福岡・古賀市の動物愛護センターには、福岡県内の各保健所から送られてきた保護犬、保護猫が多数いる。その多くが捨てられたり、飼い主が何らかの事情で飼育できなくなり引き取られたりした犬や猫たちだ。猫舎の猫は不安そうな面持ちで取材カメラを見つめていた。

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譲渡対象となっている犬や猫たちは現在、ホームページなどで里親を募集している。しかしその一方で「性格とか、年齢とか、病気とかを総合的にみて譲渡できない子たち(犬、猫)については…、“殺処分”というかたちになります」と所長の野田里加さんは静かに語った。

行き場ないと判断されると“殺処分”

福岡県では人、動物、環境の健康を一体的に守る「ワンヘルス」の考え方のもと、犬猫の殺処分ゼロを目指していて、犬や猫を飼いたい人への事前講習会やしつけ方教室を開くなど、動物愛護の啓発活動に力を入れてきた。その結果、県動物愛護センターで1年間に収容した犬や猫の数は、この6年で約3分の1に減少している。

しかし、いまだなお、センターに運ばれてくる犬や猫は後を絶たず、決して少なくない数が“行き場がない”と判断され、殺処分されているというやりきれない悲しい現実がある。

殺処分される犬を少しでも減らしたいと保護犬を里親につなぐ活動をしている「チームSAKURA」の代表、大塚加奈子さん。「この犬は保健所からの引き取り。立てなくなっていて、もともとは飼い犬だったみたいだけど、捨てられたような状態で…」と1匹の犬を紹介してくれた。

「ずっと寝た状態で、ご飯も食べなかった。飼い主が迎えに来ないというショックもあったし、暑い中で保護されたので弱っていたんだろうな」と大塚さんは優しく犬の頭をなでた。

“殺処分”の対象にならないように…

大塚さんは活動に賛同してくれるペットサロンを探し、保護犬のケアをしてもらったり、犬の訓練施設で一定期間保護犬を預かってもらい人間と生活できるようしつけてもらったりして、1頭でも多くの犬が里親と幸せに暮らせるよう活動を続けている。

「人間の都合だけです。犬とうまくいかなくなったとか、飼えなくなったとかいう理由で、簡単に手放す人が多すぎて…、理不尽に殺させないという気持ちをみんなで持てたらいい。犬も猫も植物も、全部命を生かす方向でみんな努力し始めるのが“ワンヘルス”かなと思っている」と大塚さんは話す。

隔離部屋には痛々しい姿の猫たち

福岡・筑後市の保護猫シェルター「リアン」では野良猫や捨て猫、保健所から引き取った猫など、約100匹を保護している。心身を回復させ、避妊去勢手術やワクチンなどを施した上で譲渡先を探している。

隔離部屋には痛々しい姿の猫たちが身を寄せていた。保護されたばかりの子猫のきょうだいを示しながら代表の川野和美さんは「この子たちは段ボールに入れられて、お菓子が一緒に入れられていて、そのお菓子にアリがいっぱいたかって、この子たちはアリの中にいた」と怒りを押し殺しながら静かに語った。

猫好きであるが故に悲惨な状況に

犬や猫の無責任な遺棄や放置。中には猫好きであるが故に悲惨な状況を招いてしまうケースもある。現在、10匹以上の猫を飼っている80代の女性は「家に猫が入ってきたからかわいそうと思って、家に入れたら、こんなに増えた。最初は4匹。それから親猫が外へ逃げて、(妊娠して)子猫を4匹連れて戻って来て、さらにその後、また妊娠して、子猫が産まれて。どんどん増えて…」と困惑している状況を話す。

「まだ小さい子猫がいるなら、それも避妊去勢手術をしないと。猫は、もう生後4カ月で妊娠する。もう最後の1匹にしないとね」とリアンスタッフの鶴佑季子さんはアドバイスをする。「避妊手術が大切で、それがまだ全然、社会に浸透していないから、こうやって優しい人が外でかわいそうだからと保護して増えてしまって、困ったことになる」と鶴さんは頭を抱えた。

人と動物が共生する社会の実現へ

猫が好きだからこそ、正しい飼い方を。人間の意識1つで不幸な猫を減らすことができる。9月15日、福岡・広川町で開催された譲渡会には多くの人が訪れた。リアンの鶴さんは「今から、一人一人の意識を変えて、かわいそうな猫たちと人が幸せになれるように、みんなでワンヘルスの活動を進めていけたらと願っています」と語る。

リアン代表の川野さんも「私たちが一生懸命愛情をかけて、手をかけて里親が見つかって、おうちの猫になれるよう、これからも一生懸命がんばっていきます」と前を向く。

人と動物が共生する社会の実現を目指して、きょうも活動は続いている。

(テレビ西日本)

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