秋田県内ではイノシシとニホンジカの生息範囲が拡大している。イノシシについては、農作物が食い荒らされたり、田畑の土を掘り返されたりする被害が発生している。被害を防ぐために、農家が最新の通信技術を活用した対策の検討を始めた。
目撃・捕獲件数急増 農作物も被害に
秋田県が取りまとめた過去5年間のイノシシとニホンジカの目撃・捕獲件数は、2023年度はイノシシが269件で5年前の約5倍に急増。ニホンジカも200件を超え、右肩上がりに増加している。

また、目撃や捕獲された地域について、2013年度にはほとんど確認されていなかったイノシシが、5年後の2018年度には秋田県の南部を中心に増加し、2023年度はほぼ全域で確認されている。
一方、ニホンジカも2013年度は秋田県の北部を中心に地域が限定されていたが、2023年度は県全体に広がってきている。

生息範囲が広がるにつれ、イノシシに農作物を食べられたり、田畑の土を掘り返されたりする被害が発生している。ニホンジカの被害は秋田県内ではまだ報告されていないが、西日本では木を食べられる被害が深刻で、森林への影響が心配されている。
インターネットを活用し獣害対策
こうしたイノシシなどによる被害を防ごうと、秋田・鹿角市で最新技術を活用したわなの設置方法を学ぶ講習会が開かれた。

講習会には、鹿角市を含む3つの自治体の職員と猟友会のメンバー、あわせて21人が参加し、獣害対策の機器を取り扱うメーカーの担当者から、ICT(情報通信技術)とあらゆるものをインターネットに接続する技術(IoT)を活用したわなの設置について学んだ。

講習会では、おりの周辺にインターネットに接続したカメラや、センサー機器などを設置する事例が示された。
カメラやセンサー機器の設置により、離れた場所からリアルタイムでおりの様子を確認できるだけでなく、入り口の扉を閉めて動物を捕獲することが可能になる。

また、センサーが感知する高さをあらかじめ設定することで、設定した大きさに合う動物が入ったときだけ、おりの扉が自動的に閉まる。
安全かつ効率的だが導入費用の課題も
インターネットを活用したシステムを利用することで、昼夜を問わず、安全かつ効率的にイノシシなどを捕獲できる。

鹿角市猟友会の稲垣正人会長は、「みんなの見回りの負担がいくらか軽くなるんじゃないかと思う。スマホで全部対応できるので、その後の対策を考える時間ができる。余裕をもってやれる」と話し、課題とされる人手不足の解消に一役買いそうだ。
ただし、システムを導入するための費用は、最低でも50万円ほどかかる。

鹿角市は、猟友会などからニーズの聞き取りをしながら、助成金制度などの構築に向けて検討していきたいとしている。
(秋田テレビ)