2024年に創立93年を迎えた桂浜水族館が、ついに“デジタル化”に乗り出した。“オンライン餌やり体験”や、飼育員がどこで働いているか確認できるようになるなど、桂浜水族館らしいユニークな活用を行っている。
デジタル化で負担軽減と時間短縮に
高知の浜辺にたたずむ、創立93年の桂浜水族館。手書きのポップで魚のおいしい食べ方を紹介するなど、ユニークで昔懐かしい桂浜水族館が“デジタル化”という新しい取り組みを始めた。
この記事の画像(12枚)ホームページにある館内図には、生き物がいる場所ではなく、飼育員がいる場所が表示されている。飼育員のアイコンが表示されていた本館に行ってみると、実際に飼育員がいた。
水族館のスタッフの仕事は、生き物のすみかの掃除や水質管理など幅広く多岐にわたる。桂浜水族館事務局の長谷川皓さんは、「デジタルでできる部分はデジタルにして、人の手をかける必要がある所は人の手をかけて、そのバランスを大事にしていきたい」と話す。
桂浜水族館は、約200種類4000の生き物を10人ほどの飼育員で世話している。業務負担を減らすため、高知県の補助金を活用し約800万円かけて、デジタル技術を導入し、6月から本格利用している。
水槽の横には小さな四角いカメラがついていて、カメラの前を魚が通るたびに魚の長さ・魚長や高さ・魚高を測っている。長谷川さんは「水槽にいっぱい魚がいると、同じ魚を記録しちゃったり、手間になっていたんですよね。それを自動化することで、かなり負担軽減につながっています」と話し、手書きで紙に記録していた時間を短縮できるようになったという。
桂浜水族館らしいユニークな活用法
タブレット端末を使って遠隔で餌をあげることもできる。画面をタップすると、水槽の上のエサ箱が回転し給餌できる仕組みだ。このシステムを使ってお客さんにも楽しんでもらおうと、桂浜水族館が考えたのが「オンライン餌やり」。
水族館のホームーページから専用サイト「ハマスイ+」を開くと、飼育員と同じように遠隔で餌やりができる。長谷川さんは「水族館を身近に感じてもらって、次は水族館行ってみようかと思っていただけたらうれしいです」と話す。
事務所のパソコンに表示されていたのは、水族館を上から見た写真で、四角いアイコンは飼育員がどこで作業しているかを表している。飼育員は位置情報が分かる機械を身に着けていて、館内に設置されたセンサーの前を通るとアイコンが移動する仕組みだ。
誰がどの作業にどれくらい時間をかけているかを把握し、作業効率アップを目指す。
長谷川さんは「お客さんに楽しんでいただける画面として、『会える水族館』というのがあります。実際に、今スタッフがどこで働いているのかというのをリアルタイムで見ることができるようになっています」と、このシステムを“桂浜水族館らしく”活用している。
昔の良さを残しつつより良い水族館に
桂浜水族館の飼育員たちは全国に“ファン”がいる。館内ですぐに見つけることができ、家や職場でも飼育員たちに思いをはせることができる。
魚類担当の藤村誠一さんは「今、誠一さんいるんだと理解してもらって、お客さんを見た時に(生き物の)解説もしやすくなるかもしれないので、非常にいいと思います」といい、「ちょっと悪いことできなくなりましたね。こっそりどこかで休んだりとかも」と笑いながら話す場面もあった。
業務負担の軽減や効率化で空いた時間は、お客さんとのコミュニケーションやイベントの準備に充てたいとしている。
長谷川さんは「水族館のモットーとして“なんか変わるで桂浜水族館”というのをやっているので、昔の良さを残しつつ、新しいものを取り入れながら、どんどん変わってより良い水族館を目指していきたい」と、今後の目標を語った。
デジタル化で、さらに身近に感じられるようになった桂浜水族館。館内でも家でも、生き物や飼育員の“推し活”をしてみてはいかが?
(高知さんさんテレビ)