強豪・明石商業には、野球専門誌の表紙を飾るほど注目を集めるドラフト候補が2人。
1年から甲子園で活躍する、最速151キロの中森俊介(なかもり・しゅんすけ)投手は「全てが最後になってくるので、悔いの残らないようにプレーしたいと思います」と、甲子園で3本のホームランを放っている来田涼斗(きた・りょうと)選手は「勝ちっていうのにはこだわりたいですし、最後自分が投げて勝って終わりたいと思います」と高校生活最後の甲子園への思いをきょう口にした。

その明石商業と大会5日目に対戦する桐生第一の注目はロシアの血をひく蓼原慎仁(たではら・しんじ)投手。

普段は寮で生活を送るが、自粛期間中は、久しぶりに実家近くの河川敷でトレーニングを積んだ。「やれることはできるだけサポートしてあげたい」と話す父親。ピッチングフォーム確認のための動画を撮影する。

幼い頃から一緒に練習を重ねた河川敷で原点へ戻り、親子でつけた力の成果は球威につながった。
桐生第一 蓼原慎仁投手:
「やった!」と思って、すぐに「スピードがアップした」と電話しました。自粛期間がなければ今のスピードボールはなかったと思うので、無駄ではなかったと思います
蓼原投手からのうれしい知らせに、父親も「球速があがったって、僕はもううれしかったですね」と頬を緩ませる。親子の力を武器に、蓼原投手は初めて甲子園のマウンドに立てる喜びを語った。
桐生第一 蓼原慎仁投手:
自分が小さい頃から“甲子園 甲子園”って言ってきたので、甲子園のマウンドで投げる姿を見せられるというのは本当にすごく嬉しいです
開幕を待ち望むのは選手だけではない。福島・磐城高校の前監督、木村保(きむら・たもつ)さんも特別な思いで夢舞台に臨む。
センバツ出場が決まっていた磐城高校。しかし史上初の大会中止に加え、3月には木村監督を始め野球部を支えてきた3人の指導者が人事異動でチームを離れることに。そんな木村監督と選手の最後の練習では…

センバツで着るはずだったユニホームを着ておこなう、“最後のノック”が実現。
木村監督の思いの込もったボールに、「先生方の最後を甲子園で迎えられなかったことを残念に思います」「夏3人を必ず甲子園に連れて行きます」と涙を目に溜め監督を労う選手たち。
そんな声に監督も思いがこみ上げ、「泣くなよ~」。

最後の練習を終え新たな一歩を踏み出す磐城ナイン。
監督もそんな選手たちの背中を押す。
福島・磐城高校 木村保前監督:
彼らは素晴らしい試合を展開して勝利をもぎ取ると思いますので。これからもご支援よろしくお願いします
夢半ばでチームを離れたあとも、選手たちと連絡を取るなど磐城ナインのことを思い続けてきた木村前監督。
そんななか、うれしい知らせが飛び込んできた。交流試合の試合前練習で「ノッカー」として、甲子園の土を踏むことが可能になったのだ。
一度は失った憧れの舞台へ、甲子園で試合には参加できないものの、「ノッカー」として選手たちにボールを通して熱いエールを送る。
福島・磐城高校 木村保前監督:
子供たちのために何かできることがあればと言うことでノッカーのお話を頂いたときはすごく嬉しかったです。試合にベストの状態で臨めるような準備を最大限してあげたい
待ちに待った甲子園での夢舞台。特別な暑い夏が始まる。