「前例なき環境には前例なき教育を」
東京電力福島第一原発事故から4年たった2015年、福島の被災地、広野町に開校した「県立ふたば未来学園高校」。
当時復興大臣政務官だった小泉進次郎自民党筆頭副幹事長は、住民の避難が続いていたこの地に「教育の拠点」を創設するべく力を注いだ。
そして3月1日、1期生140人が卒業式を迎え、大学や専門学校に進学、就職と、それぞれの道に向けて巣立っていった。

この学校では、復興を担う人材を育てるべく、様々な著名文化人やスポーツ関係者らが応援団として支援してきた。
学科は特色豊かで、進路希望に合わせて、進学コース、トップアスリートを目指すコース、そして農業や福祉などのスペシャリストを育てるコースの3つに分かれている。
また、授業にはアクティブラーニングを導入し、『地域の再生』をテーマとしたプロジェクト学習も行ってきた。

卒業式で小泉氏は、「人生100年時代に皆さんが悩んだり迷ったり苦しくなったりしても、きっと帰ってくる場所がここ、ふたば未来学園じゃないかな」とエールを送った。
卒業生の7割は、被災によって避難生活を余儀なくされた経験を持っている。

建学の精神を『変革者たれ』と決めた丹野校長は、創設当時を振り返ってこう言う。
「この学校の置かれた状況や使命を考えたときに、おそらく被災地も原発も被災者もいずれも風化していくだろうなと思っていたんです。
私は風化させてはいけないと思いますし、この地域は常識ではどうしようもない状況なので、変革者を育てていこうと考えました」
学校の創設にあたって『前例なき環境には前例なき教育を』というメッセージを発していた小泉氏は、応援団として年に数回やってきては、生徒を励ましていたという。
「今でも思い出すのは、高校1年の夏にキャンプをしながら交流会をやったんです。そこに小泉先生が来て、『迷ったらフルスイングだ』と。小泉先生らしいですよね(笑)。それを聞いたときに『この先生は、困難を抱えている生徒の背中を押してくれている』と感じました」(丹野校長)
卒業式後、小泉氏は記者団に対して、「復興はライフワーク」とあらためて語った。
「よく復興は早いですか遅いですかとか、そういうことを言われることがあるんですけど、それは政治が言うべきことではないと思いますね。早いか遅いかを判断するのは被災地の皆さん、そしてそれに応えるべく結果を出すこと。
私としては被災地の皆さんに、復興に関わってもらいたい政治家と思われるようにこれからも自分の政治活動の中で、ずっと関わり続けていきたいなと思っています」

復興の象徴として『教育』に携わった理由として、「一過性の支援ではなく、自分の人生を通じて関わり続ける意思の表れ」だという小泉氏。
福島では復興まで気が遠くなるような時間が待っている。
教育は変革者を育てる。
福島の未来を支えるのは、今を生きる若き変革者だ。