1カ月に二度の減便で物議を醸した神奈川県の横浜市営バスをめぐり、新たな議論を呼びそうな動きがあったことが分かった。

夏休み5日返上で5万円支給の通達

30日、バス乗務員に関して出されたという書面には、驚くべき内容が書かれていた。

夏季休暇すべてを取得しないバス乗務員に5万円を支給するという横浜市営バスの通知
夏季休暇すべてを取得しないバス乗務員に5万円を支給するという横浜市営バスの通知
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バス乗務員の夏季休暇について(通知)
令和6年度(2024年度)に限り、付与された夏季休暇全てを取得しない者については相応の額を支給する。

夏休みの5日間返上で5万円、1日あたり1万円という金額だ。

なぜ5日間の夏休みを返上する乗務員には、5万円が支給されるのだろうか。

乗務員不足を乗り切り、バスの運行スケジュールに穴が開かないようにする方策だという
乗務員不足を乗り切り、バスの運行スケジュールに穴が開かないようにする方策だという

FNNの取材に、横浜市交通局は“通達は事実”だとしたうえで、「乗務員不足を乗り切り、バスの運行スケジュールに穴が開かないようにするための方策だ」と回答した。

31日、乗務員不足の現場を訪ねてみた。
JR保土ケ谷駅前のバス停には、20人ほどの長い列ができていた。

4月だけで二度、あわせて367本を減便した横浜市営バス
4月だけで二度、あわせて367本を減便した横浜市営バス

2024年になり、運転手の労働規制が強化されたことにより、4月だけで二度、あわせて367本を減便した横浜市営バス。

その影響について利用客は、減便から1カ月以上が経過した今も重くのしかかったままだと話す。

横浜市営バスの利用客(80代):
畑行くんです、ここから。(便が)少なくなりましたね。今30分待つんです。

ーーバス少なくなったと感じる?
横浜市営バスの利用客(80代):

すごく感じる!1台乗り遅れると20分待たないといけない。

誰もが口にする“減便による不便さ”。
一方で、さらなる乗務員不足対策として打ち出された、“夏休み返上で5万円支給”策には賛否が分かれた。

横浜市営バスの利用客(60代):
とにかく人手不足だから運転手さんが喜ぶんならいいんじゃない?(1日)2万円あってもいいかもね。

乗務員の体調を気遣う意見も。

横浜市営バスの利用客(80代):
休まずにって言ったら体が持たないでしょう。お金と体とどっちが大事かしら。

年次有給休暇とは別の扱いの休暇で法的問題なし

さらにSNSからは、こんな疑問の声も上がっていた。

SNSには「“有休の買い取り”なら違法では?」の声も
SNSには「“有休の買い取り”なら違法では?」の声も

(Xより)
これやっていいの?“有休の買い取り”だったら違法なのでは?

横浜市交通局は、当該の夏季休暇について、労働基準法で定められた年次有休休暇とは別の扱いの休暇を対象に呼びかけたものだと回答。
また5万円という額については、収益が黒字だった場合に通常上乗せされるという5万円の業績手当を参考に、12月の期末手当で支給するとしている。

そのうえで、バス利用者に向けては…

市民の足を守るための方策であることを理解いただきたいと横浜市営バス
市民の足を守るための方策であることを理解いただきたいと横浜市営バス

(横浜市交通局):
新たなバス乗務員の応募も来ていますが、戦力となるにはまだ時間がかかります。
市民の足を守るための方策であることをぜひとも理解いただきたい。

乗務員不足の中で打ち出された、この“夏休み返上で5万円”策に法的な問題はないのか。

労働問題にくわしい吉村労働再生法律事務所の吉村雄二郎弁護士によると、労働基準法で定めている年次有休休暇の場合は法律違反になってしまうが、今回のように会社独自で定めた夏季休暇に関しては法律上問題はないという。
(「イット!」5月31日放送より)

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