身近にある材料を使って、高知市の中心商店街に実在する店舗を次々にミニチュアに仕立てる男性を取材した。2023年にも取材したことがあるが、続々と新作ができているという。
こだわりは身近な材料
ミニチュアの手入れをしているのは、「のりさん」こと茨木典幸さん(67)。のりさんは、高知市帯屋町にある1920年創業の老舗「メガネのクスノセ」の認定眼鏡士で、“おまちのミニチュア作家”でもある。

10年ほど前にドールハウスを見たことをきっかけに趣味でミニチュアづくりを始め、のりさんがよく利用する高知市の江ノ口コミュニティセンターの図書館に作品をずらりと展示している。

こだわりは身近にある材料で作ることだという。図書館に展示されているガーデニングの店は、そうめんの箱で作られている。ジョウロの筒と口の部分は釘、上品な椅子の背もたれはつまようじだ。小物は比較的安価な石粉粘土で作り、アクリル絵の具で色付けしている。

そんなのりさんが2022年から作っているのが、中心商店街に実在する店舗のミニチュアだ。最初に作ったのが、大橋通り商店街にある老舗「門田鰹節本店」の12分の1のミニチュア。外観はもちろん、ふわふわの削り節や木彫りの看板も本物そっくりだ。

その後も、くだもの店やうなぎの販売店、ドリンクやスイーツのテイクアウト店など、続々と「実店舗」シリーズを制作。2カ月から3カ月ほどかけ、1つの店舗を作る。
最新作は「佃煮の箱」で制作
9作品目となる7月に完成したばかりの最新作は、創業して52年のアパレルショップ「NIBANGAI」だ。店の前を通るたびに、2階部分のディスプレイを見て作ってみたいと思っていたという。

“おまちのミニチュア作家”・茨木典幸さん:
実はこれ秘密があって、以前、舞さんに取材の時にいただいた佃煮の箱で作らせていただいています。

高知さんさんテレビ・野村舞アナウンサー:
うちで中身を食べた佃煮の箱をのりさんにプレゼントしたんです。ここで活用されたんですね。
NIBANGAIのスタッフも「細かいところまでそっくり」と感激。オーナーの岡本千恵子さんは、「もうね、みんなでかわいいーって。うれしかったです。うちを作っていただけたなんてびっくりしました」と喜びを語った。
様々なアイデアで忠実に再現
6月には、アーケードの角地にある100年以上続く老舗「中西呉服店」のミニチュアを完成させた。制作期間は約3カ月で、そうめんの箱を使い、間口が広い店舗を12分の1で再現した。

これまで作った中でもパーツの数と種類が多い力作だ。制作中は店に足しげく通い、“店番ができるくらい”まで商品についてリサーチしたという。

タンスの引き出しは可動式で、中も忠実に再現されている。特殊なカメラでミニチュア店舗に入ってみると、のりさんが着ていたYシャツの生地や、石粉粘土で作ったフィギュアなどにアクリル絵の具で色を付けて作った小さな世界が広がっている。

ガラス戸の素材は、のりさんの店で販売している眼鏡ケースが入っていた透明の箱。ずらっと並んだ反物は、お弁当を買ったときにつく丸い割り箸を利用して作っているという。丸い割り箸をカットし、色を塗った布を巻きつけているのだ。のりさんは反物作りについて「一番面白かったです」と振り返った。

のりさんは仕上がったミニチュアをお店にプレゼントしている。中西呉服店で66年働く大女将の中西史子さんもその細かさに見入り、「(仕上がりは)言うことない。本当に素晴らしい」と感激していた。
のりさんは架空のお店も含めると既に50作品以上を制作している。商店街でものりさんのミニチュアづくりは有名で、木の空き箱があれば、のりさんの所へ持って行っているという。捨てようと思っていたものが店の“分身”となって生まれ変わることに商店街の皆さんはとても喜んでいた。
ミニチュア作りで深いつながり
のりさんはミニチュアを作ることで、他の店とより深い付き合いができるようになったという。

“おまちのミニチュア作家”・茨木典幸さん:
できるだけ忠実にお店を作る。気に入ってもらえなかったらダメなんでね。お店の方に喜んでいただいたり、お客さんが見てすごいなと言ってくれたら一番うれしい。

のりさんは、「次はどこの店を作るかリサーチ中」だという。手作りミニチュアが、商店街ならではのつながりをさらに深めている。
(高知さんさんテレビ)