アメリカのバイデン大統領は21日、再選を断念し、選挙戦からの撤退を表明した。後継にはハリス副大統領を支持し、ハリス氏も立候補を表明した。一方、トランプ氏側は、ハリス氏が大統領候補になることも見据えて準備を進めていたとされ、早くも攻撃を強めている。

ハリス氏、党内での支持を急速に拡大

選挙まで100日余りとなる中での、現職大統領の立候補断念には混乱も予想されたが、ハリス氏が急速に支持を拡大している。

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バイデン大統領の支持を得たハリス氏は、早々に大統領選への立候補を表明すると、クリントン元大統領夫妻のほか、大統領候補として有力視されていた州知事などの支持も取り付けている。

民主党幹部はまだハリス氏への支持を表明していないが、全米に支持が広がるのを見極めているとの見方も出ている。こうした中、民主党はハリス氏の立候補表明から、約73億円の献金が集まったと発表している。

民主党内では、ハリス氏がバイデン氏よりは勝算があるとの見方が大勢で、ハリス氏を黒人、アジア系の女性で初めての大統領候補として支持を拡大させたい考えだ。

トランプ氏側は、ハリス氏が大統領候補になることも見据えて準備を進めていたとされ、早くも攻撃を強めている。トランプ陣営は、ハリス氏を「バイデン以上の最悪の人物」と批判し、バイデン氏の撤退を「クーデター」とも指摘して、民主党が大統領を引きずり降ろしたとの印象を強調している。

撤退決断の“裏側”

現職の大統領選からの撤退は56年ぶりの異例の事態になっているが、発表する1分前までほとんどのスタッフが知らされておらず、かなり極秘裏に進められていたようだ。

アメリカのNBCによると、バイデン氏は撤退を決断する前に、ハリス氏とトランプ氏が対決した場合どうなるか、民主党が極秘に行った調査結果をみせるよう幹部に求めていたという。

CBSが行った世論調査では、「どちらに投票するか?」という質問に対し、バイデン大統領とトランプ氏の場合、トランプ氏が5ポイントリードしていたが、ハリス氏になると、トランプ氏のリードは3ポイントに縮まっている。

一方、トランプ氏は余裕の構えをみせており、バイデン氏が撤退表明した直後のCNNの取材に対し、「バイデン大統領は、史上最悪の大統領として語り継がれるだろう」と痛烈に批判した。その上で「ハリス氏の方が倒しやすい」と話し、ハリス副大統領への攻撃を早速展開している。

どちらも嫌「ダブルへイター」が過去最高に

ハリス氏の逆転のカギを握るこんなデータもある。

世論調査では、トランプ氏もバイデン氏も「どちらも嫌」と答えていた「ダブルへイター」と言われる人が25%と過去最高になっていて、4年前の選挙の時の2倍に増えている。フジテレビの立石修解説委員室長は、「4人に1人のアメリカ人が『誰に投票すればいいかわからない』という極めて異例の状況だった。こうしたアメリカ国民の“無力感”をハリス氏がどこまで受け止められるかが今後のカギになる」とみている。

副大統領候補には“自分とは異なるタイプ”を選出か

トランプ氏は、自分の分身のようなバンス氏を選んだが、ハリス氏は誰を副大統領にするのか。

たとえばオバマ元大統領は副大統領として、自分とは異なるタイプのバイデン氏を選んだ。ハリスもこの方法を踏襲し、自分ではリーチ出来ない支持層を狙うと思われる。激戦州であるノースカロライナ州知事のロイ・クーパー氏や、ミシガン州のウィットマー知事などの名前が挙がっており、ウィットマー知事の場合、初の女性ペアになる。

異例の展開となっている大統領選、どのような対決の構図となっていくのか今後が注目される。
(「イット!」 7月22日放送より)