チョウのように舞い、ハチのように刺す。無数の技を繰り出し、仮想の敵を制する“形”を極める26歳の空手家。輝かしい実績を残しながらも、ある“過去の失敗”が空手の道を続ける力の源になっているという。

「選手」と「監督」の二刀流

2024年10月、佐賀県で開催される国スポに、空手の「形」の部で出場する藤田開土選手(26)。

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実はこの藤田選手は指導者としても活躍している。佐賀県高校総体で「形」と「組み手」の双方で優勝した龍谷高校空手部の監督も務めながら国スポを目指す「選手」と「監督」の二刀流。まさに“空手漬け”の毎日だ。

藤田開土選手:
僕が動けているうちは一緒に動いて、極力僕ががんばっている姿を見せつつ、生徒と一緒に上を目指していこうというスタイルです。生徒のおかげで自分も頑張れているかなと

礼をせずに…大学時代の思わぬ失敗

高校時代には、地元長崎県で開かれた国体で優勝し、大学3年生の時には学生の世界チャンピオンまで上りつめた輝かしい実績を残した藤田選手。

しかし、大学時代に思わぬ失敗をしてしまう。これが藤田選手のその後の人生を変えることになった。

藤田開土選手:
大学4年間でしっかりやりきって終わろうとその当時は思っていたんですけど、形が終わったあとに礼をせずに、そのまま下がってしまって、そこで0点がでてしまった。このままでは終われないと社会人でも(空手を)続けようと思いました

そして、2022年から選手兼監督として佐賀市の龍谷高校の職員となり、去年の西日本大会に出場。しかし結果は惜しくも準優勝。いまは、国スポでのリベンジに燃えている。

技を出すと…風を切る音が道場に

藤田選手の強さはどういうものなのか。
それを体感しようと空手経験がある記者が少々無謀な取材に挑んだ。

藤田選手の前に立ち、小型カメラを持つ記者。藤田選手が構えると記者は怯んだように見える。

そして、一瞬でカメラの前に藤田選手の拳が…。道場に風を切る音が響きわたる。

次は、体力自慢の記者が腹部に抱えたミットへ藤田選手の突き。その威力は、思わず言葉を失った記者の表情が物語っていた。

“技術と精神”支えるパートナー

「周りの人のアドバイスがいまの自分の“形”に生きていると思う」と藤田選手はいう。

藤田選手の成長には、技術面・精神面で支える2人パートナーの存在があった。
その1人は元アジアチャンピオンの江里口誠さんだ。

江里口誠さん:
(藤田選手には)力強さや正確さスピード感がとてもある。繊細な身体の動きや使い方ができるので、国スポでも優勝を狙える位置にいると思う

そしてもう1人が、多くの空手トップアスリートを育てる大場瞬一トレーナー。

REA-GROW 大場瞬一トレーナー:
体の使い方で改善できそうなことがあればそれをやって、それでもむずかしい場合はトレーニングに落とし込んで強化していく

“技の切れ”に必要な“力の抜き感”

月に1度のトレーニング。この日は、藤田選手が長年抱える課題、“技の切れ”を磨くためにあえて力を抜く”抜き感”を出す改善を重ねていた。

“決め”の瞬間だけ力を入れることを意識する。“100の力”と“70の力”の使い分け。“感覚を形の中に染み込ませる”ための難しいトレーニングだ。

藤田選手は「新しい発見がすごくいっぱいある。(大場トレーナーは)なくてはならない存在」と話す。

「イケメンではなく…技に反応して」

緊張感に満ちた練習のあと、「藤田選手はどんな選手ですか?」ときいてみると、トレーナーの大場さんは笑顔とユーモアで返してくれた。

大場瞬一トレーナー:
開土ですか?イケメンですね。僕SNSやっているんですけど、トレーニングのことをもうちょっと言ってよ、というくらいイケメンで反応されるんですよ(笑)

藤田開土選手:
技術で反応されたいですけどね(笑)

寝ても覚めても空手一筋の生活。唯一の癒しは観葉植物という藤田選手。

藤田開土選手:
ちょっとずつ水をあげていたら成長してくれたんで楽しいなと思って

地元の選手を強化できる指導者に

選手として、そして指導者として進化を続ける藤田選手の目標は…。

藤田開土選手:
国スポは優勝目指してやっています。最終的には、佐賀県の強化、九州のレベルの底上げができる指導者になっていきたいと思います

(サガテレビ)

サガテレビ
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