FNNの5月の世論調査で、岸田内閣の支持率は4月からほぼ横ばいで0.7ポイント増の27.7%、3カ月連続での上昇となった。しかし、派閥の裏金問題で、支持率が低下して以来2割台は7カ月連続となった。有権者からは、政治とカネの問題について、政治資金法改正で自民案に期待が低く、厳しい法改正を求める意見が明らかになった。(5月18、19日、全国の18歳以上の男女を対象、電話世論調査)
政治資金規正法改正 自民案は“やったふり” 野党は厳しく批判
目下、国会で与野党間の最大の政治課題となっているのが“裏金事件”の再発防止に向けた政治資金規正法の改正だ。
自民党は5月に自民党案をまとめた。ただし、実情は、自民・公明の与党間で折り合いがつかず、タイムアップとなって自民党だけで案を“まとめざるを得なくなった”というところだ。
自民党がようやく案をまとめたことで、今後の法案審議、ひいては政治とカネの問題の再発防止につながるかどうかを聞いたところ、「大いにつながる」3.6%、「ある程度つながる」23.8%、「あまりつながらない」37.8%、「全くつながらない」32.4%となった。

これを自民党支持者に限って見てみると「大いにつながる」5.1%、「ある程度つながる」41.4%、「あまりつながらない」38.6%、「全くつながらない」12.6%となり、総じて、再発防止につながる、とする意見が47%、つながらないとの意見が51%と拮抗する形で、自民支持層からは一定の評価をえた結果となった。
一方で、公明党支持層からは与党の一翼ながら、厳しい意見が示された。自民案が再発防止に「大いにつながる」2.4%、「ある程度つながる」13.1%、「あまりつながらない」54.8%、「全くつながらない」29.8%となった。

野党支持層からは、さらに厳しい見方となった。立憲支持層からは「大いにつながる」3.4%、「ある程度つながる」13.0%、「あまりつながらない」32.3%、「全くつながらない」50.5%と、8割超が、政治とカネ問題の再発防止につながらない案だとの厳しい意見となった。
日本維新の会支持層からも「大いにつながる」4.8%、「ある程度つながる」16.2%、「あまりつながらない」38.1%、「全くつながらない」40.9%となった、
政治資金パーティー券の購入者の公開基準について、自民党案では、現行の「20万円超」から公開基準をひろげて「10万円超」としている。ただし、公明党は「5万円超」、野党は全面公開、もしくは政治資金パーティーの禁止を掲げていて、こうした内容に野党からは「やったふりの改正案だ」との厳しい批判が出ている。
【政治とカネ 自民案で再発防止は】
大いにつながる 3.6%
ある程度つながる 23.8%
あまりつながらない 37.8%
全くつながらない 32.4%
【政治とカネ 自民案での再発防止は 与党支持層】
自民層 公明層
大いにつながる 5.1% 2.4%
ある程度つながる 41.4% 13.1%
あまりつながらない38.6% 54.8%
全くつながらない 12.6% 29.8%
【政治とカネ 自民案での再発防止は 野党支持層】
立憲層 維新層
大いにつながる 3.4% 4.8%
ある程度つながる 13.0% 16.2%
あまりつながらない32.3% 38.1%
全くつながらない 50.5% 40.9%
政策活動費についての自民案 与党公明層からも厳しい見方
さらに、規制法改正のポイントとなる、政策活動費の扱いについても、有権者が自民案を“手ぬるい”と見ていることが調査から明らかになった。
政党から党幹部に渡されて、使い道の公開義務がない政策活動費について、規制法改正でどうするべきかを聞いたところ、「規制強化は不要」2.5%、「使途の大まかな公開」24.0%、「使途の細かな公開」48.4%、「廃止」24.3%となった。

政策活動費について自民案では、「項目別の金額を」通知する、つまり「大まかな公開」とする考えで、「細かな公開」「廃止」を合わせた73.1%の有権者が、自民案より厳しい対処を求めていると言える。対する野党各党は「使途の細かな公開」「廃止」を求めていて、自民党案は改革の“最後尾”となっている。
支持政党別に見ると、自民支持層では「規制強化は必要ない」5.7%、「使途の大まかな公開」42.5%、「使途の細かな公開」39.3%、「廃止」10.4%となった。政策活動費は与党間で、意見が具体化できなかった項目で、公明党では、他党のような政策活動費をそもそも使っていない。
こうしたこともあり、与党公明党支持層は、自民党案よりも厳しい対応を求めていることを示す結果となった。公明支持層では「規制強化は不要」0.0%、「使途を大まかに公開」15.2%、「使途を細かく公開」44.9%、「廃止するべき」39.9%
さらに野党でも、立憲支持層では「規制強化の必要ない」0.0%、「使途の大まかな公開」15.5%、「使途の細かな公開」49.3%、「廃止するべき」35.1%。維新層では「規制強化は必要ない」2.6%、「使途を大まかに公開」12.5%、「使途を細かく公開」55.7%、「廃止するべき」29.2%となった。
自民案は自民層からは4割の支持を受ける一方、野党支持層のみならず、与党公明党支持層からも、自民案では足りないとの考えがいずれも8割を越える結果が示された。

