今の時期に感染者が急増する「SFTS」。宮崎県は累計の感染件数が112件と全国で最も感染が多い。人とペットの命を守るには何が必要なのか?現場を取材すると、治療をめぐる課題が見えてきた。

飼いネコ2匹がSFTSに感染

「SFTS」はウイルスを持ったマダニに咬(か)まれることで感染し、死に至ることもある病気だ。感染経路は、マダニからヒト、動物からヒト、そして最近ではヒトからヒトへの感染も確認されている。

白坂圭子さんは、3月に飼いネコをSFTSで亡くした。ネコ2匹が体調不良になり、うち1匹はぐったりした状態だったという。

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白坂圭子さん:
飼い猫が全然動かなくてご飯も食べなくて、1週間ぐらいそうしていた。先生に診てもらったら「重症です、生きられません」と言われて。

SFTSは治療法が確立されていない。白坂さんは自らの感染にも注意しながらネコを自宅で隔離し、最期の時まで見守るしかできなかった。もう1匹のネコは幸い一命をとりとめ、すっかり回復して元気に暮らしているという。

マダニは身近なところに

人もペットも苦しめるマダニは身近なところにいる。草むらにも多いということで、宮崎大学産業動物防疫リサーチセンターの岡林環樹副センター長の協力を得て、どのぐらい身近にいるのか検証した。

大きめの白い布を持って、道路からほんの少し入った草むらを歩き回る。その時には気が付かないが、布を確認すると、マダニは次々に捕獲されていた。小さいため、人間はもちろんイヌやネコに付いて家に戻っていたとしても、なかなか気づきそうにない。この日はわずか30分で21匹も捕獲されていた。

宮崎大学 産業動物防疫リサーチセンター・岡林環樹副センター長:
少し奥に入ったところで(マダニが)取れてしまう。こういうことを知っておくと注意ができると思う。

治療には様々な「壁」がある

SFTSの感染数は増加傾向だ。取材した日も、マダニに咬まれたイヌが診察に訪れていた。

人も動物も、SFTSの治療法は確立されていない。きりき動物病院の桐木康太郎院長は「予防が何より大切」と伝えるようにしている。感染すると、治療には様々な壁があり、救えないことが多いからだ。獣医師は防護服やゴーグルなど感染対策を講じ隔離して治療するが、できる治療は限られている。

きりき動物病院・桐木康太郎院長:
知人の獣医師も、入院中のSFTSのネコから感染して、生死の境をさまよったことがある。僕らも命がかかっているので、どうしても治療を制限してしまうところは申し訳ない。動物病院がリスクを1人で担っている形になるので、感染が起きたときに保障というかサポートをしてもらえる仕組みがあるとありがたい。

この病気の怖いところは、感染によって動物も人も亡くなる場合があるということだ。かかった後に「隔離」が難しいということも課題だ。先にペットが感染した場合、動物病院での入院は安くても1泊1万円となるため、予算面を考えて自宅隔離とせざるを得ず、飼い主に移ってしまうというリスクがある。

現状、行政による隔離施設の用意や費用をサポートする制度はない。宮崎大学の岡林副センター長は、「行政と研究機関など色々な機関が連携して、隔離や費用のサポートなど制度設計が急務だ」と話している。宮崎県は全国で最もSFTSの感染数が多い。全国に先駆けて、サポート体制を考えていく必要があるのではないか。

(テレビ宮崎)

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