研究チームは、120人の男女に60枚の顔写真を見せ、それぞれのルックスの良さを評価させました。すべての写真には「この女性は親切です」「この男性は意地悪です」などの文章が添付され、各人物の性格が一目でわかるようにデザインされています。
その後、すべてのデータを分析してみると、たいていの被験者は、性格の良い人物を「見た目が良い」と感じ、性格が悪い人物を「見た目が悪い」とみなす傾向が認められました。
その人物に抱いた好感度によって、ルックスの印象が変わったわけです。

同じ現象は複数のテストで認められており、54年におよぶ長期の調査でも、ボランティア活動に多くの時間を割く人は、ルックスでも高い評価を得やすかったと言います。
その理由は簡単で、もともと心理学の世界では、好感度の高い人が持つものは、すべてがよく見えてしまう現象が知られてきました。印象の良い人物が勧める商品を無条件で信じてしまったり、好感を抱いた相手の嘘を見抜くことができなかったりといった経験をしたことがある人は多いでしょう。
好感度が高いからといって必ずしも信頼できるとは限りませんが、ついひいき目に見てしまうのが人間です。
長期的な魅力は性格が重要
同じ心理はルックスにも当てはまり、好感度が高い人を見ると、私たちの脳は「そんなに素敵な人なら、見た目も良いに違いない」と自動的に判断します。すべての処理は無意識下で行われ、自分が好感度とルックスを結びつけたことに気づける人は、ほぼいません。
話をまとめると、誰もがうらやむ美男美女だろうが、ある程度の時間が過ぎればその威光は薄れ、別の要素が個人の魅力を左右し始めます。加えて、ルックスの評価には好感度の影響が大きいため、長期的には性格の重要度が高くなります。
そう考えれば、長期的な人間の魅力において、ルックスの果たす役割は少ないと考えるべきでしょう。
英語のことわざにもあるとおり、まさに「美は見る者の目に宿る」のです。

鈴木 祐
1976年生まれ、慶応義塾大学SFC卒。16才のころから年に5000本の科学論文を読み続けている、人呼んで「日本一の文献オタク」。大学卒業後、出版社勤務を経て独立。
近年では、自身のブログ「パレオな男(http://yuchrszk.blogspot.jp/)」で健康、心理、科学に関する最新の知見を紹介し続ける。自著「最高の体調」(クロスメディアパブリッシング)や「パレオダイエットの教科書」(扶桑社)などを上梓し、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。