子どもたちに大人気のカブトムシ。そのカブトムシを新しい未来型のビジネスとして活用している福岡・大木町。地域の交流支援センターで行われた世界中のカブトムシやクワガタに触れ合うことができるイベントには、家族連れなど多くの人が訪れていた。
この記事の画像(8枚)図鑑でしか見たことがなかった南米産のヘラクレスオオカブトには、子どもだけでなく大人も目を輝かせていた。
カブトムシビジネス拡大の原料は?
カブトムシのイベントを手掛けたのは、秋田県に本社を構えるベンチャー企業TOMUSHI(トムシ)。どんな会社なのか? 代表の石田陽佑さんに聞くと「“カブトムシと循環型”ということで、事業内容としてはいろいろなところから出る廃棄物、特に有機廃棄物、生ゴミをカブトムシが食べて、途切れない循環を生み出そうという事業」と説明してくれた。
昆虫の力でゴミを資源化することをビジョンに掲げるTOMUSHI。2024年3月に大木町と連携協定を結び、第2の拠点として石田さん自らも大木町に居を移し、カブトムシビジネスの拡大に取り組んでいる。
環境政策に力を入れている大木町と、石田さんが目指す事業の方向性がマッチしているという。そして「原料を考えたときにも、大木町は西日本最大のキノコの産地になってるので、そこから廃棄物として出てくるものもたくさんある」と話す。
プリプリとした幼虫が育つ秘訣
カブトムシとキノコを使った循環型のビジネスとはどういうものなのか。TOMUSHIが大木町につくった関連会社・大木バイオクリエーションズを訪ねた。
多くの幼虫が入っている箱が並んでいる。ここで育てられているのは、ヘラクレスオオカブトの幼虫。その姿を見せてもらうと大きくてプリプリとしている。「幼虫が立派に育つ秘訣は土。キノコの廃菌床を発酵させたマットが一番良く育つ」とスタッフは話す。
キノコを栽培する際、おからや米ぬかなどの栄養体を微生物が繁殖しやすい環境に整えて作る菌床。この菌床はキノコの収穫を終えると、まだ栄養分などが残っているにも関わらず、その多くが廃菌床として処分されている。その量は毎年、1万トンにも及ぶほどだ。
この廃菌床についてキノコの生産や販売を手がけるドリームマッシュ・廣松真輔さんは「廃菌床は無償で農家さんに配ったり、廃棄したりしていたんですが、廃菌床は豊富な資源でもあるので、それをカブトムシの飼育に使って、売り上げの一部をいただく。うちにとって大きなメリット」と話す。
カブトムシ幼虫の“使い道”
現在、幼虫のフンを原料に有機肥料を作り、再びキノコの生産に活用する研究も進められている。この循環型ビジネスについて大木町の広松栄治町長は「これから堆肥化する実証実験が始まります。それが成功すれば、さらに多くの堆肥が出来れば、有機農業につながっていく。いいものに対して、他のキノコ農家さんは使っていただけると思うので、これから楽しみで仕方ありません」と語る。
さらにカブトムシの幼虫にはこんな使い道もある。粉末化して魚や家畜の餌にするというのだ。世界的な人口増加に伴い2030年までにタンパク質の受給バランスが崩れ始めるといわれているが、カブトムシの幼虫はその解決策としても期待されているという。「カブトムシの栄養豊富なたんぱく質が含まれた粉末を飼料界に出していくことで、魚の値段も下げることができたり、世界のたんぱく質不足に繋がったり、いろいろ出来るんじゃないかと思って研究をすすめています」と大木バイオクリエーションズの藤田康太郎さんは未来を見つめる。
カブトムシを利用した循環型ビジネスの今後に注目だ。世界の大きな課題の解決の糸口をカブトムシが持っているかもしれない。
(テレビ西日本)