2024年5月27日に、北九州市の武内和久市長がインバウンド誘致への思いについて講演を行い「インバウンド誘致を、北九州市としては今年度から本気でやっていこうと考えています」と述べた。外国から訪れる観光客は今、何を求めて北九州にやってくるのか。
“誘致プラン”で70万人を目指す
小倉駅付近には、キャリーケースを引いている観光客が目立つ。コロナ禍が落ち着き、その数は徐々に回復傾向にあるものの、北九州市を訪れる外国人観光客は、日本全体の回復率と比較すると、まだまだ遅れが目立つ。
この記事の画像(16枚)過去10年間の訪日外国人旅行者の数は、2023年に約2500万人と、2019年の8割程度まで回復している。一方、2023年に北九州市を訪れた外国人旅行者数は約27万人と、ピークの2018年の4割程度にとどまっている。
これを受け北九州市は、今後拡大が期待されるインバウンド需要を、戦略的に取り込むことを目的とした『北九州市インバウンド誘致アクションプラン』を策定した。2018年の69万人を超える70万人の誘客を目指すとしている。
武内市長は、「自覚的にインバウンドを狙っていこう。1人あたり5倍お金をかける外国人観光客から、しっかりとお金を落としてもらう」と熱弁を振るう。
実際に北九州市を訪れている外国人観光客は、いくら使う予定なのか?
外国人観光客に聞いてみると、韓国から訪れた男性は「3日間の予算が10万円」、九州を11日間かけて回る予定だという台湾から訪れた女性は、「50000台湾ドル(日本円で24万3481円 6月3日換算)」と話してくれた。24万円は、往復の飛行機代と宿泊費を除いての予算だという。
やはり消費額の多さも、インバウンド集客に取り組むメリットといえそうだ。
様々な取り組みで観光客数増加へ
そこで北九州市が「インバウンドで稼げるまち」として、新たな観光資源にしようと打ち出したのが“寿司”。北九州市は、玄界灘、響灘、周防灘の3つの海に囲まれている、いわば“寿司ネタ”の宝庫だ。
5月16日には、小倉の夜景を眺めながら寿司を味わうイベント『小倉城 寿司&キャッスル』が小倉城で開催された。参加費3万円を超えるイベントにもかかわらず、満席になるほどの大盛況だった。今後、月に1回の開催を予定していて、外国人観光客の利用も見込んでいるという。
また、北九州市は、観光客に向けた案内所をJR小倉駅に設置した。英語、韓国語、中国語のパンフレットを置いている他、外国人スタッフも勤務している。
さらに、地元の市場も外国人観光客の誘客に取り組んでいる。“北九州市民の台所”旦過市場(小倉北区)では、英語、韓国語、中国語に対応した「旦過食べ歩きマップ」をホームページで公開し、市場の魅力をアピール。店頭でも外国語のメニューやポップなどで商品を紹介している。
市場を訪れていた韓国からの観光客に魅力について聞くと、「(市場の)規模は、あんまり大きくはないですけど、昔ながらの市場な感じがして良いなと思います」と話してくれた人がいる一方で、「YouTubeで広報をするようになれば、もっと多く来ると思います」との指摘もあった。
さらに取り組むべき戦略とされている1つが北九州空港への路線誘致だ。北九州空港では現在、ソウルを結ぶ便が1日1便あるが、7月18日から8月25日までは火・木・金・日曜日の週4日、増便が決定している。
北九州市空港企画課によると、この期間は韓国では夏季休暇を取る人が多く、この増便により約3000人の誘客が見込めるという。
狙いはタイ「聖地巡礼」に期待
そして、北九州市が今後、積極的にアピールしたい国としてあげているのがタイだ。
その理由は、タイの人気アイドルグループが皿倉山(八幡東区)や旦過市場でミュージックビデオを撮影しているということに加え、北九州市を舞台にしたタイの映画がタイ国内で話題となっていて、ファンによる「聖地巡礼」が期待されている。
インバウンド拡大の取り組みについて北九州市観光課の大前亜弥課長は、「北九州に来られているお客さま像がマーケティング分析の中で明確になって、民間の事業者と共有することができたので、町ぐるみで誘客に取り組んでいきたいと思います。インバウンド誘客に関しては1年~2年でしっかりと継続的にやっていくことが重要だと考えております」と意気込む。
インバウンドで“稼げるまち”を目指す北九州市の今後に注目だ。
(テレビ西日本)