最後は80人を超える人たちに見守られ半世紀の歴史に幕をおろした。ゴールデンウィーク期間中に限定復活した長崎市の百貨店の「屋上プレイランド」の営業が終了した。昭和にタイムスリップしたような場所には、決して色あせることのない特別な思い出が溢れていた。

5日間だけの復活に

2024年5月2日、長崎市の浜屋百貨店の前には開店を待つ人の姿があった。列をなす人のお目当てのひとつが…。

2024年5月2日 浜屋百貨店前(長崎市)
2024年5月2日 浜屋百貨店前(長崎市)
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開店前から並んでいた人:休業ってなった時もそのうち再開するかなと。なくなるとは思っていなかった。私も小さい頃に遊んでいた

客が復活を待ち望んでいたのは、1974年にオープンした長崎浜屋の「屋上プレイランド」だ。

子供向けの遊具やゲーム機などが並び、週末を中心に家族連れなどで賑わった。

レトロなゲーム機が並ぶ
レトロなゲーム機が並ぶ

しかし運営の引き継ぎ先が見つからず、施設が老朽化したことなどから営業を終えることになり、5月2日から6日までの5日間のみ開放することになった。

オープンから50年が経ち、遊具やゲームはガムテープで補強され、歴史を感じる。

限定開放の初日のこの日は、ゴールデンウィーク中とはいえ平日にも関わらず大人たちの姿が目立った。

長崎市内から訪れた家族連れは「小銭握りしめて遊びに行ったことを覚えている。女兄弟3人で1個ずつ乗るとお金がかかるから、(親から)兄弟が同時に乗れるやつにしなさいと言われていた。また遊ぶところが少なくなる悲しい」と営業終了を惜しんだ。

プレイランドを支えて半世紀

当時10円からという低価格で遊具を使うことができたのは、修理や運営を一手に担ってくれている人がいたからだ。

プレイランドの運営をしていた吉濱岩夫さん(2018年)
プレイランドの運営をしていた吉濱岩夫さん(2018年)

(Q.据え置き価格なんですか?)
吉濱岩夫さん:オープン当時のまま全て遊具の内部も外側も補修をしている

遊具の利用とともに、懐かしい軽食も限定復活した。百貨店で働く従業員の思いもひとしおだ。

浜屋百貨店 営業企画部長 山野勝彦さん:高校の時、町に遊びにきたらうどん食べたりお好み焼きを食べた

いま甦る大切な記憶

この場所に特別な思いを持つ親子がいる。熊谷幸さん、94歳と娘の祐子さんだ。

熊谷幸さん:62年前に娘を連れてきて遊園地の観覧車を撮影した記憶があった。なくなることを聞いて非常に残念に思っている

熊谷さんが62年前の1962年に撮影した浜屋百貨店の屋上の様子が残されていた。

屋上で遊ぶ娘・祐子さん(当時3歳) 撮影:熊谷幸さん
屋上で遊ぶ娘・祐子さん(当時3歳) 撮影:熊谷幸さん
浜屋百貨店の屋上にあった観覧車 撮影:熊谷幸さん
浜屋百貨店の屋上にあった観覧車 撮影:熊谷幸さん

そこに映っていたのは、当時3歳の娘の祐子さんだった。浜屋には屋上にプレイランドがオープンするよりずっと前、1939年の開業当初から、屋上に遊園地があり、観覧車も併設されていた。

(Q:当時のことを覚えていますか)
熊谷幸さんの娘 祐子さん:もう全然覚えていないです

熊谷幸さん:(この場所でまた一緒に娘といることに)感無量

左:娘の祐子さん
左:娘の祐子さん

熊谷さんは、62年ぶりにこの場所でカメラを回した。当時から今も変わらずカメラが大好きで、写真関係の仕事をしていた経験もあるという。

熊谷幸さん(94):何十年か前の思い出が甦りました

熊谷さんの娘 錦戸祐子さん(65):動画を撮ってくれていたおかげでここに観覧車があって私が乗ったんだなというのが懐かしく思い出されて、覚えてはいないが動画を撮ってくれたことをありがたく感じる

さようなら「屋上プレイランド」

そして迎えたプレイランド最後の日。

5月6日はときおり雨が降る中、懐かしい遊具に大人も、子供も夢中だった。

訪れた人:おととい1回来たが、心の整理がつかなくて。一生懸命機械を整備していたのを見ていてその人がいたから50年を壊さずにやってきたとその人に一言あいさつしたかった

訪れた人:小学生の頃からずっと毎日のように通っていて祖父母が近くの商業施設でゲームセンターを営んでいて、その時の機械もこちらにあって。最後に見届けたい、雨だろうがなんだろうが関係ない。今後もこういう場所があったら

オープン以来名物とも言われた屋上の「うどん」は5日間で、5000食が完売した。

浜屋百貨店 営業部 松本一重さん:漂うダシの香りが懐かしかった。初日から2代、3代と連なって来てもらい、思い出を次世代に語りながら会場を懐かしんでいたお客様が印象的だった

ゲーム機などをカメラにおさめる人も
ゲーム機などをカメラにおさめる人も

施設を閉める時間になっても多くの人が名残惜しそうに記念撮影をしていた。

“最後”の瞬間に立ち会う大勢の人
“最後”の瞬間に立ち会う大勢の人

そして午後5時過ぎ、多くの家族連れなどが見守る中、営業終了が告げられた。「屋上プレイランド」の跡地利用とあわせて遊具の引き取りや活用、処分も未定だという。

昭和から平成、令和の3つの時代で世代を超えて愛されてきた浜屋百貨店の屋上プレイランド。この場所で多くの人のかけがえのない瞬間を彩ってきた記憶は決して色あせることはない。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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