アイスクリームや冷凍食品などの冷たい物を運ぶとき、保冷バッグを活用する人も多いだろう。

しかし暑くなった今の時期、特に持ち運ぶ時間が長いときは、中のものが本当に冷えたままなのかそわそわしてしまう。凍っているものならなおさらだ。

こんな時参考になりそうなケーキ店のアイデアが、X(旧Twitter)に投稿され話題になっている。

保冷バッグを重ねる効果を検証

特に役に立たないかもしれない話なんだけど、保冷バッグ重ねて使うと保温性が2倍どころか3倍、いや5倍以上に跳ね上がるから入れるモノの大きさによっては重ねがけするのも手です。

このようなコメントと共に投稿されたのは1枚の写真。使われているのは、4つの保冷バッグだ。

投稿の写真
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マトリョーシカのように、サイズの大きい保冷バッグの中に小さい保冷バッグが入っていて、層になって重ねられている。このようにすると保温性が上がるというのだ。

情報を発信したのは、静岡県にある「ケーキ屋 ショコラファン」(@chocolatfin1201)の代表兼ツイート担当のedyさん。

ユーザーからは「最強のライフハック」「夏は困ってたんで助かります」などのコメントが寄せられ、4万3000件を超える「いいね」がついている(7月2日現在)。

この状態で検証スタート(edyさんのポストより)
この状態で検証スタート(edyさんのポストより)

この反響を受け、その後edyさんはお店の冷凍ミニチーズケーキを使い、実際に効果を検証。

使うのは保冷バッグ×6
ロゴスの氷点下パックL×1M×3
保冷剤×20

特大のバッグにパッキンを敷きLを、大のバッグ3つにMを1つずつタオルに巻いて入れる。
中、小にそれぞれ保冷剤を10個ずつ。

小には当店のミニチーズケーキ(凍)を封入。

それぞれのバッグのポケットに保冷剤を1つずつ入れて口を閉じ、店舗裏の直射日光の当たらない場所に安置。

そして室温に1つ保冷剤を放置してあります。

本日6/24(月)の気温は34℃天気は曇り。

比較用の保冷剤と6つ重なった保冷バッグ(edyさんのポストより)
比較用の保冷剤と6つ重なった保冷バッグ(edyさんのポストより)

当日は13時21分から検証をスタート。比較するため用意した室温に置いた保冷剤は、開始30分で完全に溶けてしまったようだ。同じ頃、1番外側のバッグに入っていた保冷剤はまだ固かったという。

検証から2時間後の15時21分、1番外側のバッグに入れた保冷剤は半分近く溶けていた。

開始から4時間たつと、外側から2番目の保冷バッグに入れた保冷剤までは溶けてしまっていたという。一方で、外側から4番目の保冷バッグに入れた保冷剤はまだカチカチの状態。

6時間後のミニチーズケーキ(edyさんのポストより)
6時間後のミニチーズケーキ(edyさんのポストより)

そして開始から6時間、最終的に外側から4番目~6番目の保冷バッグに入れていた保冷剤は、すべてカチカチのままだった(※外側4つの保冷バッグにはそれぞれ氷点下パックが入っていて、外側から4番目の保冷バッグはサイドポケットがなく、氷点下パックに密着する形で保冷剤が入っていたという)。

そして気になるのはミニチーズケーキ。解凍されてはいるが、芯はまだ凍っていそうな状態で、もちろんヒエヒエだったとのこと。

今回edyさんは、「34℃の日陰で約6時間置いても保冷バッグ四枚あれば無敵!」という結論を出していた。

専門家に聞く保冷バッグの仕組み

edyさんの検証で、ある程度の効果が期待できることは分かったが、具体的にはどのようなメカニズムなのだろうか。伝熱工学を専門とする山形大学の江目宏樹准教授に保冷バッグを重ねがけする方法の効果について尋ねると、「理にかなっている」との回答を得られた。

ただし、重ね使いがどれくらいの効果があるかについては「使うバッグの大きさや色などに影響されるため、はっきり分からない」という。Xでedyさんが発信した“何倍”という数字も、実験してみないと明言が難しいとのことだ。

そこで、熱の伝わり方についてさらにくわしく聞くと、より効果的な保冷バッグの使い方についても教えてくれた。

保冷バッグがない状態でケーキを外に置いた場合(作成:江目宏樹准教授)
保冷バッグがない状態でケーキを外に置いた場合(作成:江目宏樹准教授)

――どうして保冷バッグは中が熱くなりにくいの?

