老朽化が進む学校のプールを廃止し、校外のプールを活用するケースが全国で増えている。修繕にかかるコストや教員の負担軽減など様々な理由が背景にあるが、夏の学校でおなじみだった水泳の授業の風景が、数年後には様変わりするかもしれない。

水泳授業は校外のプールへ

5月16日、鳥取・米子市議会の民生教育委員会が開かれた。

この記事の画像(9枚)

米子市教育委員会の担当者が「公営や民営プールの活用へと転換していく」と、学校での水泳授業について今後の方針を議員に示した。

市立の小中学校では今後、プールの新築や改築を行わず、2025年度以降は水泳の授業で校外のプールを活用するという基本方針だ。

米子市では小中学校のプールで水泳の授業がなくなるかもしれない
米子市では小中学校のプールで水泳の授業がなくなるかもしれない

夏になると、屋外のプールで子どもたちが泳ぎを習う―。

これまで当たり前だった学校の風景が様変わりすることになるが、なぜ水泳の授業で学校のプールを使用しないのか。

学校のプール巡る“3つの課題”

市教委は学校のプールを巡る3つの課題があると説明した。

市教委が作成した米子市立学校のプールに関する資料
市教委が作成した米子市立学校のプールに関する資料

一つ目は「安定的な水泳学習の実施」だ。
近年頻発する猛暑や豪雨などにより、学校の屋外プールを使用できる機会は減少しているという。

二つ目は「管理負担の軽減」。
学校のプールの管理を教職員が業務時間外にも行う必要があり負担が大きい。さらに米子市では1校あたり年間66万円の維持費がかかっているという。

そして三つ目は、一番の問題点でもある「プール施設の老朽化」だ。一般的にプールの耐用年数は30年とされているが、米子市では小中学校の8割近くで建設から30年以上が経過していると実情を報告した。

米子市議会の民生教育委員会
米子市議会の民生教育委員会

市教委はこうした問題を解決するため、2024年度以降、モデル校を指定して公営・民営プールの活用を進めるよう検討すると説明したが、議員は猛反発し丁寧な説明を求めるなど委員会は紛糾した。

市教委は6月以降の委員会でも説明をしていくとした上で、校外のプール活用を進める考えを改めて示した。

「老朽化問題」他の自治体でも

プールの老朽化に伴って、学校「自前」のプールを見直す動きは、山陰の他の自治体でも起きていた。

島根・江津市の江津東小学校。
建設から40年以上がたったプールは、見るからに年季が入っている。

江津東小学校のプール
江津東小学校のプール

この小学校では老朽化に伴って、2024年度から水泳の授業を近くの市民プールで行うことを決めた。

江津東小学校・南口周哉校長:
水道管が機械室から地下を通っているが、老朽化で壊れ漏水が起こっている。1億円弱の修繕費がかかる。

壊れた水道管の修理を含めプール全体の修繕について市の教育委員会と協議したが、費用が高額すぎることから、使用を続けることを断念した。

市民プールを利用する場合、施設の利用料などは年間100万円以下で、プールを修繕する場合に比べて費用を大きく抑えられるといい、南口校長は「子どもたちの水泳の学習が、学校がやりたいタイミングでできないのは残念だが、職員がプールの管理をしなくてもいいのはメリット。安全面でもスイミングスクールの方がメリットがある」と打ち明けた。

市教委によると、江津市内で校外のプールで水泳の授業を行う小中学校は、この江津東小学校だけだということだが、今後は修繕費が数千万円単位に上るようなケースがあれば修理せず、公営の施設などでの授業に切り替える考えだ。

様々なインフラの老朽化が進み、維持・管理が課題となる中、避けては通れない「プールの老朽化」の問題。

学校だけに任せるのではなく、地域の共有インフラとして、地域全体で今後を考える必要が生まれている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

鳥取・島根の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。