北海道では、日本海溝と千島海溝沿いでの巨大地震や大津波が想定されている。
最悪の場合、釧路市では人口の半分が犠牲になるとされており、その現状を取材した。
北海道でも想定される巨大地震と大津波
北海道・厚岸町が3年前に公開した津波のシミュレーション映像だ。
この記事の画像(8枚)海岸沿いの町を襲う津波の恐ろしさをリアルに描いている。
もし日本海溝や千島海溝でマグニチュード9クラスの巨大地震が発生した場合、太平洋側沿岸の町には最大26.5メートルの津波が押し寄せると想定されている。
北海道は独自に被害を推計しており、最悪のシナリオでは、日本海溝沖で14万9000人、千島海溝沖で10万6000人が死亡するとしている。
釧路市では8万4000人、函館市では2万9000人が犠牲になると発表された。
釧路市は「津波避難タワー」建設へ
「釧路市の大楽毛地区の海岸です。このように低い土地に住宅が多く並んでいます。地震が起こった場合、最大10メートル級の津波が襲い、ほぼ全域が浸水するということです」(田中うた乃 記者)
一部が「避難困難地域」とされる釧路市大楽毛地区。
釧路市は津波発生時に住民900人が避難できる「津波避難タワー」を2026年度中に完成させる計画だ。
町内会長の亀卦川正一さんは、この計画に不安を抱えている。
「70歳以上が半数を占めているから避難するのがつらい人も多くなってくる」(釧路市大楽毛 さつき町内会 亀卦川正一会長)
「冷たい水の中で死にたくない」
これは、町内会で2023年に行われた津波避難についてのアンケートの回答の一部だ。「近隣の人まで助けるのは無理」という声が29人から上がり、「自分も家族も体調不良で手助けが必要」という回答が6人あった。
亀卦川さんは、手助けが必要な人に対して器具をつけて隣近所で助け合いながら避難することを模索している。
「1人の犠牲者を出さない。結果は分からなくてもそういう目標をたてるのが町内会じゃないかと思っている」(亀卦川会長)
釧路市は2022年に3D技術を用いた津波浸水マップを作成した。
このマップは、近隣の避難所までの経路も確認できる。
「災害が起きたときに(マップを)見るのは遅いので、日ごろから災害がきたときにはどのようになるのか、避難経路も含めて確認に使ってもらいたい」(釧路市 阿部謙一 防災危機管理監)