能登半島地震で大きな被害を受けた珠洲市の蛸島漁港。ここに高校を卒業して漁師を志した18歳の男性がいる。厳しい環境の中でも「漁師を目指す」その思いを聞いた。

液状化などで漁港は大きな被害 それでも漁を再開できた「ある工夫」 

液状化で漁港は地面が引き裂かれたように
液状化で漁港は地面が引き裂かれたように
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地面が引き裂かれたような大きな地割れ。大規模な液状化が発生した珠洲市の蛸島漁港だ。港湾施設での競りは再開できていないが、地震の発生から3週間後に定置網漁が再開した。

上野さん(左)は週5日漁に出る
上野さん(左)は週5日漁に出る

上野登起男(うえのときお)さんは週5日漁にでている。船をつなぐロープを何重にもしていたことが功を奏し船は助かった。しかし、漁港の損傷が激しくセリを行うことができない。どうしたら漁を再開できるのか…。

従来より約4時間漁の時間を早めた
従来より約4時間漁の時間を早めた

上野さんたちは、これまでよりも4時間ほど漁の時間を早めることを決断する。水揚げした魚をトラックで金沢まで運び、セリにかけることにしたのだ。生活スタイルも変わってしまうが、能登の魚をどうしてもみんなに届けたい。その一心からだ。

苦しい中で希望の光…高校を卒業したばかりの新人漁師が加入

漁師1年生の前さん
漁師1年生の前さん

先輩の後ろ姿を見ながら道具の使い方を勉強しているのは前咲斗(まえさくと)さん。2024年3月に高校を卒業したばかりの漁師1年生だ。

ロープの扱いなどは上出来
ロープの扱いなどは上出来

上野さんは前さんについて「即戦力というか、初日からしっかり網起こしの作業をやっているので頼もしい」と期待する。漁業は危険と隣り合わせ。安全管理やロープの扱いを教えているが、上出来だという。

高校は水産課程がある県立能登高校へ
高校は水産課程がある県立能登高校へ

能登の海と魚が大好きという前さん。きっかけは、小さいときに、祖母が釣った魚を食べさせてくれたこと。さらに祖父は底引き網の漁師で前さんは「将来、漁師になる」と決めていた。高校は水産課程がある県立能登高校へ進学することに迷いはなかった。

憧れの漁師に就職…一人暮らしはプレハブの仮設住宅で

漁港の人はプレハブの仮設住宅で暮らす
漁港の人はプレハブの仮設住宅で暮らす

前さんが案内してくれたのはプレハブの建物。漁港の人たちの仮設住宅だという。同級生は地元を離れた人も多いという。地震で親の仕事がなくなり、金沢などへ出ていくのだ。

前さんの部屋
前さんの部屋

社会人1年目のひとり暮らし。これまでに思い描いていたものとは違うかもしれないが、それでも前さんは「祭りが好きで、ここの魚はおいしく海も綺麗。ここで仕事をしたい」と珠洲に残ることを決断した。

珠洲に残ると決断した前さん(中央)
珠洲に残ると決断した前さん(中央)

地元の漁港の設備が復活する見通しはまだ立っていない。復旧されるまでは従来より4時間早く漁に出る生活が続く。それでも前さんは力強く笑顔でこう話す。「これからも能登、珠洲が大好きなので残って頑張っていこうと思います」

 
石川テレビ
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