高市早苗経済安保相が出版した経済安全保障の書籍が好調な売れ行きを見せている。「BSフジLIVEプライムニュース」では高市大臣を迎え、経済安保の具体的な方策と課題について、さらに下がり続ける自民党・内閣の支持率に対する自民党議員としての考えを伺った。
セキュリティ・クリアランス制度がもたらすメリット
長野美郷キャスター:
通常国会で「重要経済安保情報の保護と活用に関する新法」が成立。内容は、政府が犯罪歴や精神疾患など7項目について身辺調査を行い、情報漏洩の恐れがないと認めた人に機微情報を提供する、いわゆるセキュリティ・クリアランス制度の創設。さらにサイバー対策や供給網の脆弱性など安保に支障をきたす可能性がある情報を「重要経済安保情報」に指定する。そして指定範囲は年内をめどに策定するというもの。情報漏洩の場合5年以下の拘禁刑や500万円以下の罰金。今回の新法成立で日本の経済安全保障に対する不安はどの程度払拭できたか。

高市早苗 経済安全保障担当大臣:
まず、法律はできたが政府統一的な運用基準を作る必要があり、有識者会議を立ち上げてその検討に入った。それらもパブリックコメントにかけて皆様のご意見も伺い、閣議決定して、細かい運用の仕方が決まり、その後法律が効力を持つことになる。効果としては、日本の経済や技術の分野の情報保全が強化されること。また、過去に特定秘密保護法ができて同盟国・同志国との情報共有が非常に円滑になったが、これは防衛、外交、テロの防止、スパイ活動の防止の4分野に限られていた。今回はこの経済・技術版であり、デュアルユースに関する機微情報なども同盟国・同志国と円滑に共有できるようになった。民間企業も国際共同研究ができる。
反町理キャスター:
なるほど。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
どこの国のセキュリティ・クリアランス制度にも共通するのが、安全保障上重要な情報を政府が指定すること、その情報を取り扱う人(クリアランスホルダー)について政府が信頼性を確認すること、情報を漏らした場合には厳しい罰則があること。日本もこれに合わせて法律を作っており、ほぼ国際的に通用すると思う。過去には、宇宙分野の外国政府の調達に日本企業が参加しようとしたところクリアランスホルダーがおらず、説明会にも呼んでもらえない例があった。学会に日本の研究者が参加できない例も。

長野美郷キャスター:
このセキュリティ・クリアランス制度で行われる身辺調査について、7項目が挙げられている。「重要経済基盤毀損活動との関係」「犯罪及び懲戒の経歴」「情報の取り扱いに関わる違法経歴」「薬物の乱用及び影響」「精神疾患」「飲酒についての節度」「信用状態その他経済的な状況」。実際の調査は誰が行うのか。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
特定秘密保護法では各役所が調査するが、今回は民間の方が調査を受けることが増えるため、内閣府が一元的に調査する。その調査結果を各役所の求めに対し提供する。調査を受ける方の負担を減らすことに注力した。

長野美郷キャスター:
認定された人がアクセスできる重要経済安保情報の指定範囲は年内をめどに策定するとのこと。新法成立と同時にまとまらなかったのはなぜか。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
法律の中には結構しっかり書き込みをしてある。重要なインフラとか、物資のサプライチェーンに関して保護をする措置やそのための計画・研究。また脆弱性、それをカバーするための革新的な技術などの重要情報。そして外国政府から提供された情報や日本国政府の情報収集能力など。あとは、それぞれの役所が持つ情報の中でどれが重要経済安保情報にあたるのかを明確にしていく。
能動的サイバー防御、法整備の必要性は切迫
長野美郷キャスター:
高市さんはサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の重要性についても訴え続けている。能動的サイバー防御とは、政府機関が特定の国内企業に対するサイバー攻撃の可能性がある通信を監視し、攻撃の兆候があった場合は相手のサーバーを未然に無害化するなどの対策を打つこと。サイバー攻撃で日本企業が実害を被る事態が続き、経済・産業界から一刻も早い制度の構築が求められているが。

高市早苗 経済安全保障担当大臣:
私は過去に自民党のサイバーセキュリティ対策本部長として政府への提言を取りまとめたが、その中にはもう既に入っていた。普段からアトリビューション(攻撃者の特定)能力を持つ方々を育成すること。平素からサイバー空間の不審な動きをチェックしておくこと。いざ大規模な攻撃が発生しかねない状況になれば、こちらから相手の設備に入って無害化できれば一番いい。
また日本国にとって非常に重要な情報が窃取された場合、多少過激だが、日本国政府がウイルスで相手の設備を攻撃し盗まれた情報を消去するぐらいのことは今から準備しなきゃいけない。ウイルス作成罪・提供罪というものがあるため、新たに法律が必要だが。

