いま、若い人を中心に中古カメラを買い求める人が増えている。フィルム要らずで初心者でもきれいな写真が簡単に撮れるデジタル全盛期の中、なぜなのか?そのワケを調べた。

街なかで聞くと「スマホカメラではなく、古い画質を好んで使う人が多い」と話す若者。さらに「昔のアナログな写真は、現像するまで分からないでしょ。そんなところがなんともいえない(ほど面白い)」と古いカメラが持つ魅力を語る。また、かつてスマホが普及する前の1986年に発売され大ヒットしたレンズ付きフィルム『写ルンです』や、90年代に女子高生を中心に爆発的に流行ったインスタントカメラ『チェキ』の方がいいと話す若者も。その理由は「エモい」のだという。最近のアナログを楽しむ若い世代にフィルム写真の魅力が広がっているようだ。

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色あせた昔懐かしい雰囲気が漂うレトロな一枚。いま、若者たちが「エモい」と表現する写真だ。「感情が動かされた状態」「感情が高まって強く訴えかける心の動き」などを意味する若者言葉だが、このエモさにはまっているのだ。

販売台数は3年前から倍倍倍!

人気の高まりを受け、売り場をリニューアルした福岡市のカメラ専門店「キタムラ」。若年層を中心にフィルムカメラの需要が高まっていることから、中古カメラの売り場を3倍に拡大。九州最大級の約4000点を取り扱っている。

売り場をのぞくと、懐かしくて足を運んでみたという男性客や「最新のレンズというより、古いレンズ、今の若い人たちが言う『エモい』写りのやつを探しに…」と話すフィルム写真愛好家の姿が見られた。「フィルムカメラの人気が高まりだした3年くらい前から販売台数は倍、倍、倍という感じで増えている」とキタムラ・ミーナ天神店の小松祐二さんは解説する。

多い時は1日に100点は売れるというフィルムカメラ。一番高い商品はまさに桁違いだ。1969年製のライカのカメラは、なんと169万4000円の値が付いている。

真鍮の材質のボディにブラックペイントという塗装が施され、現存機種が少ないことから価値が上がっているという。

若者初心者に人気 コンパクトタイプカメラ

一方、若い世代の初心者に手が届く人気のカメラはコンパクトタイプ。

キタムラで人気の2機種。まずはオリンパスの『ミュー』のシリーズ、そしてコンタックスの『T2』、どちらも人気が高いという。ミューは、インフルエンサーの影響が大きく、SNSなどでそれを見た人が、機種指名で買いに来る人が多く、T2はそもそもすごく人気が高いカメラで外装もチタン。かなり写りにもこだわっている優れものだという。

商品供給追いつかず「PENTAX17」発売

2024年7月、あえて発売されたフィルムカメラの「PENTAX17」。発売前から話題で、商品供給が追いつかないほどの人気ぶりだ。リコーイメージング商品企画兼デザイナー鈴木タケオさんは「昨今、若いユーザーにすごく人気だということもあるし、我々もチャレンジしたいっていうことで出したフィルムカメラになります」と令和の時代に、もう一度フィルムカメラを売り出した理由を語る。

一般的なカメラはファインダーが横向きだが、このカメラのファインダーは縦向きになっている。その理由を鈴木さんは「写真撮影して現像された後に、いまはデータでやり取りをすることが、ユーザーには一般的になっている。スマートフォンに飛ばしてみたり配信したりするときに、縦ってすごく相性がいい。飛ばした瞬間に縦になっているので」と説明する。

また、縦構図にすることで、撮れる写真の枚数も増える利点がある。36枚撮りであれば72枚。1つのコマを半分に分けて撮影すると2倍撮れる。「そこが今の若いユーザーにとっては、すごくメリットになるんじゃないかなと思って考えた」と鈴木さんは話す。

カメラだけじゃない!中古スマホも爆発的人気

さらにいま、中古カメラと同じく大人気なのが中古のスマホだ。

「じゃんぱら福岡天神店」の石井圭一店長は「ちょっとエモい写真というか、そういうのに特化した古いスマートフォンが、いま爆発的に人気があるという感じで、私どももびっくりしている」と驚きを隠さない。1日に平均20台の中古スマホが売れるというこの店では、4分の1の人が「エモい」を求めて、古くて安いスマホを購入するという。

スマホの違いで写真の写りに大きな違い

2年前に発売された機種と9年前に発売された機種でそれぞれ撮影した写真を比べてみると、2年前は、解像度も高くシャープなイメージだが、9年前は、やわらかい印象だ。

デジタルの時代だからこそ感じるアナログの良さ。若者を中心にまだまだ人気は続きそうだ。

(テレビ西日本)

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