近年、不妊治療については様々な治療法があり、県や各自治体による治療費の助成も行われている。実際に不妊治療を経験した2人に共通していたのは、「早く治療に踏み出してほしい」ということだった。

2024年3月に発表された厚生労働省のデータによると、不妊を心配したことがある夫婦は約2.6組に1組の割合。実際に不妊の検査や治療を受けたことがある、または現在受けている夫婦は約4.4組に1組の割合にのぼっている。

この記事の画像(6枚)

テレビ宮崎では、不妊治療について独自にアンケート調査を行った。回答者の約6割が不妊治療をしていた、または現在していると答えた。その中には、「周囲に伝えることを躊躇する」「職場での理解を得られなかった」「人生で一番つらい時期」「仕事との両立が難しく退職した」などの声が寄せられた。

不妊治療を経験した人の想い

デリケートな問題であるがゆえに、分からないことも多い不妊治療。今回、不妊治療を経験した人2人が取材に応じてくれた。このうち現在第2子を妊娠中の27歳の女性は、1人目を妊娠するときに不妊治療を行った時の事を話してくれた。

不妊治療を経験した女性は「1年以上できなかった。夫との間も、何となく雰囲気が悪くなって落ち込んだ。『このままずっと授かれなかったらどうしよう』という、先が見えない感じがあった」と語る。

24歳のときに病院で検査を受けたところ、排卵しづらい「多嚢胞性卵巣症候群」であることがわかったという。しかし、「妊娠できない理由があって、原因がわかって治療が進んでいっていたので、逆に安心はあった。」と女性は振り返る。治療することによって、妊娠・出産することができたと感じている。

女性は、「不妊治療と聞けば、何となく負のイメージというか、どこかが悪いとか、病気だというイメージがあると思うので、そうじゃないと知ってほしい。病院に行くことで、前に進めることがわかったので、悩んでいることがあれば、不妊治療にぜひ行ってほしい」と思いを語った。

不妊治療の保険適用期限が迫り…

もう一人、不妊治療の経験を話してくれたのは、宮崎県議会議員の下沖篤史さん。下沖さんは37歳のときに3つ年上の妻と結婚した。妻が41歳になり、あと1年しか不妊治療の保険適用にならないという中で、治療に踏み切ったという。しかし治療を行った1年間で、体外受精のため妻の卵子を6回採取したが、うまくいかなかった。

下沖さんは、「卵子を取るときに、針で子宮を刺して卵巣まで行って取ったりするので、やはりその痛みが発生していた。6回採取したが、その中で子宮まで戻せたのは1回だけだった。それでも着床しなかった。あとの5回は培養している中で分裂が止まったりした。妻が一番つらいと思うので、『また今回も駄目だった』と言い落胆しているのを見るのが、自分としてもつらかった」と振り返った。

その後、下沖さん夫婦は一旦、治療に区切りをつけた。

下沖さんは「不妊に悩む前から検査をしてほしい。自然に任せようと思って何年も経ってしまい、ギリギリになったらなかなか難しいところがあるので、ぜひ、早めに踏み出していただけたらなと思う」と語った。

今回インタビューに協力してくれた2組に共通していたのは『早く踏み出してほしい』ということだった。

県産婦人科医会の川越靖之会長も『不妊治療を始める年齢が遅い』と指摘する。

日本人の不妊治療開始の平均年齢は40歳。「チャンスが少なくなる」「生理がある限り妊娠できると思ってはいけない」「不安があれば、まずは検査に行ってほしい」ということだ。

こうした中、宮崎市は2023年8月からLINEによる妊活サポート事業「ファミワン」を始めている。

一部の有料コンテンツも、宮崎市民は“無料”で利用できる。オンラインのほかテキストでも相談できるので、利用者からは「性別に関係なく相談しやすい」「落ち着いて自分の悩みを伝えられる」といった声が届いているとの事だ。

『不妊治療=何かが悪い』ということではなく、「誰もが向き合うこと」という認識が広まって、不安や悩みを抱えている人たちが治療に踏み出しやすい環境づくりが進んでほしい。

(テレビ宮崎)

テレビ宮崎
テレビ宮崎

宮崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。