ことし3月、兵庫県の元西播磨県民局長(60)が、斎藤知事のパワハラや物品をねだった疑惑などを告発する文書を一部の報道機関などに配布。 それに対し、斎藤知事は「事実無根の内容が多々含まれている。業務時間中に嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格です」 と反応。

これを受け、元県民局長は県庁内に設置された窓口に公益通報したものの、ことし5月に告発文は「核心的な部分が事実でない」として停職3カ月の懲戒処分を受けた。 しかしその後、一部の疑惑が事実だったことが判明。 告発を調査するための百条委員会が設置されたが、7月7日、元県民局長が死亡しているのが見つかった。自殺とみられる。

■取材を続けてきた記者が解説

関西テレビ 神戸支局 松浦記者
関西テレビ 神戸支局 松浦記者
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亡くなった元県民局長に直接取材を続けてきた関西テレビ神戸支局の松浦記者が最新の情報を報告。

そしてジャーナリストの安藤優子さん、タレントの田村淳さんが率直な疑問をぶつける。

田村淳さん:ここまで県の職員との信頼関係が崩れていて、それを兵庫県民の方との信頼関係をクリアにする意味でも、もう一回選挙という形でその意見を聞くように、なぜすぐに切り替えられないんだろうなと思って。元明石市長の泉さんはパワハラ問題ありましたけど、すぐに続けていいかどうかっていう辞職して、また選挙するという選択を取ったじゃないですか。なので本当に県民のことを思ってるのであれば、それぐらいのジャッジをしてもいいタイミングじゃないかなと思うんですけど。残ることが県民のためだと思うその理由をちゃんと聞かせてほしいですけどね。

県民の負託を受けていると言うことを繰り返し話す斎藤知事だが、元幹部職員はどういった思いだったのだろうか?

松浦武司記者:元県民局長の方に、6月下旬に私たちの取材班が話を伺いました。斎藤知事の県政の運営方針に問題意識を持っているということでした。元局長によると、知事は議会やその職員の方と充分にコミュニケーションができてない状態でも、強引に政策を進めていくところがあると。このまま続けば今後の県民や残る後輩にとってよくないのではないかと思って告発をしたとお話されていました。

■なぜ県の公益通報窓口を最初に使わなかったのか

告発された方は、内部告発もしているんですけど、まず最初にしたのは報道機関などへの外部告発だったのはなぜなのだろうか?

松浦武司記者:県の内部に公益通報窓口がありますが、最初に使わなかったんですね。なぜかと聞いたんですけれども、今回、県のトップに関する告発であって、県の内部の組織に相談するのが本当にいいのかどうか、その中で公正な調査が行われるのかまあ少し疑問が残るというふうにお話していました。その中で一番最初に選んだのが、3月に外部の報道機関に告発するという方法を選んだと話していました。

安藤優子さん:公益通報は、外部に対して情報を告発することも含まれていると私は理解しているのでですが、まずメディアに告発をしたというのはいろんなこう状況を考えて一番効果的であろうというふうにお考えになったんじゃないかというふうに思うんですね。でも、結局『嘘八百』という一言で片づけられてしまって、情報やその告発の内容を精査するまでもなく、片付けたっていうこと自体が、やっぱりこの内部告発をした人間の意思とか気持ちをもう思いっきり踏みつぶしたわけですよね。私は、内部告発者を守れないっていうところが、今回問題にしなくてはいけない構図だというふうに思います。

■現在の県庁の中の雰囲気は

連日このニュースをお伝えしている中で、県庁で働いている皆さんはどう思っているのか、県庁の中の雰囲気はどうなっているのか。

松浦武司記者:今日の会見でも、知事が述べていた『感謝する』という言葉なんですけれども、実際に私が取材している職員でも、普段ありがとうございますとかいう方じゃなかったんですけども、ありがとうございますと繰り返すようになった。その一方、これまで政策に口出しや意見を挟んできたところがあったらしいのですが、それがなくなって仕事がやりやすくなったという意見もあります。

松浦武司記者:一方で弊害も出ておりまして、知事が出席するイベントや会議を調整する時に、相手の団体や企業から今回の問題どうなってるんだという指摘があったりとか、知事が出るならイベントや会議を延期したり、中止しましょうという動きになっていて、実際に県政の停滞が起きています。

田村淳さん:停滞している状況は、県民にとって良くない状況っていうのは、知事はどういうふうに受け止めて、知事の周りでそのサポートしてる人達は、どのような空気感になってるんですか?

