福岡県警自動車警ら隊、通称「自ら隊」。パトカーを使ったパトロールの専門部隊だ。24時間、365日、職務質問を中心に行い福岡県の治安を守っている。4月、そんな自ら隊に新隊員が入隊した。
一発勝負の検定に向け猛練習
福岡県警の森巡査長は警察署での勤務などを経て9年目の2024年、念願がかなって自ら隊に入隊した。
この記事の画像(14枚)福岡県警・森貴彦巡査長:
小さい頃からパトカーに乗りたいと憧れを持っていたのもありますし、自動車警ら隊の先輩、上司の姿を見て自ら隊に行きたいなと思いました
まず求められるのはパトカーの運転技術だ。約3週間の訓練を受け、検定に受からないと自ら隊員として活動できない。訓練について「現場にいち早く行かないといけないですし、その中で事故を起こしてしまうとどうしようもないので、そこが一番難しい」と話す森巡査長。
「ギア、間違えるな!ばかちん!」「ちゃんと見らんか!ぶつかっとるやろ」と教官からは激しい声が飛ぶ。教える方も真剣だ。
2週間後の検定は一発勝負。接触があれば、その場で不合格となる厳しい基準を超えるため猛練習は続く。
ミスをすれば不合格…結果は?
そして迎えた検定の日。同期の隊員と気合いを入れて検定に臨む。
「自信はあります。頑張ります」とは言うもののミスをすれば不合格。夢の自ら隊になれるのか。森さんの表情にも緊張が浮かぶ。
合格条件は、コース内にある100以上のチェックポイントと安全確認を熟して6分以内にゴールすること。訓練で接触した課題の駐車エリアも「左後方よし、右前方よし、後方よし」と無事に一発でクリア。残るチェックポイントも訓練で鍛えた運転技術で乗り越え「実車完了!」。
この日は、森さん含め同期隊員全員が無事に合格した。
ベテランの先輩とともに初出勤
そして検定翌日。早くもパトロールの準備をする森さんの姿があった。
福岡県警・森貴彦巡査長:
きょうからやっと始まるなという思いが強い。職務質問での検挙ができるように力を入れて頑張っていきたい
初出動の相方は斉野巡査部長。この道7年のベテラン先輩だ。
パトロール車内会話:
斉野巡査部長「普段、警らで何に気をつけてる?」
森巡査長「パトカーを見たとき、一瞬、見るかどうかはすごい大事にしています」
斉野巡査部長「必要以上に人を観察すること。積極的に自分自身で『あれ行きたいです。これ行きたいです』と言わないといけない」
すると早速…。
福岡県警・森貴彦巡査長:
いまのプリウス、鳴らします。黒プリウス、メガネを上にかけた男だったですね
すれ違う一瞬で相手の特徴を捉える。「プリウスの運転手さん、左に停車して下さい」。乗っていたのは若い3人組の男性だ。
若い3人組の男性とのやり取り:
男性「止めたのおまわりさんやろ?じゃあ、いいやん」
森巡査長「こっち、お(居)っとって。危ない」
男性「なんもないって。寒いけん早くしてくれん」
森巡査長「すぐ終わりますんで」
反抗的な態度にコミュニケーションが取りづらそうな森さん。そこへ斉野巡査部が割って入る。
若い3人組の男性とのやり取り:
斉野巡査部長「最後、運転手さん、免許、確認いい?」
男性「見るだけね、時間とらんでよ。あと10秒しかやらんよ」
斉野巡査部長「なんで10秒なん」
男性「いくらくれるん」
斉野巡査部長「いくらもくれんよ。お巡りさん、そういうの、ないけん」
「ごめん、ありがとう気をつけてね」。相手との距離を詰めながら職務質問をする斉野巡査部長、ベテランの技だ。
パトロール車内会話:
斉野巡査部長「さっき、うまく話しできた?聞けてなかったけど」
森巡査長「いやー…、まだまだ」
斉野巡査部長「複数人いるときは、ちゃんと目の届く位置に、ずっと」
森巡査長「はい、3人を」
斉野巡査部長「次、声をかけたら、一通り、お前に全部やらせるけん」
すると大通りの交差点で、左のライトが切れた1台の車を発見。
「降りてきて確認してもらっていいですか」乗っていたのは免許を取ったばかりの学生。今回は森さんが手際よく手荷物検査や車内の確認を行った。
続いては、道路上で自転車にまたがり止まっていた女性を発見。手には松葉づえを持っている。「ここ車道で危ないので」。松葉杖を持ったままの片手運転は危険だと注意する。犯罪を摘発するだけではなく、県民の安全を守るため「声かけ」をするのも自ら隊の大切な仕事だ。
こうして森さんの初出動は終わった。
福岡県警・森貴彦巡査長:
現場ということで緊張感もありました。声かけの仕方や所持品検査の仕方の新しいやり方を教えていただいたので、今後に生かしていきたい。県民の方々が安心安全に暮らし、子どもたちに「警察官になりたい」と思われるような警察官になっていきたいと思います
2024年、発足から50年を迎えるという県警の自動車警ら隊。福岡の街の安全を守る。
(テレビ西日本)