植木鉢の置き方めぐり殺人事件に発展?検察「疑心暗鬼の末期症状」弁護人「1つの証拠もない」

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2018年、大阪府羽曳野市の路上で男性を殺害した罪に問われている男の裁判員裁判が28日、結審した。 被告人は一貫して無罪を主張し、直接証拠がない中、裁判員は難しい判断を迫られる。

■6年前、閑静な住宅街で事件は起きた

6年前、大阪府羽曳野市の閑静な住宅街で会社員の平山喬司さんが刃物で刺され、殺害された。 司法解剖の結果、確認された傷は背中に一カ所のみ。 横向きに刺した刃物が肋骨と肋骨の間を通り、心臓に達していた。

■ドライブレコーダーの映像から山本被告が捜査線上に

現場周辺に止まっていた車のドライブレコーダーには、襲われた直後の平山さんの「こら、待てこらぁ!」という、荒々しい声が記録されていた。 【平山さんの長男】「『待てこらぁ!』というのは、一番怖いときの父親の声。 あれが(法廷で)流れたときは涙がこみ上げてきました。めっちゃ辛かったんやろうなと」 周辺に設置された防犯カメラなどの映像には近隣住民以外の姿は映っておらず、警察は犯人を近くに住む人と判断して捜査。 そして、ドライブレレコーダーに映っていた犯人の体型(180~181cm程度、細身)と似ていたことなどから、山本孝被告(48)が早い段階で捜査線上に浮かび上がった。

■植木鉢巡る隣人トラブルが事件の発端?

山本被告は隣人の女性と植木鉢の置き方をめぐりトラブルがあり、その女性が被害者の平山さんと交際していたことから動機もあると判断。 事件から4年後、凶器などの直接証拠は見つからなかったが、山本被告は逮捕、起訴された。

■捜査段階から一貫して無罪を主張

そして、ことし6月10日から始まった裁判員裁判。 捜査段階から山本被告は一貫して無罪を主張。 初公判でも「私は犯人ではありません」と、はっきりした口調で起訴内容を否認した。 直接証拠のない難解な裁判は、判決までに約3カ月を要し、17人の証人が出廷。 検察と弁護人が意見を述べる「論告・弁論」も全部で4回行う異例づくしの展開を見せ、28日ついに終結した。

■検察は有期刑で最も重い懲役20年を求刑

検察は、周辺のドライブレコーダーの映像から、平山さんが月極め駐車場に車を止めて犯行現場となる道路に出てきた直後に犯人に殺害されていることから、犯人は平山さんを監視していて、住宅街で怪しまれずに監視ができるのは月極め駐車場の近くに自宅がある山本被告であると指摘。 また、「カメラ映像の犯人と身体敵的特徴が概ね合致する」「被告人は隣人女性とトラブルになっていて疑心暗鬼の末期症状で(交際相手の)平山さんを殺害する動機がある」などと間接証拠を積み上げ、「一方的に恨みを抱いた悪質な犯行」として有期懲役刑で最も重い懲役20年を求刑した。 被害者参加制度でこれまでの裁判を見てきた平山さんの長男は、28日法廷で「お父さんの夢とこれからの人生を奪った被告人を私たち家族は絶対に許せません。無期懲役を希望します」と述べた。

■弁護側「1つの裏付け証拠もない」と検察の主張を全面否定

一方、弁護側はカメラに映らずに犯行現場へ行くことができる道などがあり(※カメラに映らない道の存在は検察も裁判の中で認める)、「犯人は宅地内の人物に限られる」という前提そのものが間違っている中、山本被告であれば犯行が可能という推論のもと捜査をしたが、凶器は発見されず、山本被告から押収した衣服や刃物から血痕反応も出ていないと反論。 さらに、検察が「身体的特徴が概ね合致する」と判断した根拠となるドライブレコーダーの映像は、専門家が「顔の鑑定は不可能」と判断した「非常によくない劣化した画像」であり、「推論に基づく捜査を4年にわたり行って、1つの裏付けとなる証拠も存在しなかった」と検察の立証を全面的に否定し、無罪を主張した。

■「私はやっていない」と法廷で繰り返す

審理の最後に、山田裕文裁判長から「最後に言いたいことはありますか」と聞かれた山本被告は、力強く大きな声で「私から言いたいことはひとつだけです。私はやっていません。私はやっていません」と答え、審理は終結した。 事件から6年、捜査機関が積み上げた間接証拠の数々が示すのは有罪か無罪か…注目の判決は、来月27日に言い渡される予定だ。

関西テレビ司法担当:菊谷雅美

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