台風5号は12日午前8時半ごろ、岩手県大船渡市付近に上陸した。東北の太平洋側に台風が上陸するのは2016年、2021年に次いで3例目。高気圧に押し出され、異例のコースをたどることになった。
西へ…気象台も「珍しい」
台風5号は当初、日本の東の海上を北に通り過ぎると考えられていた。しかし、日本側へとせり出した太平洋高気圧に押されて進路を西に変え、東北地方を東から西へ横断するという仙台管区気象台の主任予報官も「なかなか珍しい」と話すコースをとることになった。

東北太平洋側の上陸は3例目
似たコースをたどったのが2021年7月の台風8号だ。1951年の統計開始以来、初めて宮城県に上陸。岩手県、秋田県と通り日本海へと抜けた。上陸時の中心気圧は994ヘクトパスカルとそれほど発達していなかったこともあり、東北に大きな被害はなかった。

直撃で被害は甚大に…
一方、東北の太平洋側に初めて上陸した2016年8月の台風10号は、岩手県宮古市、久慈市で1時間80ミリの猛烈な雨となるなど、東北や北海道に記録的な大雨をもたらした。

岩手県岩泉町の高齢者グループホームの入所者など、岩手県と北海道で26人が死亡し、3人が行方不明となった。上陸時の中心気圧は965ヘクトパスカルだった。

“遅すぎ”で影響長引く
台風5号が警戒されるのはコースだけではない、時速わずか15キロという“遅さ”にもある。
高気圧に遮られたこともあり、ゆっくりと東北を横断する予想で、影響が長引くおそれがあるという。中心気圧は12日午前8時時点で985ヘクトパスカル。勢力を維持したまま上陸し、12日午前6時から13日午前6時までの24時間降水量は東北太平洋側の多い所で250ミリと予想されている。宮城県でも東部・西部ともに200ミリの24時間降水量が予想されていて、線状降水帯が発生した場合はさらに雨量が増えるおそれがある。(12日午前7時時点)

“経験ない”が通用しない
これまで西日本に多かった大雨災害。7月28日に記録的な大雨による被害があった山形県酒田市のように、近年、東北でも“経験のない”大雨災害が相次いでいる。異例が日常になる前に、東北も雨への備えを確実に進めていく必要がある。