松浦武司記者:知事の周りにいる最高幹部のほとんどが、知事に辞職したらどうかと話しているらしいんですね。ただ辞職して、もう一度出直し選挙をするとか、いろんな責任のとり方があるという信念がある中で、知事は頑なに辞職をしないですね。会見では、3年前の選挙で85万票の県民の負託を受けたから、私は続ける必要があるんだと説明しています。

田村淳さん:3年前はこういう問題がなかった知事を選んだのであって、こういう問題が出てきたのであれば、もう1回意見を聞くのが当たり前のような気がするんですけどね。

■安藤優子さんは「コミュニケーション不足と片付けることはおかしい」と話す

安藤優子さん:斎藤知事になってから、政策決定が割と密室で行われるようになったっていう話も聞くんですけれども、県の職員たちが不信感を持ったのは相当前からなんじゃないかなって気がするのですが、どうでしょうか?

松浦武司記者:現場の職員の声を拾い上げるというより、ある程度息のかかった幹部で決定をして、強引に進めてしまう。だから職員の声が届かないという声はありました。

安藤優子さん:パワハラを受けたと言っていれば、それはコミュニケーション不足ではなくてパワハラなんですよね。そういう認定の仕方っていうのは、今や常識なわけだから、それをコミュニケーション不足だったかもしれないと片付けることすら、おかしいと言う立場を私は取ってますね。

■職員は百条委員会で「本当のことは言いにくい」と話す

田村淳さん:百条委員会は、自分が今から証人として出ますっていうのを宣言してからってことですよね?

松浦武司記者:そうですね。今回、事前承認という制度が、各部の総務課長に出さなければいけないんですね。証人として呼ばれてることすら知られたくない方もいらっしゃるなかで、『上長に提出するという動きを周りの同僚が見て、あの人証言するんだなとなったら本当のことはかなり言いにくいです』という話を職員の方は話していました。

田村淳さん:ブレーキがかかるでしょうね。そもそも行動に移す時にブレーキがかかるし、なんでこういうルールを作ったのかっていうのが不思議ですよね。

安藤優子さん:公務員って守秘義務はあるわけじゃないですか。そうした県民の非常に込み入った事情も知りえる立場にいるわけですよね。業務上だからその守秘義務があるっていう部分は分かるんですけれども、場所は百条委員会ですよね。守秘義務を盾にとって、本当のことが見えてこないっていうことになるのは、私はやっぱりおかしいと思ってるんですよ。

安藤優子さん:守秘義務はあります。でも、その枠を超えても、ちゃんと白日のもとにさらさなくてはならない事実というのがあるわけじゃないですか。そこを追求しようとしてるときに、守秘義務で証言しにくくなるというのは本末転倒なんじゃないかなというふうに思います。

■県庁の反応は

しゃべりやすい環境がなかなか作れていない中で、所属部署の承認が必要。県庁の中ではどういう反応なのか?

松浦武司記者:基本的に事前承認は、職員を守るためっていう説明をしてるんですけども、職員の人からすると、事前承認という制度で答えにくくなってしまっていると。個別に事前承認するのではなくて、例えば百条委員会に関しては、一括で承認して欲しいといった声も上がっています。

田村淳さん:信頼関係がない状況で、職員からするとこれからのキャリアを握られた状態の中で、ちゃんとした意見が出てくるのか、本当は先頭に立って、全てをつまびらかにして、先頭に立つのが知事じゃないといけないのに、そこの対応がないっていうのはやっぱり不誠実だなって感じますね。

安藤優子さん:誰を何のために守っているのかっていうところをちゃんと整理しないと、方便にしか聞こえて来ないですよね。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月24日放送)

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