ケーキを保冷バッグの中に入れると温度がキープされるのは、保冷バッグの中が密閉空間となり、冷たい空気が外に逃げないためです。

まず、保冷バッグがない状態でケーキを外に置いた場合です。開放空間では空気が自由に動けるので、ずっと温かい空気が供給され、ケーキを温め続けてしまいます。また周囲からのふく射(電磁波)もケーキを温め続けます。

保冷バッグの中にケーキを入れる場合、保冷バッグの中は密閉空間となり、冷たい空気は外に逃げません。

保冷バッグは断熱材で作られています。断熱材の働きで、バッグの温かい空気から中の冷たい空気に熱が伝わりにくくなります。

また、内壁のアルミシートはふく射(電磁波)を出しにくく、ふく射による入熱を減らすことができます。

保冷バッグの中にケーキを入れた場合(作成:江目宏樹准教授)
保冷バッグの中にケーキを入れた場合(作成:江目宏樹准教授)

――保冷バッグを重ねるとどうなるの?

保冷バッグを重ねて密閉空間を複数作ることで、空気が動きにくくなり、断熱性が向上します。

重ねた保冷バッグの中にケーキを入れた場合(作成:江目宏樹准教授)
重ねた保冷バッグの中にケーキを入れた場合(作成:江目宏樹准教授)

――ずっと冷えた状態にするために、さらに効果的な方法はある?

空気を動きにくくすることが重要です。身近なものでいうと、保冷バッグが2つ重なった間の部分にタオルを巻いて(入れて)みましょう。

また、一番外側のバッグは白いものがオススメです。もしくは外側を白いタオルで覆うことです。

周囲からのふく射(電磁波)で一番エネルギーが高いのは太陽光ですが、白はそれを高効率で反射することができるのでふく射の入熱を抑えることができます。

普段の買い物で思いつき…

投稿したedyさんは、今回の検証結果をどのように受け止めているのだろうか。情報発信のきっかけを含めて聞いてみた。

検証に使用した保冷バッグ(edyさんのポストより)
検証に使用した保冷バッグ(edyさんのポストより)

――この方法を発信しようと思ったのはなぜ?

元々自分が業務スーパーで冷凍炒飯を買って帰る時に思い付きました。

その後、屋外でのイベント出店等で商品を冷やす時に利用していた方法だったのですが、最近、一気に気温が上がってきたので、たまたま発信しようと思っただけですね。

まさかこんなに伸びるとは思ってませんでした。


――洋菓子店の中では知られている方法だと思う?

普段こういうやりとりはしないので分からないですね。それより引用RTで「これやってた」という声があがっていたので、それなりに知ってる人もいたのがわかりました。

検証中の様子(edyさんのポストより)
検証中の様子(edyさんのポストより)

――保冷性を検証した結果を受けて、感じたことを教えて。

結果的に24時間以上保冷性が保てるのはすごいなと思いました。でもいろんな状況下で変わるし、マトリョーシカなので結局最終的には小さいモノしか入らないのはちょっと不便だなと感じました。


――真夏にケーキを持ち運ぶコツや注意点は?

とにかく早く持ち帰って家の冷蔵庫にぶちこむことですね。そしてすぐに食べましょう。暑い時こそ熱いお茶で食べるのがおいしいです。

ショコラファンの商品(提供:edyさん)
ショコラファンの商品(提供:edyさん)

――今後、さらに検証してみたいことはある?

そもそも検証の為に始めたワケではないので(笑)、特にないですね。あえて言うならツイートがバズったら集客に繋がるのか検証中です(笑)

皆さんぜひ保冷バッグを持って買いに来てください!

夏本番はこれからで、気温はまだまだ上がっていくはず。炎天下で冷たいまま持ち運びたいときは、この方法を試してみるのも良さそうだ。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。