島根県内19市町村の魅力を意外な手法でPRするプロジェクトが始まっている。仕掛けているのは、島根県市町村総合事務組合で、市町村の情報発信の支援を担当する女性職員。予算「ゼロ」でも知恵を絞った、ユニークなPR作戦に注目した。
その名も「つよそうTシャツ」
島根・松江市の中心街にあるビルに道行く人の目を引きつけるパネルが展示されていた。Tシャツをかたどり、胸には「荒神谷遺跡」に「断魚渓」など島根県内の観光スポットが記されている。

他にも、雲南市の名瀑「龍頭が滝」、川本町の寺に納められている宝物「獏頭の玉枕」など画数の多い漢字が並び、ちょっと“イカツイ”字面だ。

このパネルを作ったのは、このビルを運営・管理する島根県市町村総合事務組合の職員・後藤希さんだ。
この組合は、市町村の情報発信支援や職員研修などを目的に設立され、パネルが置かれていた1階には、市町村のPRパンフレットや特産品などが並ぶ情報コーナーが設けられている。
その一角の窓際のスペースには、工芸品が展示されていたが、紫外線の影響で作品が傷むのを防ぐため、夏の間は他の何かに置き換えようということになり、思いついたのがこのTシャツパネル、その名も「つよそうTシャツ」の展示だったそうだ。
Tシャツ化目指すも問題が…
県内19市町村のそれぞれにある「強そう」で「読みにくい」観光地や名物などをピックアップし、“イカツイけどキャッチー”なTシャツ風にデザインした。

「見た人に、そういう場所や土地、スポットがあることを知ってほしい。そして、そこを訪れてほしい」と思い制作したそうだが、1つ問題があった。
島根県市町村総合事務組合・後藤希さん:
誰かTシャツにしてくれる人いますか?
市町村振興につながる業務に携わる後藤さんにとって、「つよそうTシャツ」は仕事の一環だ。しかし、予算がついていないため、パネルを制作したところで作業は足踏み状態になっており、Tシャツとして商品化してくれる企業はないか探しているところだという。

だが、予算はなくとも知恵はある。19市町村全ての「つよそうワード」をTシャツ化したいと、“広報女子”後藤さんのアイデアは尽きない。
難敵を攻略!本物の誕生に期待
日ごろから、地図を見て難しい字面、強そうな字面を探したり、これまでの「まちなび」(組合が運営する市町村情報発信のウェブサイト)の取材を生かしたりして、各市町村の「つよそう」なワードを見つけてきた後藤さんにとって、一番の“難敵”が、日本海に浮かぶ離島の海士町だ。

これといった名物がないことを逆手に取った「ないものはない」というキャッチフレーズでおなじみなだけに、「つよそうワード」もなかなか見つからないという。
取材前にそのことを聞いた、TSKさんいん中央テレビの村上遥アナウンサーは「色々と調べたんですけど」と前置きして、「『後鳥羽上皇』か『御番鍛冶』はどうですか?」と、海士町の「つよそうワード」を提案した。

すると、後藤さんは「強そうですね。濁点入るのが強いですよ」と話した。突破口が見えたようだ。
ワードが決まったら、Tシャツのデザインを考える。カラーも村上アナウンサーの提案「紫」を採用、デザインができた。

村上遥アナウンサー:
これにしました。「後鳥羽院遠島百首」です。どうですか?
島根県市町村総合事務組合・後藤希さん:
強そうです。海士町といえば後鳥羽上皇がいらっしゃっていたし、「遠島百首」も、後鳥羽院といえば中世随一の歌人と言われていたので、ぴったりです。

これで19市町村全ての「つよそうTシャツ」のデザインが揃った。ただ、これではまだ「つよそうワード」入りのTシャツ型パネル。夏の間に話題を呼んで、商品化してくれる企業などが現れないか、後藤さんは期待している。
本物の「つよそうTシャツ」が誕生する日が来るのか、注目だ。
(TSKさんいん中央テレビ)