長野美郷キャスター:
平時から通信を監視するということについては憲法第21条の「通信の秘密」に抵触するという指摘もある。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
それに従い、通信の秘密についてがっちりと書かれた電気通信事業法がある。だが通信の秘密にこだわっていてはできない。だから電気通信事業法の改正もしなければならず、また不正アクセス禁止法も改正する必要がある。
憲法12条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は(中略)国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のために利用する責任を負ふ」とある。例えば電力会社がサイバー攻撃を受けたら、自家発電のできない小さな病院、福祉施設などはどうなるか。自宅で人工呼吸器を使っている人もいる。重要なインフラに対して明らかにサイバー攻撃が行われる予兆をキャッチしたときに国が何もしないのは無責任だと私は思う。法律の必要性はかなり緊迫してきている。
高市氏「私は日本列島を強くしていきたい」
長野美郷キャスター:
ここからは、自民党の議員としての高市さんにお話を伺う。まず自民党の支持率について。直近ではわずかに上昇が見られる調査結果もあるが、政治とカネ問題を発端に去年から低下傾向にあるが。自民党が支持を取り戻せない現状をどう見るか。

高市早苗 経済安全保障担当大臣:
とても残念に思う。皆こういう法律を変えたい、こういう日本を作りたいという志を持って頑張ってきたはず。初心に立ち返り、もし過ちがあったときにはできるだけ早くしっかりと謝罪して説明をすること。今回の政治とカネの問題、収支報告書の不記載についてもきちんと説明し、二度としませんとした上で、自分はこういうことをやりたいからもう一回選挙に出ると。そして選挙で皆様に信を問うということになるのでは。
支持率については国民の皆様のご判断だが、私は自民党の強みは政策構築力だと思っている。びっくりするぐらい多くの各分野の専門家がいて、毎日むちゃくちゃ議論している。
反町理キャスター:
安倍元総理が、2020年の8月28日に辞意を表明した記者会見で記者の質問に答えている。「しっかりとしたビジョンを持つこと、責任感、情熱、チーム力」の4つが総理総裁に必要な資質、組織運用の要諦だということだった。高市さんご自身はこれをどう感じるか。

高市早苗 経済安全保障担当大臣:
国家経営に関わる人がしっかりとしたビジョンを持っているのは当然。国家経営理念をガンと打ち出せなかったらリーダーは務まらない。責任感については、あらゆる責任はトップにあり、誰かのせいにした瞬間にその組織は終わり。情熱については、安倍総理もそうだったが、岸田総理もすごい体力で分刻みの地獄のような日程をこなしている。あれは並々ならぬ情熱がなければできない。そしてチーム力。安倍内閣では官邸のチーム力がすごかった。身の周りを風通しよく信頼して話せる人で固め、総合力で勝負していた。
長野美郷キャスター:
視聴者の方からのメール。「大学は元来機密保持に甘い体質で、留学生を通して技術流出が起きている。これを制限する方策は確保されているか」。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
大学や国立研究開発法人から情報重要情報が流出しないようにするためのガイドラインがあり、産総研事件(国立研究開発法人「産業技術総合研究所」の中国企業への技術情報漏洩事件)後に改定した。その後についてのフォローアップ調査をしている。意識はだいぶ変わってきている。また留学生を入れるときの審査も厳しくなっている。あとは大学のマネジメント層の意識改革が大事。
反町理キャスター:
視聴者の方から一番多く来たのは自民党総裁選に関するメールだが、今日は伺わない。発表されてから伺うつもりでいる。ただ「日本をどのように変え、良くしていきたいと今お考えですか」という質問はしたい。
高市早苗 経済安全保障担当大臣:
私は日本列島を強く豊かにしていきたい。外交力も防衛力も経済力も技術力も情報力も。
例えば防災対策、また各国が並々ならぬ情熱を持っているエネルギー安全保障、スペースデブリ対策など、あらゆるリスクを最小化すること。日本のエネルギー自給率は12.6%、食料自給率はカロリーベースで38%、低すぎる。そういうところに国が投資すべきだと私は思っている。
(「BSフジLIVEプライムニュース」7月18日放送)