プロ野球ペナントレース。パリーグの首位をひた走る福岡ソフトバンクホークスで、7月から抑え投手として9回のマウンドを任されている松本裕樹投手(28)。プロ10年目となる今季、当初は中継ぎ投手を務め、23ホールドを挙げていた。

しかし7月初め、それまで絶対的な守護神だったロベルト・オスナ投手が、下半身のコンディション不良で出場選手登録を抹消、離脱したあと抑え投手に指名され、9月2日現在14セーブを挙げている(※取材時は13セーブ)。
“中継ぎ”から“抑え” 気持ちの変化
オスナが退いて、気持ちの変化や葛藤はあったのか? 松本投手は「オスナ投手が外れる、ちょっと前から、(オスナ投手の)状態が悪いという話があって、『もしかしたら』っていうのは、自分のなかにはあったので、心構え的にはちょっと時間は取れたのかなとは思います」と振り返る。

入団2年目の2016年の初登板以来、先発、中継を経験。昨シーズンは、自身最多の53試合に登板し25ホールド。そしていま、抑え投手の大役を任されるまでに成長した。
つきまとう“サヨナラ負け”の緊張感
聞き手を務めた池田親興さん(現TNC野球解説者)。現役時代に、松本投手と同じく、先発、中継、そして抑えを務めたことがある。

池田さんが気になったのは、中継ぎとはまた違う、抑え投手ならではの難しさだ。松本投手は「先頭打者が出た時点で、長打でも1点だし、ホームランだったらサヨナラ負けというのが、常についてくる。その辺の緊張感は他の回とは違う」と抑えの持つ肌で感じた独特の“空気感”を語った。

8月21日に仙台で行われた東北楽天ゴールデンイーグルス戦。2点リードの9回裏のマウンドに登った松本投手。ヒットと送りバントで1アウト2塁のピンチを招く。次のバッターには2球目をライトへ同点タイムリー3塁打を打たれ、続くバッターには、3球目をレフトへはじき返されサヨナラ負け。わずか11球で敗戦投手となる悔しさも経験した。
負け試合を引きずらずに次の試合へ
「常に点は取られない意識で、1点も取られない意識で投げてはいるんですけど、(あの試合は)取られて、しかもランナー3塁で、もう三振を取りに行くしかないなという、自分のなかではあって、全部、早いカウントで打たれたというのもあって、何か、『あっ』という間にサヨナラになったなという感じでしたね。あの時は」と振り返る。しかし「打たれる試合もあるとは思うので、その1試合だけは引きずらずに」と続けた。

救援失敗の2日後。北海道で行われた北海道日本ハムファイターズ戦では延長10回、1点を勝ち越した後の場面で登板。4番打者から始まる相手打線を無失点に抑え、接戦をものにした。8月24日のゲームでも2点差を守り13セーブ目。オスナ投手離脱から約2カ月。守護神離脱と本来なら大ピンチの状況をしっかり埋めている。
「9回は松本で行く」と決めている
「なかなかアドレナリンが出まくった、いいピッチングだった」松本投手への信頼は、小久保裕紀監督の言葉からも伺えた。「クローザーは、いまはもう『松本で行く』と決めているんで、そこはもう9回は松本で行きます」

これまでホークスが、優勝したシーズンは安定感抜群の絶対的守護神がいた。今季は、シーズン途中から、抑えを任された新守護神松本裕樹が最後までマウンドを守ることになる。

最後に、今季の優勝の瞬間の最後の1球を投げるマウンドに立っているという瞬間をイメージできているのか聞くと「そうですね。正直、まだそこまでまだ考えられてないですね」と松本投手ははにかんだ。
ホークスの4年ぶりの優勝に向けて、松本投手の右腕は勝負の9月もうなりをあげる。
(テレビ西日本)