして」と真摯に答える。

東京から参加した乗客:
いまはトーマス号で子供たちには有名になっていると思うが、このイベントのように大人が楽しめる空間のプロデュースを期待している

ビール列車に参加した乗客
ビール列車に参加した乗客

関西から参加した乗客:
鳥塚さんが入った相乗効果でさらにワクワクした鉄道会社になることを僕は期待している。地元にも愛されて、僕らみたいな観光客にも愛される鉄道会社になって欲しいなと

ビール列車の乗客らと交流する鳥塚社長
ビール列車の乗客らと交流する鳥塚社長

現場で見聞きした話を基に鉄道ファンに刺さる企画を立案し、今後も自らが広告塔を担う考えだ。

鳥塚社長は「『頑張ってください』とか『応援してます』とか『また来ます』とかありがたいです。思っていただけるだけでありがたい」と感謝の思いを口にする。

全線復旧と”おもしろい列車”で再生へ

土砂が線路に流れ込み一部不通となっている大井川鉄道
土砂が線路に流れ込み一部不通となっている大井川鉄道

一方、2022年9月の台風による被害以来、いまだ一部の区間が開通に至っていない大井川鉄道。現在の経営状況を考えると再開は簡単なことではない。

それでも不通区間となっている田野口駅ではその日が来ることを信じて住民やボランティアたちが今も駅舎の掃除をしたり、花を植えたりしてくれている。

田野口駅 花の会・中田安明 会長:
鉄道が地域に必要だと僕らも思っていますので早く電車を走らせてもらいたい、それだけですね

大井川鉄道・鳥塚亮 社長:
いま目指さないといけないのは全線復旧です。全線復旧を目指す中で、地域の人たちの期待や希望に会社としてどうやって応えていくかということが大事。いろんな楽しい列車を走らせて、この地域に縁もゆかりもない人たちに来てもらうことが地域の発展につながると私は信じてずっとやってきているので、いろんなおもしろい列車を走らせたいという構想というか”妄想”を持っている

大井川鉄道のSL
大井川鉄道のSL

2025年、会社の創立からちょうど100年を迎える大井川鉄道。

これからも地域に、そして鉄道ファンに愛され、必要とされる存在になれるように…鳥塚社長の“最終章”はまだ始まったばかりだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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