岡山県の内外でDVシェルターを運営する津山市のNPO法人が、2024年初めて夏休み中の子どもたちにお弁当を届ける取り組みを始めた。シェルターから自立した親子のサポートへ、支援の輪が広がっている。
貧困家庭などの子どもにお弁当を
津山市の飲食店に依頼して作ってもらったお弁当が、夏休み中の子どもたちに届けられる。これは、岡山県の内外でDV被害者の保護シェルターを運営する津山市のNPO法人「オリーブの家」が、民間企業の補助金を受けて2024年初めて行っているものだ。

夏休みや冬休みなどの長期休暇に、貧困家庭などの高校生までの子どもたちに週1回、お弁当を配達する。オリーブの家の山本康世特別顧問は、「DVシェルターから出たが、まだまだすぐに貧困から抜けられないお母さんたちがいる。大型連休中ずっと子どもが一人でいて、なかなか栄養面の偏ったものしか食べさせられないことがあって」と語る。

倉敷市と津山市で希望のあった40人を対象に7月からスタートした。オリーブの家は県の内外に9つのシェルターを構えていて、自治体が運営するシェルターとは違って入居期限を設けず、心理カウンセラーの資格を持つスタッフが心のケアを行いながら、住居や就職の支援、被害者が離婚を望めば裁判や調停の手伝い、時間がかかっても保護された人が自立できるまでのサポートを行っている。
「日常的に暴力を受けていたので、あざができたり」と語るのは、夫からの身体的な暴力と精神的な暴力で逃げてきたというDV被害者だ。コロナ禍にはパートナーの在宅が増え、DVは社会問題となった。

オリーブの家では年間約100人を保護してサポートを続けてきたが、助けを求めてくるのはDV被害者にとどまらなかった。非正規雇用が多い女性の貧困問題、子どもの虐待やヤングケアラーなど、オリーブの家では、約7年間の活動の中で直面した様々な課題の解決策を模索してきた。
配達でDVや虐待を察知、早めの対策を
「困っている人なので、お弁当を渡したら喜んでもらえると思う。その際に、他に支援が必要なことがないか聞いて、私たちができる支援につなげていきたい」と話すのは、オリーブの家の山本礼知理事長。お弁当を届けに訪れた家では、「困っていることはないですか?」などと話を聞いていた。

オリーブの家で見出した解決策の一つがこの事業。お弁当を直接家庭に届けることで、必要な支援をつぶさに拾い上げることができるだけでなく、DVや子どもの虐待を察知し、早めの対策につなげられるという。
オリーブの家・山本礼知理事長:
これから行くのはもともとDVの被害者で、シェルターから出た方。自立をしたが、シングルマザーでなかなか貧困から抜け出せない家庭にお邪魔する。
2023年、DVシェルターに駆け込んだ親子。約1年シェルターで過ごし、その間、夫との離婚も成立。彼女は仕事も見つかり、この春、新しい住居で親子2人の生活をスタートさせた。

お弁当を受け取った母親に、山本理事長は「最近どうですか?」「仕事行けるようになって良かったです」などと優しく声をかけていた。

母親は、「すごくありがたいです。お金もそんなに余裕がないので、1食もらえるだけでもものすごく助かります。毎日楽しいし、穏やかな気持ちでいられるし、子どもの成長もすごくうれしい。勇気を出して助けてと言って、その後は本当にサポートしてくださるから、オリーブの家の方々。最初の一歩、勇気を出していってほしい」と語った。

オリーブの家・山本康世特別顧問:
誰一人虐げられることがないのが一番いい世界。どうしても一番の犠牲が子どもたちになる。だから、子どもだけを助けるというよりは、まるっと家庭を助けていくような支援がどうしても必要。最終的には市民みんなでそういうことを解決できる市になったりするのが望ましい。
勇気を出して「助けて」と声を上げた人たちが、心の底から笑顔になれる日まで…。
支援の輪が広がっている。
(岡山放送)