輪島朝市がふるさと輪島に帰ってきた。能登半島地震の後、各地で出張朝市を行ってきた
朝市のメンバーだったが、地元の商業施設を借りて輪島での営業を再開した。

輪島朝市がふるさとで再開

午前7時。石川県輪島市のショッピングセンター「輪島ワイプラザ」。半年ぶりの開店準備だ。青果店の田中そとえさんは「久しぶりにね、楽しみ」と笑顔を見せた。ここで輪島朝市が再開する。

200近くの店が軒を連ねていた輪島朝市。能登半島地震による大規模火災で約240棟が全焼し、組合員のほとんどが商いの場を失った。70年に渡って朝市で花や野菜などを売ってきた平岡秀子さん(90)もその一人だ。「元気でおったんか」「やっとやっとやわい」「やっとでもいいわい」と他の組合員とあいさつを交わした。

復興へ向けた一歩

輪島市朝市組合は地震の後、各地で出張朝市を開いてきたが、平岡さんのように長距離移動が難しい人もいるため、組合は地元での再開を模索してきた。平岡さんは「私の作ったが売れれば、うれしいわいね。知った人に電話してん。また来てくれって。そしたら分かったって」と楽しみにしていた。この日は丹精して育てた花と野菜を販売する。

「頑張ろう」の掛け声の後、午前9時に組合員35人が店を開いた。「ほんならトマトくだい。ふた山いれて」「ふた山買ってくれるん?ありがとう」と、朝市らしいやりとりが戻ってきた。地元での復活を待ち望んでいたのは客も同じだ。何を買ったのか聞くと「鮎。すごくここのうまいの。酒の肴に」と客の一人は答えた。最高齢、平岡さんの店にも常連客が来ていた。「キュウリも持ってくけ?」「お金やるわいね」「いらん、全部持ってってくだい」と花のおまけにつけたのは、袋いっぱいのキュウリ。「またここで」と言える場所が平岡さんにとっては、お金以上に大切なのかもしれない。

いつかは朝市通りに

一方、朝市で魚を売っていた店は輪島港の漁が再開できていないため、鮮魚の代わりに干物を売っていた。鮮魚店の浜木妙子さんは「ここもいいけど本当は朝市行きたいですよ。ほんでもね、ここもせっかく用意してくれたから頑張る。朝市が復興できるまでね」と話す。店の営業は毎日行うが、名前はあくまで「出張朝市」。そこには「いつかはあの場所に戻る」という決意が込められている。

営業が終わった午後、青果店の田中そとえさんは「おかげさまで。これで生きてくしかないもんね、がんばります」と話し、干物や民芸品を販売する福谷和子さんは「うれしいよ、生き返った。80が70になった」と笑顔を見せた。「出張輪島朝市」は午前9時から午後7時まで輪島ワイプラザで開かれ、今後はメンバーが自由に出店し、将来的には70店舗ほどになる予定だ。

(石川テレビ)

石川テレビ
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