昭和の時代の空気感やアイテムが、鹿児島でも若者たちに受けている。どこか懐かしく趣を感じる「昭和レトロ」、その人気の背景を探ると、世代間のトレンドのサイクルとSNSという、2つの波があった。

若者から支持される「昭和レトロ」

古くからの飲食店が並び、昭和レトロの象徴的なスポットとして知られている鹿児島市名山町には、昔懐かしいたたずまいに引かれて若者たちが多く訪れる。

「昭和レトロ」を感じるグルグル回すタイプの蛇口
「昭和レトロ」を感じるグルグル回すタイプの蛇口
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今、なぜ「昭和レトロ」がアツいのか。一人暮らしをしている男子大学生に話を聞くと、自宅はまさに昭和の雰囲気そのものだという。水道はグルグル回すタイプの蛇口で、風呂に入ろうとお湯を出しても10分くらい待たないと出ないというが、不便さを口にしつつ、気に入っている様子だった。

昭和レトロの関心度 8割が「ある」と回答
昭和レトロの関心度 8割が「ある」と回答

鹿児島テレビは自社アプリで「昭和レトロ」に関心があるか調査を行ったところ、8割の人が「関心がある」と回答した(KTSアプリ 361人回答)。

昭和レトロを好む理由は世代によって様々
昭和レトロを好む理由は世代によって様々

さらに、昭和レトロを好む理由については、年齢層によって異なることが分かった。昭和生まれの人は「懐かしい」「かわいい」「落ち着く」と答えたのに対して、平成生まれの人からは「新鮮」「おしゃれ」といった回答が寄せられた。

多くの昭和のアイテムが並ぶ古道具店

鹿児島でも古い道具を扱う店が見られるようになった。日置市伊集院町にある「ここの家」を営むのは、昭和生まれの45歳、甲斐奈緒子さんだ。夫婦で古民家を改修し、店内には昭和のアイテムがたくさん並んでいた。

1970年代のナショナル製(現・パナソニック)の照明
1970年代のナショナル製(現・パナソニック)の照明

まず目に入ったのは、1970年代のナショナル製(現・パナソニック)の照明だ。中は白だが、2色使いで、時代を超えて使われている照明が店内をやさしく照らしていた。木箱に印字された昔ながらの文字が残るパン箱や、粉ミルクの箱など、店内は「かわいらしさ」を感じられるものであふれていた。

古道具に引かれる理由を語る「ここの家」店主の甲斐奈緒子さん
古道具に引かれる理由を語る「ここの家」店主の甲斐奈緒子さん

甲斐さんは一緒に暮らしていた祖父の影響で、昔の物や家具に触れて育った。大人になって「昭和レトロ」への思いが再燃したそうで、古道具に引かれる理由を聞くと、「手がかかるところ」を挙げた。スマートファンがあれば何でもできる便利な時代だからこそ、自分が手を加えることができる不便なものに愛着が生まれるという。甲斐さんはガラスの汚れを磨き、ほこりを拭き取って、昭和のアイテムを大事に守っているのだ。

SNSがきっかけで復刻 大人気に

店内の一角にある戸棚に、懐かしい色合いの食器が並んでいるのが目に入った。

昭和の家庭で親しまれてきた「アデリア」のコップ
昭和の家庭で親しまれてきた「アデリア」のコップ

食器は、創業200年の日本のガラスメーカーが手掛けた「アデリア」というブランドで、昭和の家庭で親しまれてきたものだという。甲斐さんによると、アデリアは近年、「アデリアレトロ」という名前で復刻版が販売され、大変な人気だという。

アデリアレトロの担当者に人気の秘密を尋ねた。販売促進担当の吉澤有由夢さんによると、昭和時代からあったデザインを復刻版として販売したところ、「このカタチがレトロっぽい」「クリームソーダを入れるとかわいい」といった反響が大きく寄せられたという。

復刻のきっかけは、SNSだった。「アデリアレトロ」企画メンバー デザイン担当の杉本光さんが語る。廃盤になった昭和時代のアデリアの商品写真をSNSで公開したところ大きな話題となったことから、アデリア愛好家が喜んでくれるのではないかと復刻を決めた。その後、復刻版を製作する過程でもヴィンテージのグラスサンプルをSNSのフォロワーの愛好家が開発用に貸してくれたりするなど、SNSが役立っているという。SNSがリードする現代の流行のカタチだ。

専門家「トレンドは20~25年周期」

「昭和レトロ」は、デジタルという流行の波に乗って若者の心をくすぐっている。世代間のトレンドに詳しく、「ホンマでっか!?TV」などでおなじみの評論家・牛窪恵さんは、「トレンドは20年から25年周期でやってくるため、そのぐらいたつと新鮮さが蘇ってくる」と分析する。

背景にあるのは、この20年くらいの間に子供や孫と仲のいい昭和世代の人が増え、子供や孫に与える影響がまさにトレンドのサイクルと重なっているのではないかということだ。

「昭和レトロ」の調査から見えてきたものは、SNSなどの新しいデジタルツールが流行を先導する一方で昔ながらの「アナログ」の世界を楽しむ、現代人のハイブリッドな暮らしの姿だった。

(鹿児島テレビ)

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