50年以上バイクに乗り続ける71歳の現役「モトクロスライダー」の男性。孫が見守る中、敬老の日にバイクで大ジャンプを披露。アメリカで開催される世界大会に“日本人最年長ライダー”として出場する予定だ。
モトクロスに憧れた小学生の頃
砂を巻き上げながらコーナーを駆け抜け急斜面を駆け上がる「モトクロス」。砂利や坂道など舗装されていないコースをバイクに乗って走るアクロバティックな競技だ。

モトクロスを70代になっても続けている現役ライダーがいる。佐賀・吉野ヶ里町の古川正昭さん(71)だ。

古川さんがモトクロスを初めて見たのは小学生の時。「全日本のモトクロスが初めて九州で開かれたのを見に行った。ずっとそれが頭に残っている」と胸を高鳴らせた当時の気持ちを語る。
ライダーとして成長…そして転機
モトクロスへの憧れがなくなることはなかった。古川さんは高校卒業後、自動車部品の工場で働きながらモトクロスに挑戦。18歳の時に全国で125㏄、250㏄ともに全国2番の結果を出すほどのライダーに成長した。

複数の種目で結果を残した古川さんに転機が訪れる。憧れのチームから声がかかったのだ。

古川正昭さん:
HondaさんからHondaのオートバイに乗って全国大会に出ないかと言われた
古川さんはHondaチームの監督から、オートバイ店をやりながら練習をするようすすめられ、25歳の時にバイク店をオープン。

妻の支えで続けてきたレース
一方、レースの出場回数が増えることでけがも増え、骨折などの大けがをしたことも。レースを続けられてきたのは妻の智恵子さんの支えがあったからだ。

店長で妻の古川智恵子さん:
Q、バイク好きの正昭さんをどう思う?
仕方ないかな。子供みたいな感じ。3度の飯よりも(バイクが)好き。けがをしてもレースには出る
70歳超えても“大ジャンプ”に挑戦
バイクを愛する古川さんは「敬老の日」に合わせて、ある挑戦を決意。それは、これまで飛んだことのない25mの大ジャンプだ。

「70歳を超えてもモトクロスを続けられると言いたい」と古川さんはその思いを語る。

本番4日前、古川さんはコースを下見し練習を行った。コースには大きく2つの難関がある。

ひとつ目が大きな傾斜。高校野球経験者の取材記者でさえも簡単に登れない急勾配だ。

バイクを操る古川さんは右側にある石の壁で勢いを付けて一気に急斜面を駆け上がる。

そして2つ目の難関が最後の大ジャンプ。大ジャンプに挑むコースには、山を駆け上がった後に2つの谷がある。

「度胸がないと危ない」とモトクロスに求められるメンタルについて古川さんは説明する。
“じいちゃんライダー”が宙を舞う
迎えた本番当日。会場には孫や地元の同級生など20人ほどが駆けつけた。

「頑張ってね」「ケガしないようにね」「無理しないでね」と孫たち。“おじいちゃん”の古川さんは思わず笑顔に。

じりじりと残暑の日差しが照り付ける中、いよいよ本番。
古川さんのバイクはエンジン音を響かせながら急斜面に向かって加速していく。

バイクで急斜面を切り裂くように勢いよく駆け上がり、宙を舞う“じいちゃん”ライダー。

スピードを上げながら斜面を登り切ったバイクは一瞬、宙を舞う。そして青空にそのシルエットが浮かぶ。

下りでもバイクのスピードは落ちることはない。斜面に沿って飛ぶように駆け下りていく“じいちゃん”ライダーを孫たちが見守る。

バイクのエンジン音とともに孫たちの声援が響き渡る中、いよいよクライマックスの大ジャンプへの助走だ。

ひとつ目の山でジャンプし、最初の難関は無事クリア。しかし着地するやいなや目の前には2つ目の山が待ち受けている。

その直前で思い切り加速して再びジャンプ。バイクは大きく宙を舞い谷を越え無事着地。

その距離は約20m。目標の25mには届かなかったものの見事なジャンプを成功させた。

同級生は笑顔で拍手。同世代にも元気を与えてくれる大ジャンプだった。

同級生:
見習いたい。アクションできる年齢じゃないのに(古川さんは)違うなあと思う。私たちも頑張りたい

「目いっぱい頑張った」と語る古川さんも爽やかな笑顔。
日本人最年長選手として世界大会へ
古川さんは、2024年11月、アメリカで開催される世界大会に日本人最年長選手として出場する予定だ。

古川正昭さん:
世界28カ国の人が集まる大会で、自分は1桁5番ぐらいにはどうかなと思っている。頑張ってきます
“じいちゃん”モトクロスレーサーの挑戦は続く。
(サガテレビ)