【政策活動費での政治資金規正法改正】
規制強化は必要ない 2.5%
使途を大まかに公開 24.0%
使途を細かく公開 48.4%
廃止するべき 24.3%
【政策活動費での政治資金規正法改正 与党層】
自民層 公明層
規制強化は必要ない 5.7% 0.0%
使途を大まかに公開 42.5% 15.2%
使途を細かく公開 39.3% 44.9%
廃止するべき 10.4% 39.9%
【政策活動費での政治資金規正法改正 立憲・維新層】
立憲層 維新層
規制強化は必要ない 0.0% 2.6%
使途を大まかに公開 15.5% 12.5%
使途を細かく公開 49.3% 55.7%
廃止するべき 35.1% 29.2%
国会議員の“第2の財布” 旧文通費 自民案には具体案なし
政治資金規正法の改正で焦点となっている、もう一つの項目が、議員に歳費とは別に毎月100万円支給されて、使途の公開が不要な旧文通費(調査研究広報滞在費)だ。
今回の裏金事件に先立ち、旧文通費をめぐっては、2021年10月31日に行われた衆議院選挙で、在職日数が1日の国会議員にも10月分の100万円が全額支給された事が問題になり、翌2022年4月に、日割り支給となる法改正が行われた。
当時、「使途の公開」についても法改正が議題となったが先送りされ、何に使っても使い道を明らかにする必要がないままとなり、“国会議員の第2の財布”とも呼ばれ、今国会でも法改正の焦点となっている。
この旧文通費に関する規制法改正について質問したところ、「今のままで良い」と答えた人は6.7%にとどまり、「使途の全面公開」48.4%、「廃止」43.0%となった。

野党各党からは、「使途の公開」を訴える案などが出されているが、自民党がまとめた案では、自民党案では条文に盛り込まれておらず「各党各会派で議論を再開」との表現にとどまった。岸田首相は「各党・会派で共通ルールをとりまとめ、改革を進めていく」と述べるにとどまっている。
旧文通費をめぐっては、野党は公開すべきとの考えで一致しているが、具体的行動では温度差もある。日本維新の会や国民民主は、法改正に先立ち、自主的に公表しているが、立憲民主党は、現行のルール通り公開は行っていない。
こうした国政の動きもあり、自民層、公明層、維新層は「使途の全面公開」を求める声が強く、立憲層では「廃止」を求める声が最も多くなった。ただし、いずれも、条文案に具体策を盛り込んでいない自民案には批判的意見が支配的と言える。
【旧文通費での政治資金規正法改正】
今のままで良い 6.7%
使途の全面公開 48.4%
廃止するべき 43.0%
【旧文通費での政治資金規正法改正 与党層】
自民層 公明層
今のままで良い 16.4% 0.0%
使途の全面公開 55.9% 69.3%
廃止するべき 26.2% 30.7%
【旧文通費での政治資金規正法改正 立憲・維新層】
立憲層 維新層
今のままで良い 1.6% 7.4%
使途の全面公開 38.8% 53.4%
廃止するべき 59.0% 39.2%
岸田首相を“面罵”「顔を洗って出直してこい」野田元首相
政治資金規正法の改正をめぐる国会での本格論戦は、22日から始まる。これに先立ち、衆議院予算委員会では、岸田首相に対し、立憲の野田元首相が質疑に立ち、岸田首相を“面罵”する展開となった。

野田元首相は、自民党は「裏金問題の当事者」とした上で、自民党案が遅まきに提出されたことについて「一番遅くて、一番内容のないものを出す。反省がないんではないか」と批判した。これに対し岸田首相は、自民案では、会計責任者が収支報告書に不記載で処罰を受けたときに、監督を怠った議員は公民権停止とする自民案を踏まえて「政治家の責任の強化、透明性の強化など再発防止に向けて実効的な案を提出することができた」と応じた。野田元首相は、これに頷くことなく「やっぱり内容一番薄すぎると思う。顔を洗って出直してこいと啖呵を切りたくなるぐらいだ」と追求した。
岸田首相は、政治資金規正法の今国会の成立をたびたび明言しているものの、自民党と公明党、他野党との立場の溝が深く、6月23日まで予定の国会会期中には成立が見通せないとの意見も出始めている。そうした場合、国会の会期を延長論もささやかれ始めている。