明智光秀には主君を倒す理由があったはず

9月に行われる自民党総裁選について茂木敏充幹事長は1日、「今の仕事がどうとかいろんな意見があるかもしれない」としながらも「自分はふさわしい人物なのか、これが大きな判断基準だ」と述べて、幹事長でも出馬する可能性を示唆した。

訪問先のタイ・バンコクでFNNの取材に応じる茂木幹事長 8月1日
訪問先のタイ・バンコクでFNNの取材に応じる茂木幹事長 8月1日
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同じく出馬を模索する河野太郎デジタル相は31日、日本原電の東海第二原発を視察し、安全性が確認された原発再稼働を当面容認する考えを改めて示した。

核融合の研究施設も視察 7月31日
核融合の研究施設も視察 7月31日

また小泉進次郎元環境相は7月に行われた会合で、「自主憲法制定が自民党ができたルーツ」と述べて憲法改正に前向きの姿勢を見せた。

小泉氏は憲法改正に前向きな発言
小泉氏は憲法改正に前向きな発言

政権の幹部や閣僚だからといって総裁選に出てはいけないということはない。また総裁選を意識して政治家が自分の心情や政策を披露するのは結構なことだ。

だが今回一つ足りないことがある。それは現職の総裁が「おりない」場合は「おろす」なり、あるいは「否定」をして「現職はここが間違っているので私ならこうする」と言わねばならないのに、それがない。

茂木氏は以前「令和の明智光秀にはならない」と言っていたが、理由があれば主君を倒してもよいのだ。明智光秀だってたぶん織田信長を倒さねばならない理由があったはずだ。

当事者がおとなしすぎる!

現状では現職の岸田氏は再選への意欲を示しているのに、それに対して「おろし」や「否定」はほぼない。非主流派のキングメーカーと見られる菅義偉元首相は早々に岸田氏への退陣要求とも取れる発言をしたが菅氏は「当事者」ではない。

「当事者」では茂木氏が以前「物事をやるには3年以内ぐらいがちょうどいい」と述べて、「岸田もう辞めろということか」とちょっと盛り上がったが、その後「3年以上やってはいけないという話はしていない」とトーンダウンした。

茂木氏にとって個人的にも親しい麻生氏の存在はとりわけ大きいが…
茂木氏にとって個人的にも親しい麻生氏の存在はとりわけ大きいが…

岸田氏が再選に意欲を示している以上、対抗馬の茂木氏は「岸田が出るなら出ない。出ないなら出る」という構えのようにみえる。主流派のキングメーカーである麻生太郎副総裁はこのままだと岸田氏を推すしかないのではないか。

まさかの岸田再選も

一方の非主流派はキングメーカーの菅元首相が誰を推すかが焦点。先日たまたま菅氏に会ったので「そろそろ誰を推すか決めてくれないと始まりませんね」と水を向けてみたのだが、「へへへ」と笑うだけだった。あれは多分まだ決めてない。

菅氏の“推し”は誰に?
菅氏の“推し”は誰に?

候補に名が挙がっている人たちも「菅さん、俺を推してくれ」とガチで頼んでいる様子もなく、双方にらみ合って身動きが取れなくなっているのではないか。

岸田さんにケンカを売る人は現れるのか
岸田さんにケンカを売る人は現れるのか

主流派でも非主流派でもいいのだが、自分が首相になりたいのなら今の首相の岸田氏にケンカを売って「岸田さんはここがダメ。私ならこうする」と訴えなければならない。このまま誰も岸田氏をおろさず、否定もしなければ、岸田再選の芽も出てくると思う。

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。