能登半島地震では奥能登の道路網が寸断され、山あいに孤立集落が続出した。石川県が把握しているだけでその数は最大24地区3345人。集落が孤立した場合、どのような備えが必要なのか専門家と考える。

大変だったのは”通信の断絶”と”燃料の確保”

解説してくれるのは地域防災と地理学が専門の金沢大学青木賢人准教授。まず、発災当初の孤立集落では何が大変だったのだろうか。

能登半島地震の孤立集落で課題だったのは「通信の断絶」と「燃料の確保」
能登半島地震の孤立集落で課題だったのは「通信の断絶」と「燃料の確保」
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金沢大学青木賢人准教授:
「私のゼミの卒業生が孤立した集落の1つ、珠洲市の高屋町にいたが、“通信の断絶”が一番大変だったそうだ。集落の外がどういう状況か分からない、自分たちの現状を外に伝えることもできない。高屋町では自衛隊から定期的に外部の情報を得られるようになったのは発災から5日目以降だったという。また、孤立状態が長期に及んだので、ガソリンや灯油など燃料の確保も大きな課題だったようだ。」

金沢大学の青木賢人准教授
金沢大学の青木賢人准教授

通信の断絶と燃料が足りない。どちらも命に直結する問題だ。能登半島の地形上、今後も大規模災害が置いた時には孤立状態に陥ることは避けられないため、どう備えておくかが非常に重要になる。具体的には何をしておけばよいか。

漁船が通信手段にも…孤立集落で必要な備えとは

青木賢人准教授:
「通信手段については衛星通信の手段を確保しておく。また集落で漁船を持っていれば漁業無線を使うこともできる。燃料の問題は、ガソリンをこまめに入れる、モバイルバッテリーを充電しておくなど日ごろの備えを意識的に行うことが重要だ。また、今回は被災した地域が自給自足ををしていて、生活の知恵を持っていた人が多かったため、食料不足はあまり表面化しなかったが、これが都市部だった場合は食料の確保も深刻な問題となる。孤立の可能性がある地域では1週間から10日分の食料を備蓄するなどの対策が必要だ。」

孤立集落で必要な対策とは
孤立集落で必要な対策とは

孤立は他人事ではない…「地区防災計画」の重要性

青木准教授は「金沢市などでも場所によっては孤立するリスクはある。決して能登半島地震の被災地だけの問題ではない」と警鐘を鳴らす。

青木准教授は「地区防災計画」が必要と話す
青木准教授は「地区防災計画」が必要と話す

青木准教授:
「例えば川が氾濫して橋が壊れたら孤立してしまうという地域は金沢にもある。大事なことは自分が住んでいる場所にはどんな災害リスクがあるのかをきちんと知ったうえで、災害時にどのような備えが必要なのか、どう避難するかを考える。同じ校下内でも場所によって備えなきゃいけないものは違う。町会単位、あるいはマンション単位で“地区防災計画”を立てておくということが大切だ。」