刑期10年以上の受刑者を収容する岡山刑務所。
受刑者たちは、自分の犯した罪と向き合い、厳しい生活を送っている。
一方で、受刑者にとって心の支えになる時間もあるという。
知られざる塀の中の実態を、岡山放送・岸下恵介アナウンサーが取材した。

刑期10年以上…岡山刑務所の受刑者の1日とは

午前6時35分、受刑者の朝は始まる。
岡山刑務所では、初犯で刑期10年以上の男性受刑者を収容していて、その数 約460人。
このうち、無期懲役受刑者が半数を占めている。
朝は、刑務官が受刑者が生活する全ての部屋を見回る。

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40代受刑者(無期懲役):
殺人で無期刑です。規則正しい生活をしているので、自分が今までなかったような、今まで生活していたのとは全く違う環境ではあります

朝食を終えると、受刑者は隊列を組み、一糸乱れぬ行進で工場に向かう。
長期の受刑者を収容する岡山刑務所。
それゆえに受刑者の高齢化が進んでいる。

工場で、受刑者は機械を使って家具の部品などを作っている。
中でも、特産の備前焼を作る窯業は、岡山刑務所ならではの作業で、休憩を挟みながら夕方まで続く。

受刑者の1週間の楽しみ…「刑務所DJ」

規律の厳しい生活が続く毎日。
そんな受刑者にとって、週に1回、特別な時間がある。

刑務所DJ "アニキ”(ラジオの音声):
土曜日の9時となりました。皆さん、こんばんは。アニキです。今夜も「ミュージックスタイル」を楽しんで聞いてください

"アニキ”と名乗る声の主は、40代の受刑者。
これは、刑務所内で、毎週土曜日に30分間放送されているラジオ。

DJを務める40代受刑者(無期懲役):
殺人と死体遺棄ということで、無期懲役の刑を受けましてここに来ました。DJ名を何にしようか悩んだんですけど、工場からみんなに"アニキ”と言われているので、"アニキ”でいこうかと

ラジオ番組は、月に1回収録し、翌月に放送している。
塀の中で40年続く「刑務所DJ」という取り組み。
受刑者が、1年の任期でラジオのDJを務め、原稿は自分で考えている。

刑務所DJ "アニキ”:
きょうは8月8日ですが、何気に8月8日生まれの芸能人って多いような気がします。かつて、アニキが恋したお姉さまも8月8日生まれでした

DJを務める40代受刑者(無期懲役):
少しでもみんなの楽しみというか、癒やし、勇気づけられればいいなとは思っています

岡山刑務所企画部門・和田行実主任矯正処遇官:
刑務所の生活というのは、当然のことながら孤立・孤独感を感じていますから、情操教育の面から考えれば、彼らの更生に与える影響というのが大きいと考えております

受刑者リスナーからリクエスト曲の募集も

ラジオでは、リスナーの受刑者から、かけてほしい音楽とメッセージを募集し、選ばれたものが放送されている。
こちらはラジオを楽しみにしている受刑者の1人。
現在、浜崎あゆみさんの「As if...」をリクエストしている。

40代受刑者(懲役20年):
携帯の着メロに浜崎あゆみの曲を使っていたら、当時2歳くらいの息子だったと思うんですけど、その着メロの音をまねして、よくつぶやいていたので

ーー自分がリクエストした曲が流れたときは?

40代受刑者(懲役20年):
もう鳥肌が立つような思いになる

刑務所DJ "アニキ”:
「毎週この時間を楽しみにしています。1週間頑張った自分へのご褒美をお願いします」と9工場はKさん。リクエスト曲は、加藤ミリヤ「LALALA」。
今夜のラストナンバーです。「昔よく聞いた、なつかしの曲です」と経理工場はSさん。リクエスト曲は、浜崎あゆみで「As if...」

岡山刑務所・望月英也所長:
メッセージは短いものばかりですけれども、その中にリクエストする人が込められた思い、その人の立場になって物事を考えていくという機会も与えられていると思いますので、非常に有意義なものだと思います。この40年という大きな節目からさらに発展させていきたいと考えております

受刑者たちは、ラジオを通じて社会とのつながりを感じながら、自分の犯した罪と向き合う日々を送っている。

(岡山放送)

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