ブリキの看板や戦隊ヒーローの人形など、昭和レトロな品物が大量に展示されている古民家が石川県金沢市にある。一歩足を踏み入れると昭和の時代に迷い込んだような不思議な空間だ。どんな物があり、どんな人が運営しているのか、訪ねてみた。
人気観光地の路地裏に一風変わった古民家が…
金沢市の観光名所、ひがし茶屋街の近くに古くからある住宅街に、ひと際目を引く古民家がある。玄関先は昭和のころに使われていたような紳士服店や牛乳販売店などのブリキ製看板で飾られ「金沢昭和迷宮館」と記されている。

中に入ると壁から天井までレトロな看板やおもちゃがぎっしりと飾られていた。金沢昭和迷宮館・館長の辰巳正之さんが迎え入れてくれた。ここは昭和の雑貨やおもちゃを展示販売する店。以前は金沢市新竪町にあった店を2024年3月、この場所に移転オープンしたそうだ。築124年の古民家の改装はすべて辰巳さん自身で行ったという。

昭和レトロの世界 始めたきっかけは幼いころの思い出
まず案内してくれたのが戦隊ヒーローや企業のマスコットキャラクターなどの人形が並ぶ部屋。中身が空洞になっているソフトビニール製の人形が1000体以上展示・販売されている。辰巳さん曰く、昭和レトロの世界では“フィギュア”ではなく“ソフビ”と呼ぶのが常だそうだ。

なぜこのような店を始めたのか。それは昭和レトロな品物に癒しを感じるからだという。
辰巳さん:
昭和レトロな品物を見ていると、気持ちが癒される。自分が子供の頃に見たものを大人になって再び見ると幸せな気持ちになる。それが1つのきっかけになってコレクションを展示・販売するようになった。

館長の推しは“ビンテージソフビ”
辰巳さんが特に見て欲しいとすすめるのがビンテージソフビコーナー。ガラスケースの中に、怪獣やヒーローの人形が入っている。商品の多くは客からの買い取りで仕入れ、展示・販売しているそうだ。

少女向け雑誌の挿絵などで人気を集めたイラストレーター、内藤ルネのコーナーもある。辰巳さんによると、これだけのボリュームで商品を揃えている店は珍しいそうだ。中でも1970年代に発表されたパンダのキャラクターグッズは今でも多くのファンがいる人気商品だ。

さらにディープな昭和の世界へ…
一口に昭和レトロと言っても様々なジャンルがあり、迷宮館ではその全てを網羅していきたいと話す辰巳さん。続いて2階を案内してくれた。階段を上がると「金沢ヘルスセンター」のポスターが目に飛び込んできた。
「金沢ヘルスセンター」は、1958年(昭和33年)から金沢市卯辰山で営業していた、動物園や水族館、遊園地、入浴・宿泊施設を備えた総合娯楽施設。1993年(平成5年)に廃業したが、老若男女多くの石川県民が訪れる人気スポットだった。

2階には時計やラジカセなど昭和の家電が展示されているほか、楽器のコーナーもある。ここでは主に1960年代に作られた「ビザールギター」という国産のギターを中心に展示している。
辰巳さん:
昔はロックンローラーだったんですよ。今はこの店が俺のステージ。

店の外に止めてある自転車ももちろん昭和の品だ。大きな特徴はギアのシフトレバーがついている位置。今の自転車の多くはハンドルの部分にギアの切り替え装置が取り付けられているが、当時はフレームの上辺の部分についているタイプが人気だった。ヘッドライトや特徴的なハンドルなど、凝ったデザインの自転車に昭和の少年たちは憧れたそうだ。

取材中、千葉県からの客が店を訪れた。欲しい品物が近くに無かったため、動画共有サイトで迷宮館の存在を知り、金沢まで買いに来たという。お目当ての「ソフビ」人形が無事手に入ったようだ。

昭和の時代を知る人にとっては懐かしく、当時を知らない若者や外国人にとっては新鮮な昭和レトロの世界。館長・辰巳さんの昭和愛があふれる不思議な空間を訪ねてみてはいかが?
(石川テレビ)